母の全てを送るまで

くろすけ

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私はババっ子でした

弟誕生と共に癌摘出

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母は命を賭して産んでくれた私に対して色々と厳しい部分はあったが、当時から死ぬまでも、私に対して自分が痛い、辛いは絶対に言わない人だった。

当時の私はそんな事も知らず、いつからか何故か母が家に居ないのに祖父母がいる期間が増えて行った。
「どうして?教えて」と言っても当時の祖父母は教えてくれず、その真実を知るのは弟が産まれてから数年後だった。

母は当時何かの癌を患っており、弟を妊娠しながら癌が進行して、家に帰って来ない父は頼りないのできっと信頼出来る祖父母にSOSを出したんだと思う。

私は当時母から「兄弟が出来たわよ」と言われて「ホント?!嬉しい!!」と答えたのは聡明に覚えている。

思い返せば弟が産まれる前から何かの折に、母から「弟か妹が欲しい?」と聞かれ、「どっちでもいいけどサンタさんにお願いするね!」と言った記憶もある。
母は一人娘で祖父母の事を1人で面倒を見ないといけないと言うプレッシャーもあったのだろう。一人っ子だとそういう面倒な事もあるから、当時一人っ子だった私の事をそんな思いから解放したい気持ちがあったのだと今になれば思う。

何も知らない当時の私は、パンパースのCMを見て、こんな可愛い子が弟か妹になるならと心を弾ませていた。

言葉が足りずに語弊があると申し訳ないのだが、私は祖母譲りのミス清水ノミネートの顔面を血筋の中でと言っても母と弟だけだが、1番受けており当時子役タレントのレッスンも受けていた。
すれ違う見知らぬ当時の大学生も足を止め、ホント可愛い子ですね!と言われチヤホヤされ、レッスンでもそれなりの成果もあったのだが、それも家庭の事情で通えなくなってしまい、失望の中、兄弟が出来ると聞いて家庭環境の色々な事に配慮もなく本当に浮かれていた。

出産時には多分父が付き添ってくれたんだと思う。
弟が生まれたと父か病院から家に電話があり、急いで向かわねばと祖母と準備をしながら私は先に家を出て外で待っていた。
その日は星がよく見えて、何かの星がキラリと輝いていたのを覚えている。

手術と共に帝王切開で生まれた連絡の際に弟の性別はわかっていたので、
待っててね!私の可愛い弟ちゃん!!
と、私は1秒でも早く会いたかったのだが、やたら火の元やありとあらゆる鍵のチェックで遅くなった祖母と共にタクシーに乗り込み、胸をワクワクさせながら病院に向かった。

母が罹っていた病院は総合病院だったのだが、病院について産婦人科に向かうと色々な可愛いオギャーが聞こえる。
でも当時の私の身長からは見る事も出来ない。
パンパースのCMの可愛い新生児を見ていた私からすると、どの可愛い子?!と言う思いが炸裂していた。

祖母に「見えないから見せて」と言って抱き上げて貰った際に、可愛い子がいっぱいで「え?!どのこ?!」と言ったが、どうやら此処にはいないらしい。

???と思いながら祖母に連れられて今思えば保育器だけど当時わからず、何かのカバーに囲まれた、青痣のあるよくわからないエイリアンみたいな子の側に母がいた。
「◯ちゃん、弟だよ!」
母が私との約束を果たし切った満面の笑みで話してくれているのに、
私は幼心ながら頭が真っ白になってしまい、咄嗟に返事ができなかったと思う。

でも祖母が「よく頑張ったね。母子共に無事で本当に良かった…」と涙しているのを見て、これは現実なんだな。想像とはえらい違ったけど、このエイリアンは私の弟、ちょっと今はよくわからないけどこれから可愛がってあげないといけないな…となんとなく直感的に思った。

思い出した、母は子宮癌で癌摘出と共に弟を出産したのだ。

因みにこれは◯ちゃん6歳のお話である。
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