神速の凡才剣士

藤堂 鷹獅

文字の大きさ
上 下
4 / 30

4話

しおりを挟む
「こ、ここが…

「は、はい」
先ほどの和気藹々とした雰囲気と一転
めっちゃ気まずい…
「少々お待ちください…」
メリアは扉を開けるとパタパタと部屋の中に入っていく
中から何か物音が聞こえるが気づかなかったことにしておこう
「ど、どうぞ」
数分経ち、中からメリアの声が聞こえてくる
「それじゃ、お邪魔しま…まじ?」
中は、どこかの王室なのでは無いかと言う程の豪華な作りになっていた
それにしても、女性特有の甘い匂いが…
って!何を考えてるんだ!!!
ブンブンと頭を振る
「トウヤさん?どうしたんですか?」

「い、いえ!!なんでも無いですよ!?」
 
「なら、いいのですけど…」


会話がない
「あ、紅茶入れますね!」

「あ、ありがとうございます」
メリアは紅茶を作り持ってくる
「どうぞ!」

「ありがとうございます」
俺猫舌なんだよな…
めっちゃ熱そう…
でも、めっちゃいい香りするなぁ
匂いに誘われて一口口に含んだ
「え、なにこれ?」

「どうですか?」
得意げな顔で見てくる
「めっちゃ美味しいですね」

「よかったー…お口に合わなかったらどうしようかと思ってたんですよー」
ん、気まずさが少しなくなったぞ
紅茶の強さ…おそるべし
そこから少しの間雑談が続く
「トウヤさんってどうしてこの学園に来ようと思ったんですか?」

「うーん…なんでだろうなー」
少し考え込む
「お父さんに少しでも近づきたかったから…かな?」

「トウヤさんのお父さんもアルセリア学園出身なんですか?」

「そうですよ。俺のお父さんは…学園を出てトントン拍子で世界のトップに上り詰め、若くして世界を背負って戦ってるようなとんでもない人です…」
なんか少し自慢ぽくなってるけどまぁいいか
「世界のトップって…凄い人なんですね」

「でも俺は、その人を超えるような存在になりたい。そのためなら、なんでもしてやる。苦難?困難?強敵?いくらでもかかってこいやー!って感じです」
少し笑顔で言うが、大マジだ
絶対にあの人を超えてやる
「トウヤさん…凄いですね…」
いつの間にか、メリアは尊敬するような眼差しを俺に向けていた
「私は…王族であるのが嫌で…あの堅苦しい王宮で暮らすのが嫌で…この学校に入れば少しの間、あの環境にいなくて済む!凄い騎士になれればもうあそこに戻らなくて良いんだ!と思ってここにきたんです…」

「え、王族!?」

「はい」
まじか!?
なんで俺は王女様とルームメイトになってるんだ!?
とりあえずパニックに陥る
「あっ!でも、そんなに畏ったりする必要ないですよ。私は、そう言うのが嫌なんです…」
柔らかい笑顔でメリアが言う
「わかりました」

「できれば、敬語もやめてほしいな。なんて思ってます」

「…了解」
メリアは堅苦しさが嫌でここにきたんだ
俺が堅苦しい状況作ってどうするんだ
バカか俺は!
「話戻しますね」

「あい」
メリアは紅茶を口に含む
なんか、色々と可愛いんだよね…
一つ一つの動作が
「だから、こんなどうしようもない理由でここにきた私からすれば、トウヤさんは凄いなぁと思います」

「え?」

「ちゃんと目指すべきものがあって、そのための覚悟があって…尊敬しちゃうなー…」

しばし無言が続く
「ジョウタロウ=キリュウ…」

「あぁ、知っていますよ?かの有名な剣聖ですよね?」

「あぁ」
これは言わないといけないパターンだな…
俺とジョウタロウ=キリュウお父さんの関係について
「お父さんなんだ…」

「すみません。なんて言ったんですか?聞こえなかったんですが…」

「ジョウタロウ=キリュウは俺のお父さんなんだ…」
言ってしまった…
明かしたくない事実を
でも彼女も打ち明けてくれたんだ
他人に知られたくない自分の醜い部分を
この子に隠し事はできない
俺はそう思った
「あの人から見れば、俺なんて…」
やばい…ネガテイブスイッチ入った
止まらない
「俺なんて!俺なんて!あのひ…むぐっ!?」
あの人の足元に到底及ばない…道端の石ころなんだ…
最悪の言葉を言おうとした時、柔らかな感触が唇に走る
ずいっと身を乗り出したメリアが人差し指を俺の唇につけていたのだ
「それ以上言っちゃいけません」
その言葉で我に帰る
「トウヤさん、前向きに考えましょ?気持ち…大事です」

気持ちか…
「あと、意志です。気持ちで自らを高め、意志で世界を変える…私の一番好きな言葉です」

なんか、すごい良い言葉だな
「気持ちで自らを高め、意志で世界を変える…か…」

「ふふっ」
メリアは指を離す
「もう大丈夫ですか?」

「ああ…ありがとう」
この子とルームメイトで本当に良かった
この子じゃなかったら、ネガテイブの淵に行っていただろう
「お互い、頑張りましょうね」

「あぁ、頑張ろうな」
微笑み合う
「ちょっとメリアー?貸していた本返して下さいま…」
そこに現れたシェニア間の悪いお姉さん
「ちょっと!あなた!わたくしの妹に何をしているのですか!?いっぺん死にますか!?てか、しね!」

「ちょ、お姉様!?やめて下さい!」

「メリアまでこの下衆の擁護をするの!?」

「ちょ!?下衆って!?俺にもちゃんとじんけ…」

「下衆は黙ってなさい!」
すんごい剣幕で怒られた
この人めっちゃ怖い…
てか、メリアの姉ってことはこの人も王族か
性格、対照的だな…
「メリアもこの害虫の毒牙に…」
おいおい…今度は害虫かよ…
メンタルブレイク…
「この人は私の、ル・ー・ム・メ・イ・ト!これ以上悪く言わないで!」
それを今言ったら!
…もう俺は知らん
勝手にしてくれ…
ナルヨウニナレ…
「ルームメイトメイトですって!?」
驚愕の表情をしている
「メリアとこのケダモノが同じ部屋…メリア!何もされてませんか!?」
ケダモノ…もうそろやばい…メンタルズタボロ…
「トウヤさんはそんな人じゃありません!」

「どうだか…」
メリアが擁護してくれてなかったら俺、殺されてる勢いだったんじゃないか?
「あ…良いこと思いつきましたわ」
ポンと手を叩く
あー、嫌な予感しかしない…
「あなた名前は?」

「トウヤ=キリュウですけど…」
そういや、この人に名乗ってなかったな
「貧相な名前ね」
全否定かよ
「それでは、わたくしの世紀の大発案をお聞きあれ!」
世紀の大発案って…自分で言うか?
「何ですか?その不満そうな顔は。元々のゲス顔が余計にひどくなってますわ。ゴキブリみたいに」
もうやだ…少し涙目
「まぁ、良いですわ。それでは言いますよ」




「入学式後、私と決闘しなさい」

「え!?」
メリアとはもる
「勝てたら、メリアと同じ部屋でいることを許します。しかし、負けたら、この学園を退学しなさい。いや…それはかわいそうですわね…在学中はわたくしの奴隷にしてあげますわ」
ちょい待て…ハイリスクローリターンじゃないか
メリアと同じ部屋はハイリターンか
「ちょっとお姉様!?学園最強の騎士に勝てるわけないじゃないですか!?」
この人、学園最強なんだ…
「ふふっ、嫌なら辞退してもいいんですよ?そうした場合は、無条件奴隷ですけどね」
なんで入学前にこんな修羅場になってんだ…
「さて、やるんですの?やらないんですの?」
やりたくねぇ…
でも奴隷も嫌だな…

ん?まてよ
これは、いい機会なんじゃないか?
学園最強の騎士とガチで戦えるなんて滅多にないんじゃないか
「気持ちで自分を高め、意志で世界を変える」

「急になんですの?」
多分俺は笑みを浮かべていただろう
「自分の未来は自分の意思で切り開けってことだよな?」
メリアに目を向ける
驚いた顔をしている
「気持ち悪いですわ…急にどうしたんですの?」
少し引いてるけどまあいい
「受けて立ちましょう」
こうして、学園最強の騎士との決闘が決まったのだ

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

新人神様のまったり天界生活

源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。 「異世界で勇者をやってほしい」 「お断りします」 「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」 「・・・え?」 神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!? 新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる! ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。 果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。 一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。 まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!

ただの世界最強の村人と双子の弟子

ヒロ
ファンタジー
とある村にある森に、世界最強の大英雄が村人として生活していた。 そこにある双子の姉妹がやってきて弟子入りを志願する! 主人公は姉妹、大英雄です。 学生なので投稿ペースは一応20時を目安に毎日投稿する予定ですが確実ではありません。 本編は完結しましたが、お気に入り登録者200人で公開する話が残ってます。 次回作は公開しているので、そちらも是非。 誤字・誤用等があったらお知らせ下さい。 初心者なので訂正することが多くなります。 気軽に感想・アドバイスを頂けると有難いです。

3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。 レベル、ステータス、その他もろもろ 最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。 彼の役目は異世界の危機を救うこと。 異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。 彼はそんな人生で何よりも 人との別れの連続が辛かった。 だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。 しかし、彼は自分の強さを強すぎる が故に、隠しきることができない。 そしてまた、この異世界でも、 服部隼人の強さが人々にばれていく のだった。

半身転生

片山瑛二朗
ファンタジー
忘れたい過去、ありますか。やり直したい過去、ありますか。 元高校球児の大学一年生、千葉新(ちばあらた)は通り魔に刺され意識を失った。 気が付くと何もない真っ白な空間にいた新は隣にもう1人、自分自身がいることに理解が追い付かないまま神を自称する女に問われる。 「どちらが元の世界に残り、どちらが異世界に転生しますか」 実質的に帰還不可能となった剣と魔術の異世界で、青年は何を思い、何を成すのか。 消し去りたい過去と向き合い、その上で彼はもう一度立ち上がることが出来るのか。 異世界人アラタ・チバは生きる、ただがむしゃらに、精一杯。 少なくとも始めのうちは主人公は強くないです。 強くなれる素養はありますが強くなるかどうかは別問題、無双が見たい人は主人公が強くなることを信じてその過程をお楽しみください、保証はしかねますが。 異世界は日本と比較して厳しい環境です。 日常的に人が死ぬことはありませんがそれに近いことはままありますし日本に比べればどうしても命の危険は大きいです。 主人公死亡で主人公交代! なんてこともあり得るかもしれません。 つまり主人公だから最強! 主人公だから死なない! そう言ったことは保証できません。 最初の主人公は普通の青年です。 大した学もなければ異世界で役立つ知識があるわけではありません。 神を自称する女に異世界に飛ばされますがすべてを無に帰すチートをもらえるわけではないです。 もしかしたらチートを手にすることなく物語を終える、そんな結末もあるかもです。 ここまで何も確定的なことを言っていませんが最後に、この物語は必ず「完結」します。 長くなるかもしれませんし大して話数は多くならないかもしれません。 ただ必ず完結しますので安心してお読みください。 ブックマーク、評価、感想などいつでもお待ちしています。 この小説は同じ題名、作者名で「小説家になろう」、「カクヨム」様にも掲載しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~

きょろ
ファンタジー
この異世界には人間、動物を始め様々な種族が存在している。 ドラゴン、エルフ、ドワーフにゴブリン…多岐に渡る生物が棲むここは異世界「ソウルエンド」。 この世界で一番権力を持っていると言われる王族の“ロックロス家”は、その千年以上続く歴史の中で過去最大のピンチにぶつかっていた。 「――このロックロス家からこんな奴が生まれるとは…!!この歳まで本当に魔力0とは…貴様なんぞ一族の恥だ!出ていけッ!」 ソウルエンドの王でもある父親にそう言われた青年“レイ・ロックロス”。 十六歳の彼はロックロス家の歴史上……いや、人類が初めて魔力を生み出してから初の“魔力0”の人間だった―。 森羅万象、命ある全てのものに魔力が流れている。その魔力の大きさや強さに変化はあれど魔力0はあり得なかったのだ。 庶民ならいざ知らず、王族の、それもこの異世界トップのロックロス家にとってはあってはならない事態。 レイの父親は、面子も権力も失ってはならぬと極秘に“養子”を迎えた―。 成績優秀、魔力レベルも高い。見捨てた我が子よりも優秀な養子を存分に可愛がった父。 そして――。 魔力“0”と名前の“レイ”を掛けて魔法学校でも馬鹿にされ成績も一番下の“本当の息子”だったはずのレイ・ロックロスは十六歳になったこの日……遂に家から追放された―。 絶望と悲しみに打ちひしがれる……… 事はなく、レイ・ロックロスは清々しい顔で家を出て行った。 「ああ~~~めちゃくちゃいい天気!やっと自由を手に入れたぜ俺は!」 十六年の人生の中で一番解放感を得たこの日。 実はレイには昔から一つ気になっていたことがあった。その真実を探る為レイはある場所へと向かっていたのだが、道中お腹が減ったレイは子供の頃から仲が良い近くの農場でご飯を貰った。 「うめぇ~~!ここの卵かけご飯は最高だぜ!」 しかし、レイが食べたその卵は何と“伝説の古代竜の卵”だった――。 レイの気になっている事とは―? 食べた卵のせいでドラゴンが棲みついた―⁉ 縁を切ったはずのロックロス家に隠された秘密とは―。 全ての真相に辿り着く為、レイとドラゴンはほのぼのダンジョンを攻略するつもりがどんどん仲間が増えて力も手にし異世界を脅かす程の最強パーティになっちゃいました。 あまりに強大な力を手にしたレイ達の前に、最高権力のロックロス家が次々と刺客を送り込む。 様々な展開が繰り広げられるファンタジー物語。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...