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第二章

9 レオス・ヴィダールは対峙する

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 対抗戦の決勝戦はあっけないものだった。

 あのアインが負けたのだ、どれほどの相手かと思ったがそうでもなかった。
 というか俺のブラックホールが進化しすぎて魔法系の攻撃軒並み無効化出来て強すぎる。

 最初に発動したころから訓練を重ねたことで、小さな闇の塊の詠唱は短くなったし、魔法と物体の吸い込むものを切り替えることも出来るようになった。
 これで思う存分魔法戦で使うことが出来るようになった。

 あとやっぱりダークバインドとグラビティだよなあ。
 ダークミストも優秀だけど、一対一でダークバイントとグラビティの二重詠唱に耐えれる人間いるか? いないだろ。

 アインが負けたのはアインとの相性と、あとは円状に敷かれたこの闘技場のせいだろう。
 逃げ場のない場所で戦えば自ずと範囲攻撃のある相手には勝ち目がない。
 その範囲攻撃を無効化する俺、最強じゃね?

 それにしても優勝だよ優勝!
 今まで俺が手にしてこなかった優勝という二文字!

 前世のことなんかもう覚えてないけど、おおよそ一番なんてとったことは記憶にない。
 苦節15年、ついに俺は優勝、最強という二文字を手に入れたのだ!

 まあ最強はあくまで暫定的なのでこれからも鍛錬は欠かせないけど。

「レオス! おめでとう!」

 観客席に戻ってくると相変わらずレインが抱き着いてきた。
 俺はゆっくりと抱き返す。

「ああ、ありがと」

 レインは頭を俺の胸あたりにぐりぐりしてくる。
 耳も赤いが恥ずかしいのか? 今更だな

「まあ、わたくしに勝ったのだから当然ですわよ~」

「そうだな」

「対応が違いましてよ!」

 俺の塩対応に文句を言うエレオノーラだったが、彼女を慕うものも多い。
 ここは恭しく傅いておこう。

「これはこれはエレオノーラ様、この度は私との戦い非常に危ういものでした。もしかしたら優勝していたのはエレオノーラ様だったのかもしれませんね」

「きもちわる」

 なんだよ、お前が文句言うからだぞ。
 俺がエレオノーラとやり取りをしているとアインがこっちへ来た。

「レオス君! 優勝おめでとう」

「おーアイン、勝ったぞ。見てたか?」

「見てたよ、なんか思ったより圧勝だったね。負けたのが悔しいよ」

「まあ相性とかあるし、まだまだアインには俺のライバルやってもらわないと困るよ」

「――そうだね! 好敵手だもんね」

「まあ今日はゆっくり休め」

 救護班の回復魔法でアインの傷はもう回復している。
 魔力の補充もマナポーションを使っているので残っているのは精神的な疲れだけだ。

 しかしこの対抗戦を1日でやるのは強行軍だよな。
 閉会式はまた後日やるそうなので今日のところは解散といったところだ。

 ……それでいつまで張り付いているのかな? レイン君

「なんかレオスが遠くに行っちゃいそうで……」

「何言ってんだ、俺がどこかいくならお前も一緒にいくだろ?」

「! そうだね!」

 ぱぁと明るくなったレインの顔を見て俺も少し気恥ずかしさを覚えた。
 レインは昔から変わらない、自分にまっすぐで感情に素直でやりたくないことはやらないところとか、良くないところも変わらないな……。






「最近僕影薄くない?」

「ほら、そんなところで隠れていないで、いきますわよ~」

 俺はエレオノーラに引っ張られていくリボーンの姿を遠巻きに見ていた。
 頑張れ!


 翌日、全校生徒が集まって表彰式が行われた。
 ベスト8から表彰があり、影の薄かったリボーンもちゃんといた。
 準優勝した先輩に負けたみたいだ。

 そして同率3位のアインとエレオノーラが表彰状を貰いメダルを貰った。
 準優勝のエリアルはなにかぶつぶつと言っていたが、一応表彰状を貰いメダルをかけてもらっていた。

 そして優勝した俺は登壇の一番上に上がり学園長から優勝の二文字の書いてある表彰状を貰いとメダルをかけてもらった。
 俺は後ろを振り返って賞状を天に掲げて満面の笑みで笑った。
 全校生徒からの拍手を受け俺はさらに破顔する。

 今一番幸せかもしれない。






 そんな俺の幸せを耳をつんざくような大声が響き渡った。

「こんなものは無効だ! あの歓声は僕に相応しいものだ!」

 エリアルが急に取り乱した。
 さっきまでは我慢していたのだろうか。
 俺が歓声を受けたことで何かが切れてしまったようだ。

 こいつさては挫折を知らないな。
 きっと今まで人生上手くいきまくってたんだろう。
 癇癪を起すのもしょうがない、もう少し早くにしてほしかったが。

「お前ら! お前らもだ! 全部、全部許さないぞ! 思い知るがいい」

 そういうと彼は登壇から飛び降り寮の方へと向かっていく。
 部屋に籠るだけならいいけど、何かされると大変だな。
 剣もブレスレットも寮に置きっぱなしだ。

「先生、俺たちもいきますよ」

 エリアルの後を走ってついていく先生たちにそう言って俺たちも後を追う。
 表彰式はその場で中止となり、各自教室での待機となった。

「18歳になってまで他人の迷惑考えられないとかひでぇ育ち方してるな」

「違いないね」

「ああいうのって子供っぽいっていうのかな?」

「幼稚っていうんですわよ~」

「僕もついていくからね」

 別にそんな大人数で来なくてもよかったんだけど。
 俺は自分の道具が大切であって、決してあの先輩がどうとかじゃないんだよね。

 寮につくと案の定自分の部屋に籠ったエリアルに先生たちが呼びかけている。
 よかった、火をつけたりされたら俺の研究が水の泡になるところだった。

「で、俺はいいけど皆は何しに来たの?」

「俺も一応武器を」

「私はレオスについてきただけ」

「面白そうだからですわ~」

「たまには一緒にいようよ」

 適当だなあ。
 まあそんなやつらだから俺は気楽に学泉生活を送れてるってことなんだがな。
 俺がそんなことを思っていると、けたたましい爆発音が聞こえた。

「爆発!?」

「やっぱり何かする気だった!?」

「避難しますわよ~」

 俺たちは急いで寮の外へと出て状況を確認する。

「なんだよあれ……」



 そこには青い角を携え、人間基準ではガリガリの体をして、足は馬の樋爪を付けた足を持つ異形の生物が鎮座していた。

「我が名はベリト。召喚により参上仕った。さて召喚者よ、何を望む?」

「全部だ! 全部めちゃくちゃにしてしまえ!」

 エリアルの狂言が辺りに響いていた。

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