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第二章

3 レオス・ヴィダールの助言

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「あの、先日は助けてもらってありがとうございましいます」

「いや、何ことだか。あれは魔法が暴発した生徒を心配しただけだよ。マリアーベルさん」

「けっ、みえみえなんだよお前の行動は」

「お前が助ければよかっただろう」

「――っ距離が遠かったんだよ!」

 今俺はクーゾとその友達? のマリア―ベルさんと少しお話をしている。
 先日起きた魔法の授業の時の一幕を遠くから見ていたマリア―ベルさんは見ていて、色々察したらしい。
 平民にしてはと言ったら失礼がが、よく気が付く子だ。
 レインにも見習ってほしい。

「あの、レオス様、私のことはマリアとお呼びください」

「そう? なら俺のこともレオスでいいよ、様づけとか同じ生徒なんだし」

「ではレオスさんと」

「レオスで充分だろ」

「こら! クーゾ君はまた悪態ついて!」

「ふ~ん」

 俺はニヤニヤしながらクーゾを見る。
 仲がいいことで、まあこの国は貴族と平民の選民意識が低いから別に平民を娶っても問題はないからな。
 その後の教育とかが大変だけど。

 二人は同じ家くらす領主の息子と使用人という関係らしい。
 クーゾの兄は出来のいい兄に比べられて卑屈に育ってしまったとマリアから聞いた。
 そんな一人で生活することが多かったから彼とよく遊んでいたらしい。
 
 それで出来上がったのがこれかあ、まあ割りかし優秀なんだけどな。
 特進クラスには入れなかったけどAクラスだし。

「これからは俺じゃなくてクーゾに守ってもらって貰いなよ、クーゾもちゃんと見ていてあげろよ」

「お前に言われなくてもそうするよ」

「そういえばマリアは聖属性なんだっけ」

 俺は話を急に切り替えてマリアに話しかける。
 彼女が平民ながらも学園に入学できたのには聖属性というのも関係している。
 闇属性程ではないが聖属性も希少な属性だ。

 エレオノーラの例があるように、使いこなせれば自衛することも難しくない。

「ちょうどいい伝手があるから紹介してあげるよ」

「はあ」

 そう言って俺は二人を引き連れて教室で優雅に本を読んでいる(ふり)をしているエレオノーラに声をかける。

「エレオノーラ、ちょっといいか?」

「なんですの? わたくしいま少し忙しいのですけど」

 本が逆さまなんだよ。
 どうやって読んでるんだよそれで。

「まあいいからいいから」

 俺は二人をエレオノーラの席の前まで案内して用件を伝える。

「エレオノーラって聖属性の魔法使えるよな?」

「もちろん! わたくしに相応しいと思いませんか?」

「思う思う! それでさ、こちらに同じ聖属性のマリアーベルがいるんだけど、是非魔法を教えてもらえないかな?」

 自分の知らないことは他人に聞けばいいじゃない。
 俺は魔法のことは詳しいという自負があるけど、やはり同じ属性の方が理解する速度も違うだろうし、俺が知っている最強の魔法使いは彼女だからだ。

 いきなりの提案に目を丸くしている三人。

 そこでいち早く正気に戻ったエレオノーラが俺の首根っこを掴み、二人に聞こえないように後ろを向きコソコソと話をしてくる。

「ちょっと、何急にいいだすんですの、わたくしそんなに暇じゃありませんことよ」

「別に毎日教えろってわけじゃないさ、合同訓練の時に一緒にいてあげるだけでいいんだ。それで牽制なるし」

「なんのことかよくわかりませんけど、わたくしにどんなメリットがあって?」

「……魔法に長けた聖女が、平民の子に優しく魔法を教える。それだけで十分だろ?」

 ハッと驚いた顔をしたエレオノーラは少しぶつぶつと考えてからすぐに顔をあげ、未だ呆けている二人に向かって満面の笑みで答える。

「マリアーベルさんといったかしら? 同じ聖属性の使い手として教えられることはすべて教えてあげますわ~」

「へぁあ! あああのよよよろしくお願いします」

「困っている人を助けることは当然ですわ~」

 エレオノーラはこういうところが単純で助かる。
 何故か聖女にこだわりがあるようで、その目的の為には何を持っても揺るがぬ意思を持つ。
 俺の最強に匹敵するのではないかと最近思っている。

「なあ、俺いる意味あったか?

 クーゾが俺に尋ねる。

「一応保護者だろ、変な奴を紹介するかもしれないし」

「でもエレオノーラ様かあ……」

 俺はもう呼びすてで呼んでしまっているが、エレオノーラは本来爵位の高い貴族の子女だ。
 クーゾの反応の方が当然だろう。

 エレオノーラと言えば、さっそくマリアとのお話に夢中である。
 彼女にとって平民は自分を敬う対象であり、大切にしなくてはいけないものなのだ。

 そこに授業の開始を知らせるベルがなる。

「ああ、もうこんな時間ですわ~。それじゃあマリア、今日は学食でご飯を食べますわよ~」

「は、はい、よろしくお願いします」

「ほら、二人とも長く時間取らせて悪かったね、次の授業に急いで」

「……助かったよ」

 クーゾの素直な感謝に俺は苦笑いをする。

「似合わないなあ」





 学食の時間になって、それぞれが席に着く。
 俺とレイン、クーゾとマリア、そしてエレオノーラとアインだ。

 なんでアインも? 多分エレオノーラが強引に引っ張ってきたんだろう。
 あいつぐいぐいくるところあるからなあ。
 アインが不思議そうに周りの人間たちを見る。

「あんまり見掛けない面子だね。自己紹介してもらってもいいかな?僕はアインだ」

「クーゾ、です」

「マリアーベルといいます」

「あれ?二人は面識あるの?」

「ああ、ちょっとな、この前知ったばっかだけど」

「彼女ははわたくしの弟子一号ですわ~」

「ええ! そんな恐れ多いです」

「わたくしも上に立つものとして指導することを覚えなくてはなりませんからね、ちょうどいい機会ですわ~」

「まあ、こう見えてエレオノーラは魔法に関しては問題ないから、大舟に乗ったつもりでいていいよ」

「レオスさん? 魔法以外も優れていますけども?」

「剣術はからっきしじゃないか」

「それは、人には得手不得手がありまして」

「剣術はいいぞ! エレオノーラも今度一緒にどうだ?」

「か、考えておきますわ~」

 そこだよ。
 アインを狙うなら剣術は避けて通れない関門なのに。
 まあどこかで気付くだろう。
 剣術も魔法も切り離せないってことに。

「そういえば、レオス知ってるか? そろそろ対抗戦があるって話」

「ああ、なんでもありのトーナメントだっけ? 全学年参加の」

 対抗戦。
 まあ対抗戦とは名ばかりで、いかに上級生が鍛えられているか自慢する大会でもある。
 俺こそが最強だと気合を入れている下級生を上級生が叩き潰す。
 慢心はよくないよって教えてくれるいい大会だ。

「目指すのはもちろん」

『優勝』

「だろ」

「当然だ」

 俺はアインと目配せをする。
 最強を語るのにたかだが数年早く生まれただけの奴らに負けるわけにはいかない。
 それになんでもあり、それが俺にとって何をもたらすか。

 見せてやるよ。
 俺がこの5年間で積んだ全てを。
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