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第三章
5 レオス・ヴィダールと魔力持ちの兵士
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俺は迷宮での探索を終え、迷宮の外で待っている兵士たちの元に帰ってきた。負傷した、魔力のある兵士たちにその事実を伝えた。
本人たちは喜ぶというよりは困惑している様子だった。それはそうだろう、いきなり「貴方は魔力持ちですよ」と言われても実感もくそもない。とりあえず彼らにはカモールから魔力の使い方を学んでもらおう。中年から魔力持ちになった人の重用ってどうなってるんだろうか。
そもそも魔力持ちの平民がどう扱われているのかすら知らない。学園で学んでいるということは良い役職につけるということなのか?
有事の際に必要となる存在になることは確かだろう。手当とかも多くつくかもしれない。
まあ難しいことは帰ってからでいい。一応本当に迷宮が消滅するのかこの目で確認したいので、兵士たちに見張りを任せてりる間に一度家に帰って休息を取った。そして次の日、早朝から馬を走らせ迷宮のあった場所に向かう。
そこにはまだ迷宮は存在したが、内部から魔物が溢れるようなこともなくなんとなく存在が希薄になっているように感じだ。
そして恐らく俺が迷宮のコアを破壊してから一日くらい経った時間ぐらいで、目の前にあった洞窟は、幻だったかのように消え去り元の状態に戻っていった。
「ごくろうさま、皆帰っていいよ。後日また調査団として派遣するからその時はよろしくね。後今回魔力があると判明した兵士の人は別途訓練に参加してもらうからそのつもりで」
「はっ! 承知いたしました!」
俺は大勢の兵士と共に帰路についた。今回の迷宮は偶然今まで発見されなかったものなのか、いつ発生したのか、それが分からない。俺は家につくなり王都のお偉いさんに今回の調査の報告書を提出した。
俺はその結果を待ちつつ、魔力持ちの兵士たちと一緒に訓練を行った。まだ魔力循環にも慣れていない兵士4名と多対1の訓練を行った。
「遠慮せずにかかってきていいよ」
俺は訓練相手の兵士に声をかけ、それを合図に4人が襲い掛かってくる。まだ魔法は使えないが、軽い魔力循環は行えているので身体能力の底上げが出来ている。それでもまだ慣れていないのでこうやって実戦形式で体に覚えこませようという試みだ。
それでもアインのところで受けた兵士たちの踏み込みよりずっと早い。その剣技自体は劣っているかもしれないが、単純な膂力や瞬発力は比べ物にならない。
それを俺は剣の一振りで制圧する。同時に襲い掛かってきた4本の剣をぐるりと一周してそれぞれを叩き落とす。まだ彼らとの練度の差があるとはいえ、なかなかに出来ない芸当だ。そこで俺はある事実に気づく。
「魔力量が増えている……?」
明らかに増えている。特に枯渇するほどの訓練をしたわけでもないのに、考えられるのはダンジョンのコアを破壊したことくらい。コアを破壊したときなんか白い粒子が俺に吸い込まれるような感じだったのは覚えていたけど、まさか魔力量が増大するなんて。
しかも訓練の比じゃなく、ほんとに10レベルくらい飛び越してレベルアップした感じだ。
俺は倒れている兵士たちにもっとこい! と攻撃を促し、訓練は再開される。その日は兵士たちが動けなくなるまで模擬戦闘を行った。それでも俺の魔力量は全然余裕があった。
でもダンジョンで魔力量が上がると言ってもなー、そうそうあんなのあるわけじゃないし、そもそもこれから出現するとも限らない。一回だけのラッキーだと考えておこう。
そんな思いと裏腹に、王都に上げた報告書から返信には驚くべき事が書かれていた。
各地に同様の建造物の存在を確認。これは「突発迷宮」と名付けられた。それに伴い行われた兵士たちのよる探索も続かず困難を極めているとのこと。俺の報告書の通り、魔力を持たぬ者が中に入ることが不可能な場合、対処にあたる戦力が足りないということ。
また、中から魔物が出てくる事態も確認されていて、早急な解決が求められるようだ。
俺はこれはピンチではあるがチャンスでもあるのではないか? と感じた。王家には恩を売れるし、俺は魔力量が上がってさらに強くなれる。win-winというか一人勝ちではないか? こうしちゃおれんと俺は近くの突発迷宮の情報を集めそれを片っ端から排除していくことに決めた。
「ムルムル、そろそろぱわあは溜まったか?」
「ん~、多分溜まったのです」
「よしっ、なら問題ないな」
ムルムルという最大級の保険を手に、俺は突発迷宮踏破に向けて準備を整える。今回の迷宮を基準とすれば特に苦戦をするようなことはなさそうだ。手始めに隣の領、レインのいるクルセント領に向かった。
すでに3つの突発迷宮が発見されており、その対処に苦慮している。レインがいるだろうけど、未知の場所に一人向かわせるのはさすがにダメだろう。今回俺が赴くので突発迷宮を踏破した実績をひっさげ一緒に攻略していこう。
俺は馬を飛ばして、レインの元へと向かう。
すでに迷宮から出てくる魔物の対処に兵士たちが苦戦しており、周囲に被害が出ないようにするのがやっとのようだ。
「あ、レオス!」
「レイン、そっちの様子はどうだ?」
「うん、定期的に魔物が出てくるからそれを倒して何とかしてる」
「まあそれが精一杯だよな。迷宮の中に入れる兵士はいなかったのか?」
「うん、一人も」
たまたま俺の領がいただけで実際はこんなものか、あまり期待は出来ないな。
「よし、俺は迷宮を攻略してくる、レインは皆と、いや俺と一緒に来てくれるか?」
「うん! 待ってました!」
レインが一人で突っ込まなかっただけでも成長したと思う。両親の説得もあったのかな? 面白そうってだけで入っていきそうだからなあ。それにやはり一人というのは何かあったとき怖い。
俺とレインと2人での迷宮探索が始まった。
本人たちは喜ぶというよりは困惑している様子だった。それはそうだろう、いきなり「貴方は魔力持ちですよ」と言われても実感もくそもない。とりあえず彼らにはカモールから魔力の使い方を学んでもらおう。中年から魔力持ちになった人の重用ってどうなってるんだろうか。
そもそも魔力持ちの平民がどう扱われているのかすら知らない。学園で学んでいるということは良い役職につけるということなのか?
有事の際に必要となる存在になることは確かだろう。手当とかも多くつくかもしれない。
まあ難しいことは帰ってからでいい。一応本当に迷宮が消滅するのかこの目で確認したいので、兵士たちに見張りを任せてりる間に一度家に帰って休息を取った。そして次の日、早朝から馬を走らせ迷宮のあった場所に向かう。
そこにはまだ迷宮は存在したが、内部から魔物が溢れるようなこともなくなんとなく存在が希薄になっているように感じだ。
そして恐らく俺が迷宮のコアを破壊してから一日くらい経った時間ぐらいで、目の前にあった洞窟は、幻だったかのように消え去り元の状態に戻っていった。
「ごくろうさま、皆帰っていいよ。後日また調査団として派遣するからその時はよろしくね。後今回魔力があると判明した兵士の人は別途訓練に参加してもらうからそのつもりで」
「はっ! 承知いたしました!」
俺は大勢の兵士と共に帰路についた。今回の迷宮は偶然今まで発見されなかったものなのか、いつ発生したのか、それが分からない。俺は家につくなり王都のお偉いさんに今回の調査の報告書を提出した。
俺はその結果を待ちつつ、魔力持ちの兵士たちと一緒に訓練を行った。まだ魔力循環にも慣れていない兵士4名と多対1の訓練を行った。
「遠慮せずにかかってきていいよ」
俺は訓練相手の兵士に声をかけ、それを合図に4人が襲い掛かってくる。まだ魔法は使えないが、軽い魔力循環は行えているので身体能力の底上げが出来ている。それでもまだ慣れていないのでこうやって実戦形式で体に覚えこませようという試みだ。
それでもアインのところで受けた兵士たちの踏み込みよりずっと早い。その剣技自体は劣っているかもしれないが、単純な膂力や瞬発力は比べ物にならない。
それを俺は剣の一振りで制圧する。同時に襲い掛かってきた4本の剣をぐるりと一周してそれぞれを叩き落とす。まだ彼らとの練度の差があるとはいえ、なかなかに出来ない芸当だ。そこで俺はある事実に気づく。
「魔力量が増えている……?」
明らかに増えている。特に枯渇するほどの訓練をしたわけでもないのに、考えられるのはダンジョンのコアを破壊したことくらい。コアを破壊したときなんか白い粒子が俺に吸い込まれるような感じだったのは覚えていたけど、まさか魔力量が増大するなんて。
しかも訓練の比じゃなく、ほんとに10レベルくらい飛び越してレベルアップした感じだ。
俺は倒れている兵士たちにもっとこい! と攻撃を促し、訓練は再開される。その日は兵士たちが動けなくなるまで模擬戦闘を行った。それでも俺の魔力量は全然余裕があった。
でもダンジョンで魔力量が上がると言ってもなー、そうそうあんなのあるわけじゃないし、そもそもこれから出現するとも限らない。一回だけのラッキーだと考えておこう。
そんな思いと裏腹に、王都に上げた報告書から返信には驚くべき事が書かれていた。
各地に同様の建造物の存在を確認。これは「突発迷宮」と名付けられた。それに伴い行われた兵士たちのよる探索も続かず困難を極めているとのこと。俺の報告書の通り、魔力を持たぬ者が中に入ることが不可能な場合、対処にあたる戦力が足りないということ。
また、中から魔物が出てくる事態も確認されていて、早急な解決が求められるようだ。
俺はこれはピンチではあるがチャンスでもあるのではないか? と感じた。王家には恩を売れるし、俺は魔力量が上がってさらに強くなれる。win-winというか一人勝ちではないか? こうしちゃおれんと俺は近くの突発迷宮の情報を集めそれを片っ端から排除していくことに決めた。
「ムルムル、そろそろぱわあは溜まったか?」
「ん~、多分溜まったのです」
「よしっ、なら問題ないな」
ムルムルという最大級の保険を手に、俺は突発迷宮踏破に向けて準備を整える。今回の迷宮を基準とすれば特に苦戦をするようなことはなさそうだ。手始めに隣の領、レインのいるクルセント領に向かった。
すでに3つの突発迷宮が発見されており、その対処に苦慮している。レインがいるだろうけど、未知の場所に一人向かわせるのはさすがにダメだろう。今回俺が赴くので突発迷宮を踏破した実績をひっさげ一緒に攻略していこう。
俺は馬を飛ばして、レインの元へと向かう。
すでに迷宮から出てくる魔物の対処に兵士たちが苦戦しており、周囲に被害が出ないようにするのがやっとのようだ。
「あ、レオス!」
「レイン、そっちの様子はどうだ?」
「うん、定期的に魔物が出てくるからそれを倒して何とかしてる」
「まあそれが精一杯だよな。迷宮の中に入れる兵士はいなかったのか?」
「うん、一人も」
たまたま俺の領がいただけで実際はこんなものか、あまり期待は出来ないな。
「よし、俺は迷宮を攻略してくる、レインは皆と、いや俺と一緒に来てくれるか?」
「うん! 待ってました!」
レインが一人で突っ込まなかっただけでも成長したと思う。両親の説得もあったのかな? 面白そうってだけで入っていきそうだからなあ。それにやはり一人というのは何かあったとき怖い。
俺とレインと2人での迷宮探索が始まった。
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