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第二章
16 レオス・ヴィダールは一旦休む
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辺境伯領に来て一週間、俺はいつもの体を取り戻した。
ムルムルはどこかに帰ってしまうかと思ったが。
「ムルムルはここにいるのです」むふー
とのことだ。
送還の手段も分からないし、まあ別に害はないからいいだろう。
困ったときには融合も出来るしな。
「あ、しばらくムルムルとの融合は出来ないのです。ちょっとぱわーが足りないから」
「ぱわーってなんだよ。もっと具体的な物差しで表現してくれ」
「ぱわーはぱわーなのです。こう魂のぱぁああああってした何かなのです」むふー
むふー! じゃないんだよ。
どうやら今のムルムルは完全なペットらしい。
一応擬態というか、俺の頭に融合することはいつでも可能らしいので、普段は頭の上で眠ってもらっている。
悪魔については謎が多い。
悪魔教のことも全然詳しく知らないし、他の悪魔がどんなものなのかも。
これからまた誰かが召喚した悪魔と戦わなければならないのだろうか。
いやだなあ。
悪魔以外のことと言えば、皆の心の傷と剣のことだろう。
この一週間で大分癒えたように思える。
エレオノーラはそんなこと考える余裕もないくらいハードな訓練をこなしていた。
「これくらい余裕ですわ~」なんてプルプルと小鹿のように立ち上がりながら虚勢を張っていたけど。
アインはエレオノーラが剣に興味を持ってくれて嬉しそうだった。
いいぞ、脈ありだぞエレオノーラ。
頑張れ!
リボーンとレインについても笑顔が増えたと思う。
しばらく俺やアインの訓練を見学していたが、やはり剣のことになると体が疼いたのだろう。
数日もしないうちに訓練に参加して汗を流した。
完全に心が癒えたかどうかは分からない。
それでも当初よりはずっと良くなったと思う。
そしてアインだ。
やはりアイツは規格外だった。
俺と同じように一体多数の戦闘を行ったが、俺が小手先の技で対処したのに対して奴は力技と技術を合わせて解決した。
まず全方位に群がる兵士を剣の一振りで一掃し、その倒れた後方から襲い掛かってくる兵士たちを順番に倒していく。
人間が完全に同時に動くことなどできはしない。
それをアインは驚異的な嗅覚を用いて、自分に迫る攻撃の早い順番から倒していった。
魔法も使わず、実際には多少スピードをあげたり威力を上げるのに使ってはいるが、あくまで補助的にな使用でしかない。
剣一本で圧倒してみせた。
やはりこいつはすごい。
俺が剣でアインに追いつくことが出来る日は来るのだろうか。
まあ俺には剣はだめでも魔法があるし、ムルムルもいる。
どんな形でもいいと決めたのだ。
使えるものはすべて使って生き残る。
俺の目標は当初から変わりない。
「レオス~いくよ~」
「今行く」
レインの呼びかけに俺は返事をする。
長いようで短かった辺境伯領での滞在は今日で終わりだ。
学園の再開は未定だが、この一週間で各領地での警備体制も十分に整ったようだ。
俺たちは馬車に乗る。
「レオス君、次会うときはもっと強くなるよ!」
「これ以上強くなられると追いつけないよ」
これは偽りのない俺の本音だ。
少しは休んでいいんだぞ?
「それでは、ごきげんようですわ~」
「またね」
「みんな元気でね!」
アインとの別れの挨拶をして俺たちは出発する。
先にエレオノーラたちの住む王都によってから帰る予定だ。
馬車に揺られてその旅路を進んでいく。
数日して王都へと付くと、エレオノーラたちと別れる。
別れ際に「アインに近づくにはもっと剣に興味持ったほうがいいぞ」と釘を刺しておいた。
まあリボーンもいるから、困ったら頼るといいよ。
「愛しのアイン様だもんな」
「だだだからそうではないと何度言えば!」
「はいはい」
ムキーと怒るエレオノーラたちを置いて、俺たちも自分の領地へと帰っていく。
レインと二人きりとなった馬車に静寂が訪れる。
そういえば二人きりになるのは久しぶりだなあ。
昔はよく一緒にいたけど、最近は誰かしらと一緒にいることがほとんどだったし。
レインの方を見る。
……寝ている。
まあ疲れたんだろう。
俺はその姿を眺める。
綺麗になったよなあ、ルビーのように真っ赤に染まった髪は光を反射して綺麗だ。
目鼻立ちもすっきりしていて、少し吊り目なのは俺好みだ。
そんなレインを見ていたら、俺も眠くなってきた。
そんなに整備されていない街道をがたがたと進んでいるが眠気は収まらない。
俺はそのまま眠りについてしまった。
「ふふふ、レオスはかっこいいなあ」
なんだろう、やけに意識がぼんやりする。
まだ眠気が取れていないのかな?
「本当に、私を守ってくれる。王子様だよ」
なんだ? 誰かがしゃべっている気がする。
「だからこれはご褒美」
ちゅっ。
俺の頬に柔らかいものが当たった気がした。
俺は……寝てたんだっけ?
「……あれ? おはよう?」
「――っ! レオス起きてたの!?」
「いや、さっき目を覚ましただけだけど、どうした? 顔が赤いぞ」
「な、なんでもない! ほらそのままでいて!」
俺は自分の体勢を確認する。
レインに寄りかかって寝ていたはずだが、いつの間にかレインの膝枕の上に移動していたようだ。
寝心地がよかったのはそのせいか。
「そうだな、もう少し寝かしてくれ」
「そうして!」
なんだ? やけに強引だな。
まあいいか、今は眠気が勝つ。
「おやすみ、レイン。領地に着く前には起こしてくれよ」
「こっちの方が近いから、別れる前には起こすね」
「頼んだ」
俺は微睡んだ意識のまま、曖昧に答える。
領地に帰ったらまた鍛錬だな。
カモールもリンダも心配してるだろうしな。
父さんは、まあ頑張ってくれ。
子爵に陞爵《しょうしゃく》して忙しいようだし、領地の治安改善と開墾に精を出すのもいいかな。
ああ、やることが一杯ある。
まだまだこの転生人生、やることが多そうだ。
まあたまにはこんな安らかな時間があってもいいだろ。
「お疲れ、レオス」
レインの言葉と共に俺は眠る。
最強になる。
俺の目標はまだまだ道半ばなのだから。
これは俺が最強になるまでの序章に過ぎないのだ。
俺の人生はこれからも続いていく。
ムルムルはどこかに帰ってしまうかと思ったが。
「ムルムルはここにいるのです」むふー
とのことだ。
送還の手段も分からないし、まあ別に害はないからいいだろう。
困ったときには融合も出来るしな。
「あ、しばらくムルムルとの融合は出来ないのです。ちょっとぱわーが足りないから」
「ぱわーってなんだよ。もっと具体的な物差しで表現してくれ」
「ぱわーはぱわーなのです。こう魂のぱぁああああってした何かなのです」むふー
むふー! じゃないんだよ。
どうやら今のムルムルは完全なペットらしい。
一応擬態というか、俺の頭に融合することはいつでも可能らしいので、普段は頭の上で眠ってもらっている。
悪魔については謎が多い。
悪魔教のことも全然詳しく知らないし、他の悪魔がどんなものなのかも。
これからまた誰かが召喚した悪魔と戦わなければならないのだろうか。
いやだなあ。
悪魔以外のことと言えば、皆の心の傷と剣のことだろう。
この一週間で大分癒えたように思える。
エレオノーラはそんなこと考える余裕もないくらいハードな訓練をこなしていた。
「これくらい余裕ですわ~」なんてプルプルと小鹿のように立ち上がりながら虚勢を張っていたけど。
アインはエレオノーラが剣に興味を持ってくれて嬉しそうだった。
いいぞ、脈ありだぞエレオノーラ。
頑張れ!
リボーンとレインについても笑顔が増えたと思う。
しばらく俺やアインの訓練を見学していたが、やはり剣のことになると体が疼いたのだろう。
数日もしないうちに訓練に参加して汗を流した。
完全に心が癒えたかどうかは分からない。
それでも当初よりはずっと良くなったと思う。
そしてアインだ。
やはりアイツは規格外だった。
俺と同じように一体多数の戦闘を行ったが、俺が小手先の技で対処したのに対して奴は力技と技術を合わせて解決した。
まず全方位に群がる兵士を剣の一振りで一掃し、その倒れた後方から襲い掛かってくる兵士たちを順番に倒していく。
人間が完全に同時に動くことなどできはしない。
それをアインは驚異的な嗅覚を用いて、自分に迫る攻撃の早い順番から倒していった。
魔法も使わず、実際には多少スピードをあげたり威力を上げるのに使ってはいるが、あくまで補助的にな使用でしかない。
剣一本で圧倒してみせた。
やはりこいつはすごい。
俺が剣でアインに追いつくことが出来る日は来るのだろうか。
まあ俺には剣はだめでも魔法があるし、ムルムルもいる。
どんな形でもいいと決めたのだ。
使えるものはすべて使って生き残る。
俺の目標は当初から変わりない。
「レオス~いくよ~」
「今行く」
レインの呼びかけに俺は返事をする。
長いようで短かった辺境伯領での滞在は今日で終わりだ。
学園の再開は未定だが、この一週間で各領地での警備体制も十分に整ったようだ。
俺たちは馬車に乗る。
「レオス君、次会うときはもっと強くなるよ!」
「これ以上強くなられると追いつけないよ」
これは偽りのない俺の本音だ。
少しは休んでいいんだぞ?
「それでは、ごきげんようですわ~」
「またね」
「みんな元気でね!」
アインとの別れの挨拶をして俺たちは出発する。
先にエレオノーラたちの住む王都によってから帰る予定だ。
馬車に揺られてその旅路を進んでいく。
数日して王都へと付くと、エレオノーラたちと別れる。
別れ際に「アインに近づくにはもっと剣に興味持ったほうがいいぞ」と釘を刺しておいた。
まあリボーンもいるから、困ったら頼るといいよ。
「愛しのアイン様だもんな」
「だだだからそうではないと何度言えば!」
「はいはい」
ムキーと怒るエレオノーラたちを置いて、俺たちも自分の領地へと帰っていく。
レインと二人きりとなった馬車に静寂が訪れる。
そういえば二人きりになるのは久しぶりだなあ。
昔はよく一緒にいたけど、最近は誰かしらと一緒にいることがほとんどだったし。
レインの方を見る。
……寝ている。
まあ疲れたんだろう。
俺はその姿を眺める。
綺麗になったよなあ、ルビーのように真っ赤に染まった髪は光を反射して綺麗だ。
目鼻立ちもすっきりしていて、少し吊り目なのは俺好みだ。
そんなレインを見ていたら、俺も眠くなってきた。
そんなに整備されていない街道をがたがたと進んでいるが眠気は収まらない。
俺はそのまま眠りについてしまった。
「ふふふ、レオスはかっこいいなあ」
なんだろう、やけに意識がぼんやりする。
まだ眠気が取れていないのかな?
「本当に、私を守ってくれる。王子様だよ」
なんだ? 誰かがしゃべっている気がする。
「だからこれはご褒美」
ちゅっ。
俺の頬に柔らかいものが当たった気がした。
俺は……寝てたんだっけ?
「……あれ? おはよう?」
「――っ! レオス起きてたの!?」
「いや、さっき目を覚ましただけだけど、どうした? 顔が赤いぞ」
「な、なんでもない! ほらそのままでいて!」
俺は自分の体勢を確認する。
レインに寄りかかって寝ていたはずだが、いつの間にかレインの膝枕の上に移動していたようだ。
寝心地がよかったのはそのせいか。
「そうだな、もう少し寝かしてくれ」
「そうして!」
なんだ? やけに強引だな。
まあいいか、今は眠気が勝つ。
「おやすみ、レイン。領地に着く前には起こしてくれよ」
「こっちの方が近いから、別れる前には起こすね」
「頼んだ」
俺は微睡んだ意識のまま、曖昧に答える。
領地に帰ったらまた鍛錬だな。
カモールもリンダも心配してるだろうしな。
父さんは、まあ頑張ってくれ。
子爵に陞爵《しょうしゃく》して忙しいようだし、領地の治安改善と開墾に精を出すのもいいかな。
ああ、やることが一杯ある。
まだまだこの転生人生、やることが多そうだ。
まあたまにはこんな安らかな時間があってもいいだろ。
「お疲れ、レオス」
レインの言葉と共に俺は眠る。
最強になる。
俺の目標はまだまだ道半ばなのだから。
これは俺が最強になるまでの序章に過ぎないのだ。
俺の人生はこれからも続いていく。
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