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第二十二話 浮かれる誠

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 昨日の出来事をそっと胸にしまい、今日からまた舞との攻略に力を入れる。
 コボルトから魔法の杖をドロップしてから数か月、主戦場を9層に移動している。
 10層で確認できているモンスターで確認できているのはリザードマン、ファイアスライム、ファイアスピリット、レッドアリゲーターなど熱属性のモンスターがほとんどである。もしかしたら確認不足で他にもいるかもしれないが、今回はそういった可能性よりも確実に水系のモンスターのいる9層に狙いを絞って攻略をしている。

「さすがにSRともなるとめったにでないわね、いい加減ここで戦うのも飽きてきたわ」
「ドロップは運が必要だからな、コツコツやるしかない。ガチャで幸運のネックレスを出せばいけるんじゃないか?ガチャ回せよガチャ」
「回してるわよ!でも出ないんだからしょうがないでしょ、なにあれふざけてるとしか思えない排出率だわ!」
「まあ皆が知ってるクソガチャだからな、たま~に当たりが出るけど0.0001%くらいじゃねえか、宝くじ当てるほうが現実的かもな」
「はあ~結局あんたと潜り続けるしかないのね」
「なんだ不満か?俺のおかげで安全に探索出来てるだろうが」
「それはそうだけどねえ、ちょっと性格が」
「お互い様だろそれは」

 うん、俺にはこいつのような関係の方が楽だ、お金で買う愛はそれとは別のものだ。
 実際にああいう場面でイケメンのように振舞うのは難しいと実感させられた。

 ダンジョンの状況はというと、15層で必要な装備が13層で出るアイスゴーレムからドロップしたことのように、6層から9層の間で10層に必要なドロップが出ないか上から検証していった。各層を2週間みっちり探索し、数多のドロップを出していく中で、効果的なアイテムが出ないまま9層まで来てしまった。

 9層に入って炎の塊———レイスとは違い物理攻撃も魔法攻撃も効く―――ファイアスプリットと名付けたモンスターからN魔法の杖がドロップした。そしてしばらくそいつを倒しているとN火のローブをドロップし予想が確信へと変わった。

 魔法装備はこいつで間違いない。
 ここでSR装備を出すまで粘るか、換金してSR装備が買えるまで探索を続けるか。そういう目標で決まった。
 SR装備品は100万円を超えることが珍しくなく、素材と違って高めになっている。装備品は冒険者の安全に直結するため出回る数も少ない。なのでSR装備が買える金額まで貯めるには結構な時間がかかりそうだった。

「目星がついただけましね、しばらくよろしく頼むわよ」
「りょーかい」

 でも目標達成したらこのパーティーも解散かあ。
 それはそれで少し寂しいかもと思った。


 この日も目的のSR装備はドロップせず、ダンジョンから帰還した。
 特に予定もなかったのでふらっと商店によった。すると高級ポーションという文字が目に入った。

”重傷を負っても瞬間回復、千切れた腕もくっつけてしばらくすれば元通りに、ダンジョンの保険にどうぞ”

 5000万円と書かれたポーション。余ったタラーで買える値段だ。今日はカジノによって行こうかと思ったが、何かの時の為に持っておくのもいいかと高級ポーションをいくつか購入する。

「お前か、こんなポーション使う場面に合わないほうがいいんだけどな、そもそもこれが必要なケガをしてる時点でもう治しても危機的な状態だろう?無駄になるからやめときな」
「それはソロだった場合だろ?今二人で潜ってるからどっちかが敵を引き付ければ十分対応できるんだよ」
「そういや赤い髪の女と一緒にいるのをよく見かけたが、まさかパーティとはな、お前もようやく仲間を得たのか」
「なんでお前が世話してきたみたな顔してんだよ」

 ヨヨヨとウソ泣きをする店主をよそに店を後にする。

 ダンジョンを出て携帯を見ると連絡が来ていた。
 優菜ちゃんだ。
 
[昨日はすいませんでした。改めてお話ししたいので空いてる時間を教えてください]

 俺はいつでもいいよ!と返事をして、それなら1週間後でいいでしょうか、と優菜ちゃんからメールが返ってきたのでもちろんと返事をした。
 これって、もしかして、告白うー!?

 ウキウキで一週間の探索を終えた。舞には気味が悪いって感じのことを言われたがそれもしょうがない。だって浮かれてるもの。
 ついでにSRの魔法の杖をドロップした。あとはローブとナイフが出ればこのコンビも解消だ。ファイアスピリットからナイフもドロップするかは分からないが。

 優菜ちゃんとの話の前日、景気づけにカジノによった。

 1000万タラー勝った。こりゃ明日も勝ったな。
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