母の全てを送るまで

くろすけ

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母の死

祖母とのモラトリアム

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当時父から母の事を殺したと言われた私は、仕事はかろうじて行くけど全く食欲もなく、せっかく戸籍を変えたのに消防士試験も上の空だった。
ジムにも行って鍛えていたのに、そんな事も忘れてしまっていた。

確かその時にまだ10代だった弟が不憫で一緒に暮らしていたが、弟の為に作った食事も全く手をつける事なく、しかも帰って来ても玄関の外で寝ていて食事は勿論乾いていて、私は一体何の為に今生きているのかもわからなかった。

ふと休みの時に、子供の自分でさえ大ダメージなのに、一人娘を亡くしたばあばは大丈夫なのかな?と思い電話をかけた。

ばあばは自分が1番悲しくて辛いだろうに、私の事を凄く気遣ってくれた。

実家に帰れば父は自分が1番辛いと言う。
弟は自分が1番可哀想な人間だと言う。

それなのに本当は1番辛いばあばは、自分の気持ちよりも、私が母に対してしてきた事の諸々を汲んでくれたんだろう。
私が1番辛いんじゃないか?と心配してくれた。

友人から心配される事は多々あったが、親族のしかも1番辛いと思う人に心配されるとは目から鱗で、それから日々何気ない電話を続けた。
それが私にもばあばにも、母を亡くした痛みを分かち合う、かけがけのない時間だった。

あ、因みにMはそんな私に痺れを切らしてか、事もあろうか、私も慕っていた兄貴分の人と付き合うようになった。

母を亡くした痛み、Mと信頼していた兄貴分に裏切られた痛み、当時はダブルパンチ過ぎて何も考えられなかった。

ただ、ばあばと話している時間は痛みや本当小さな楽しさを共感出来る時間で、俺も心の底から楽しい時間だった。
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