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第三十話 神の選択
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ドラゴンはいきなり口を大きく膨張させたかと思うと、俺の雷撃と同じような雷のブレスを吐いてきた。それを氷の盾で受けるが全身に電撃が走る。
雷の小手や具足、兜による雷耐性でもついているのか、手足や頭への刺激はそうでもない、だが氷の鎧に覆われた体の部分にはかなりの衝撃を受けた。
「あれを連発されるとやばい、何とか出来ないか」
「やってみる」
再びブレスを吐こうと口を大きく膨らませたドラゴンの前に立つ。俺が避けてしまえば後ろにいる舞に直撃してしまう。
そのドラゴンの口付近に舞の使う水魔法が放たれる。
下からかちあげられた形になった相手のブレスが天井に向かって放たれる。天井に当たった。上からパラパラと衝撃によって落ちてきた何かが降ってくる。
「よし、ナイス」
空打ちとなったドラゴンは苛立つかのようにこちらに向かってくる。それに対してこちらも剣を構えて立ち向かう。
乱雑に繰り出される相手の前足と氷の剣がぶつかり合う。
すごい重量だ。しかしこちらの攻撃力も負けていない。
ドラゴンの皮膚は割け、こちらのダメージのほうが上回っている。
問題ない、これなら勝てる。何度も繰り返すドラゴンとの攻防でこちらの攻撃は確実に通っている。舞の魔法もUR水魔法の杖のおかげだろうか、威力の高い魔法となって傷をつけている。
「いけるぞ、このまま攻撃続行だ」
「言われなくても」
ミスト状に散布した水魔法によって相手の機動力が下がる。こちらはより素早くなり、ドラゴンは傷だらけになっていった。
「ウォーターランス!」
舞の魔法がドラゴンの後ろ足を貫く。
「グオオオオオオオオオオオオオ」
完全に動きを止めたドラゴンに対して、俺は相手の垂れ下がった首に向かって飛び掛かり斬撃を放つ。氷をまとったその攻撃は致命傷を与えるには充分——なはずだった。
ドラゴンが全身を大きく震わせ全身から電撃を乱雑に放つ。
それをまともに受けた俺は空中から落下する。痺れた体でうまく着地出来ずに背中から落下する。
「かはっ」
息が詰まる。肺に溜まった空気が止まる。
「誠!生きてる!?」
遠くから舞の声が聞こえる。体に力を入れて立ち上がるとドラゴンとの間に水の壁があった。咄嗟に舞が設置してくれたのだろう。
「げほっ、助かった。ドラゴンはどうしている……」
「分からないわ、アンタが弾かれてから急いで障壁を立てたから」
舞が魔法を解除し、水の障壁が消える。
そこには完全回復した黄色いドラコンがそびえ立っていた。
「ばかな、あれだけ痛めつけたのに回復しただと……、どうするどうするどうする」
「落ち着きなさい!相手も動かないし、きっと弱点はあるはず、そもそもアンタLR幸運のネックレス付けてないでしょ」
「あ、そうだった」
未だ止まっているドラゴンに警戒しつつ、LR幸運のネックレスを装備する。
視界に変化はない。弱点はない…?ならどうやって攻略すればいいんだ。
「何かわかった?」
「いや、今のところ何の変化もない、とにかく止まっているなら攻撃を続けるしかないな」
不気味に身を屈めて動かないドラゴンに向かって走る。するとこちらの動きに合わせぐるりと回転して尻尾で攻撃してくる。それを盾で受け止めるが、吹き飛ばされてしまう。
俺は空中で一回転して壁にぶつかるところで、足をつけ衝撃を吸収する。そのまま反動を使って壁を蹴り、ドラゴンの顔面に向かっていく。突き出した剣先はそのままドラゴンの右目に刺さり、ドラゴンの悲鳴が響いた。
相手が頭を振り回したせいで、刺さった剣から手が離れてしまう。UR氷の剣が!!
装備から外れた剣、後で回収できるよな。な!
手元から失われた剣にショックを受けながらSSR氷の剣を装備する。
大丈夫、俺は冷静だし、相手に攻撃は通った。もう一度行けば問題ない。
攻撃力の落ちたSSRの剣で攻撃を繰り出すが、あまりダメージが出ない。その代わりUR水魔法の杖を持った舞の攻撃が通る、またしてもドラゴンはボロボロになってきた。
「そろそろあの攻撃がくるんじゃない。回避してよ」
「分かってる。あれが何かのトリガーなんだろう」
そうやって攻撃を続けていると、背筋がぞくっとする感覚があった。
ここか!俺は急いで後ろに飛びのきドラゴンとの距離を取った。
すると先ほどと同様に電撃を放出してきた。今回は誰も攻撃を食らわず、ドラゴンも傷ついた体を回復しきれていない。
「どうやら雷撃に当たらなければ充分な回復は出来ないみたいね。このまま攻撃は続行、アンタは雷撃のタイミングで退避。それまでは私を守るために前線に立ってて」
「言われなくてもそうするさ」
舞の指示に従い、再び戦闘を開始する。
舞に攻撃がいかないようにドラゴンを遠くに留め、舞の魔法によって体力を削る。この繰り返しだった。
しかしこれだけ魔法を打って舞の精神力は大丈夫なのだろうか。ちらりと後ろを向くと頭にポーションをぶっかける舞の姿があった。
対処法も知ってるのか。当たり前か、魔法職だし。
もしかしたら精神力ポーションなんてのもあるかもしれない。そんなことを考える余裕すらある戦いは、数時間に及んだが最後に繰り出した舞のウォータートルネードによって終幕した。
ドラゴンのドロップを確認する
URドラゴンの牙
ま、幸運のネックレス付けてればこんなもんか、装備の強さをありありと感じる。
「ねえアンタが宝箱開けてよ、LR幸運のネックレス付けてるんでしょ、売上は折半でいいから」
「幸運減るんだぞ、そうほいほい……、使う場面だなここ」
「でしょ」
俺はLR幸運のネックレスを付けているのを確認し宝箱を空ける。
???神の選択
?レア度も何もかも分からないアイテム出てきた。そもそもアイテムじゃない。手に取れない、概念のようなものが頭の中に入ってくる。
隣の舞を見ると固まっている。これはあれだ。自称神が出てくるパターンだ。
「その通り、神です」
「もう驚かねーぞ」
再び現れた神。人型で発光しているそれに対し、俺は今度はどんな不具合の報告を受けるのかと身構えた。
「おめでとう、君は神の選択を得た。好きな報酬を選んでいいよ」
「好きな報酬?何を言ってるんだ、またなんかミスしてここにドロップさせちゃったんだろ?誤魔化さなくていい、分かってるから」
「勘違いしないで。これは報酬。君たち人間が困難に立ち向かい、それを達した時に与えられる、なんでも叶う神からのご褒美だよ」
なんでも……?今何でもするって言ったよね。
「例えば死者を生き返らせたりとか、お金を無限に手に入れるとか、不老不死にとかもできるのか?」
「出来るよ。なんでも、と言ったよね。不可能な事象はない。それによる不都合な事実も改変しちゃうから」
様々なことが頭をよぎる。
人生をやり直すか?大学に入ってパチンコにハマらず真面目に生活して、いい会社に入って家族を作って正しい人生を送るか?
不老不死になってこの世の全てを見ながら世の終焉まで自由に過ごすか?
金持ちになって豪遊するのもいいかもしれない。
優菜ちゃんとの復縁も悪くない。
「時間は止まっている、充分に考えて」
「願いを100個とかは…」
「それはダメー、何でもとは言ったけどそういうずるはだめ」
それからどれだけの時間が流れただろう。
俺は考えた。止まった時の中でたまに舞を見たり、ローブをめくってみたり、ちょんちょんと胸を触ったりした。時間停止能力持つのもいいかもと思った。
多分どんな選択をしても、ああしてればよかったこうしてればよかったっていう後悔がつきまとうだろう。こんな誰しもが叶えたい願いなど無限にあるのだ。俺は原点に返って俺の思いの根源を考える。
俺という人間はなにか。
何のために生きているのか。
何がしたくて何になりたい。
そうして一つの答えにたどり着いた。多分これでも後悔するんだろうけど、今の俺が考えつく最良の選択だ。例え間違いだったとしてもそれはそれでそんな人生だったと諦めればいい。
「決まったよ、俺の願いは――――」
「ふふ、君らしいね」
止まった時間がまた動き始めた。
雷の小手や具足、兜による雷耐性でもついているのか、手足や頭への刺激はそうでもない、だが氷の鎧に覆われた体の部分にはかなりの衝撃を受けた。
「あれを連発されるとやばい、何とか出来ないか」
「やってみる」
再びブレスを吐こうと口を大きく膨らませたドラゴンの前に立つ。俺が避けてしまえば後ろにいる舞に直撃してしまう。
そのドラゴンの口付近に舞の使う水魔法が放たれる。
下からかちあげられた形になった相手のブレスが天井に向かって放たれる。天井に当たった。上からパラパラと衝撃によって落ちてきた何かが降ってくる。
「よし、ナイス」
空打ちとなったドラゴンは苛立つかのようにこちらに向かってくる。それに対してこちらも剣を構えて立ち向かう。
乱雑に繰り出される相手の前足と氷の剣がぶつかり合う。
すごい重量だ。しかしこちらの攻撃力も負けていない。
ドラゴンの皮膚は割け、こちらのダメージのほうが上回っている。
問題ない、これなら勝てる。何度も繰り返すドラゴンとの攻防でこちらの攻撃は確実に通っている。舞の魔法もUR水魔法の杖のおかげだろうか、威力の高い魔法となって傷をつけている。
「いけるぞ、このまま攻撃続行だ」
「言われなくても」
ミスト状に散布した水魔法によって相手の機動力が下がる。こちらはより素早くなり、ドラゴンは傷だらけになっていった。
「ウォーターランス!」
舞の魔法がドラゴンの後ろ足を貫く。
「グオオオオオオオオオオオオオ」
完全に動きを止めたドラゴンに対して、俺は相手の垂れ下がった首に向かって飛び掛かり斬撃を放つ。氷をまとったその攻撃は致命傷を与えるには充分——なはずだった。
ドラゴンが全身を大きく震わせ全身から電撃を乱雑に放つ。
それをまともに受けた俺は空中から落下する。痺れた体でうまく着地出来ずに背中から落下する。
「かはっ」
息が詰まる。肺に溜まった空気が止まる。
「誠!生きてる!?」
遠くから舞の声が聞こえる。体に力を入れて立ち上がるとドラゴンとの間に水の壁があった。咄嗟に舞が設置してくれたのだろう。
「げほっ、助かった。ドラゴンはどうしている……」
「分からないわ、アンタが弾かれてから急いで障壁を立てたから」
舞が魔法を解除し、水の障壁が消える。
そこには完全回復した黄色いドラコンがそびえ立っていた。
「ばかな、あれだけ痛めつけたのに回復しただと……、どうするどうするどうする」
「落ち着きなさい!相手も動かないし、きっと弱点はあるはず、そもそもアンタLR幸運のネックレス付けてないでしょ」
「あ、そうだった」
未だ止まっているドラゴンに警戒しつつ、LR幸運のネックレスを装備する。
視界に変化はない。弱点はない…?ならどうやって攻略すればいいんだ。
「何かわかった?」
「いや、今のところ何の変化もない、とにかく止まっているなら攻撃を続けるしかないな」
不気味に身を屈めて動かないドラゴンに向かって走る。するとこちらの動きに合わせぐるりと回転して尻尾で攻撃してくる。それを盾で受け止めるが、吹き飛ばされてしまう。
俺は空中で一回転して壁にぶつかるところで、足をつけ衝撃を吸収する。そのまま反動を使って壁を蹴り、ドラゴンの顔面に向かっていく。突き出した剣先はそのままドラゴンの右目に刺さり、ドラゴンの悲鳴が響いた。
相手が頭を振り回したせいで、刺さった剣から手が離れてしまう。UR氷の剣が!!
装備から外れた剣、後で回収できるよな。な!
手元から失われた剣にショックを受けながらSSR氷の剣を装備する。
大丈夫、俺は冷静だし、相手に攻撃は通った。もう一度行けば問題ない。
攻撃力の落ちたSSRの剣で攻撃を繰り出すが、あまりダメージが出ない。その代わりUR水魔法の杖を持った舞の攻撃が通る、またしてもドラゴンはボロボロになってきた。
「そろそろあの攻撃がくるんじゃない。回避してよ」
「分かってる。あれが何かのトリガーなんだろう」
そうやって攻撃を続けていると、背筋がぞくっとする感覚があった。
ここか!俺は急いで後ろに飛びのきドラゴンとの距離を取った。
すると先ほどと同様に電撃を放出してきた。今回は誰も攻撃を食らわず、ドラゴンも傷ついた体を回復しきれていない。
「どうやら雷撃に当たらなければ充分な回復は出来ないみたいね。このまま攻撃は続行、アンタは雷撃のタイミングで退避。それまでは私を守るために前線に立ってて」
「言われなくてもそうするさ」
舞の指示に従い、再び戦闘を開始する。
舞に攻撃がいかないようにドラゴンを遠くに留め、舞の魔法によって体力を削る。この繰り返しだった。
しかしこれだけ魔法を打って舞の精神力は大丈夫なのだろうか。ちらりと後ろを向くと頭にポーションをぶっかける舞の姿があった。
対処法も知ってるのか。当たり前か、魔法職だし。
もしかしたら精神力ポーションなんてのもあるかもしれない。そんなことを考える余裕すらある戦いは、数時間に及んだが最後に繰り出した舞のウォータートルネードによって終幕した。
ドラゴンのドロップを確認する
URドラゴンの牙
ま、幸運のネックレス付けてればこんなもんか、装備の強さをありありと感じる。
「ねえアンタが宝箱開けてよ、LR幸運のネックレス付けてるんでしょ、売上は折半でいいから」
「幸運減るんだぞ、そうほいほい……、使う場面だなここ」
「でしょ」
俺はLR幸運のネックレスを付けているのを確認し宝箱を空ける。
???神の選択
?レア度も何もかも分からないアイテム出てきた。そもそもアイテムじゃない。手に取れない、概念のようなものが頭の中に入ってくる。
隣の舞を見ると固まっている。これはあれだ。自称神が出てくるパターンだ。
「その通り、神です」
「もう驚かねーぞ」
再び現れた神。人型で発光しているそれに対し、俺は今度はどんな不具合の報告を受けるのかと身構えた。
「おめでとう、君は神の選択を得た。好きな報酬を選んでいいよ」
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様々なことが頭をよぎる。
人生をやり直すか?大学に入ってパチンコにハマらず真面目に生活して、いい会社に入って家族を作って正しい人生を送るか?
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「それはダメー、何でもとは言ったけどそういうずるはだめ」
それからどれだけの時間が流れただろう。
俺は考えた。止まった時の中でたまに舞を見たり、ローブをめくってみたり、ちょんちょんと胸を触ったりした。時間停止能力持つのもいいかもと思った。
多分どんな選択をしても、ああしてればよかったこうしてればよかったっていう後悔がつきまとうだろう。こんな誰しもが叶えたい願いなど無限にあるのだ。俺は原点に返って俺の思いの根源を考える。
俺という人間はなにか。
何のために生きているのか。
何がしたくて何になりたい。
そうして一つの答えにたどり着いた。多分これでも後悔するんだろうけど、今の俺が考えつく最良の選択だ。例え間違いだったとしてもそれはそれでそんな人生だったと諦めればいい。
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