10 / 109
3.前途多難な石の日々
石①
しおりを挟む
翌日、重い足を引きずるようにして登校すると、私がみんなの前で黒崎くんに告白して、こっぴどくフラれたという噂が広まっていた。
廊下を歩いても教室にいても、無数の針のような視線がつき刺さる。
「急に有名人だね、詩ちゃん」
「黒崎相手に堂々と公開告白した猛者だって」
「猛者……」
何、その猛々しい武士みたいなの……。
きっと身の程知らずだと言われているんだろう。ヒソヒソとささやく声が刺のように痛い。
大きな声で誤解だと伝えたい。あれは、告白じゃなく謝罪だって。
でも、実際は目立たないように小さくなって、噂が消えるのを待つことしかできなかった。私は猛者でも武士でもなく、怖がりの小心者だ。
とぼとぼと教室に戻って自分の席で次の授業の準備をしていると、前の席の長谷くんが帰ってきた。
「昨日はごめんね、北野ちゃん。告白の邪魔しちゃって!」
大きな声であっけらかんと謝られて、ぎゃあっと叫びそうになる。
「あ、あの、昨日のあれは、こ、告白じゃなくて」
「わかる、わかるよ。あの黒崎に公開告白するとか、ある意味勇者だもんね。それだけで俺はすごいと思う!」
「いえ、あのっ。だから、そ、そうじゃなくて」
「大丈夫、恥ずかしいことじゃないって!」
話がまったく通じない……。
必死に弁明しようとしたけれど、長谷くんはひとりで納得して頷き、生温かい笑顔を浮かべるだけで、全然話を聞いてくれなかった。それどころか「俺、協力しよっか?」と、間違った方向に進んで行ってしまう。
そこに黒崎くんも席に戻ってきて、私は全身から冷や汗が吹き出るくらい焦った。
この噂は、黒崎くんの耳にもきっと届いているだろう。嫌な気分になっているに違いない。それがわかっていても、何もできなかった。
黒崎くんは授業中も班ごとのグループワークの最中も、一切私を見ないし話すこともない。私も、不機嫌そうな彼を見ると震え上がるほど怖くて、謝ることも話しかけることも諦めて完璧な石と化していた。
廊下を歩いても教室にいても、無数の針のような視線がつき刺さる。
「急に有名人だね、詩ちゃん」
「黒崎相手に堂々と公開告白した猛者だって」
「猛者……」
何、その猛々しい武士みたいなの……。
きっと身の程知らずだと言われているんだろう。ヒソヒソとささやく声が刺のように痛い。
大きな声で誤解だと伝えたい。あれは、告白じゃなく謝罪だって。
でも、実際は目立たないように小さくなって、噂が消えるのを待つことしかできなかった。私は猛者でも武士でもなく、怖がりの小心者だ。
とぼとぼと教室に戻って自分の席で次の授業の準備をしていると、前の席の長谷くんが帰ってきた。
「昨日はごめんね、北野ちゃん。告白の邪魔しちゃって!」
大きな声であっけらかんと謝られて、ぎゃあっと叫びそうになる。
「あ、あの、昨日のあれは、こ、告白じゃなくて」
「わかる、わかるよ。あの黒崎に公開告白するとか、ある意味勇者だもんね。それだけで俺はすごいと思う!」
「いえ、あのっ。だから、そ、そうじゃなくて」
「大丈夫、恥ずかしいことじゃないって!」
話がまったく通じない……。
必死に弁明しようとしたけれど、長谷くんはひとりで納得して頷き、生温かい笑顔を浮かべるだけで、全然話を聞いてくれなかった。それどころか「俺、協力しよっか?」と、間違った方向に進んで行ってしまう。
そこに黒崎くんも席に戻ってきて、私は全身から冷や汗が吹き出るくらい焦った。
この噂は、黒崎くんの耳にもきっと届いているだろう。嫌な気分になっているに違いない。それがわかっていても、何もできなかった。
黒崎くんは授業中も班ごとのグループワークの最中も、一切私を見ないし話すこともない。私も、不機嫌そうな彼を見ると震え上がるほど怖くて、謝ることも話しかけることも諦めて完璧な石と化していた。
11
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
何故か超絶美少女に嫌われる日常
やまたけ
青春
K市内一と言われる超絶美少女の高校三年生柊美久。そして同じ高校三年生の武智悠斗は、何故か彼女に絡まれ疎まれる。何をしたのか覚えがないが、とにかく何かと文句を言われる毎日。だが、それでも彼女に歯向かえない事情があるようで……。疋田美里という、主人公がバイト先で知り合った可愛い女子高生。彼女の存在がより一層、この物語を複雑化させていくようで。
しょっぱなヒロインから嫌われるという、ちょっとひねくれた恋愛小説。
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

ハヤテの背負い
七星満実
青春
父の影響で幼い頃から柔道に勤しんできた沢渡颯(さわたりはやて)。
その情熱は歳を重ねるたびに加速していき、道場の同年代で颯に敵う者は居なくなった。
師範からも将来を有望視され、颯は父との約束だったオリンピックで金メダルを獲るという目標に邁進し、周囲もその実現を信じて疑わなかった。
時は流れ、颯が中学二年で初段を取得し黒帯になった頃、道場に新しい生徒がやってくる。
この街に越して来たばかりの中学三年、新哲真(あらたてっしん)。
彼の柔道の実力は、颯のそれを遥かに凌ぐものだったーー。
夢。親子。友情。初恋。挫折。奮起。そして、最初にして最大のライバル。
様々な事情の中で揺れ惑いながら、高校生になった颯は全身全霊を込めて背負う。
柔道を通して一人の少年の成長と挑戦を描く、青春熱戦柔道ストーリー。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる