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第1章 死神さんと運命の女神と

18 死神の鎌

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「死神さん、お茶です」

「うん、ありがとっ!今日は、このあとまた1件仕事へ行くからね」

 昨日面接?をした応接室で朝食のあと死神さんは書類に目を通していた。
 それがなんの書類なのかレアにはわからないけど、特にやることがなくなったレアはお茶を入れることにした。死神協会に紅茶はなく、緑茶とおせんべい。とお茶セットは決まっているみたい。

 執事さんはどうしたのかって?

 ふふっ、執事さんはただいま2階で蹴り破ったレアの部屋のドアを絶賛修復中です。
 さすがにあれだと寝れないし、死神さんが早く直せって。
 なんだろう、驚いたけど心配してくれてたって聞いてなんだか怒れなくなっちゃいました。

「お仕事・・ですか?人間界でまた亡くなる人が?」

 死神さんのお茶とおせんべいをテーブルに置くと、そばにある椅子にチョコンと座って一緒にティータイム。
 慣れてくると、このお茶会もなかなか奥ゆかしくて・・・。好きかな。
 おせんべいの塩っけがなんとも・・。

「鉱山で生き埋めになる事故が発生するって、アテネから通告が入っている。一番奥で作業していた人間が巻き込まれるって。」

「生き埋めって・・・。まさか・・・ぺっちゃんこですか?」

 人間が鉱山で生き埋めになる。
 実はそれほど珍しくないんだけど、運が悪いと落盤に巻き込まれてぺっちゃんこに・・・。

「大丈夫、それほど大きな事故ではないみたい。」

 ズズズ・・・。

 お茶をすすりながら書類を見終わると封筒に入れて引き出しへ。

「あ、君にこれを渡そうか。本部からの支給品だよ。無くさないように」

 立ち上がると私の膝の上になにか紙袋に入った何かが置かれる。
 無くさないように?普段持ち歩くものかな。
 紙袋の中には小さなハサミ。お裁縫の時に使う糸切りバサミが1つ。

「糸切りバサミ?・・・ですか?」

 チョキチョキ。と何度か握ってみる。小さい頃おばあちゃんが使っていた錆びているような色をしているハサミ。刃の部分なんて2センチくらいしかない。

「それが、君の死神としての鎌だよ」

「こ!?・・これがですか!?」

 死神さんからもらったハサミ。これが私の鎌!?のようです。
 もはや鎌っていうか普通のハサミ以下なような気も・・。

「まだ研修だからね。一番下の死神が使うものだよ。協会に申請すれば選べるようになるから。とにかく、今はそれで我慢!僕も、すべての死神が使う由緒正しき鎌なんだからっ!」

「そ、そうなんですか。わかりました。」

 ちょっと、恥ずかしいな。
 このハサミで選定するなんて。
 でもでも、みんなこのハサミを使うってことは、死神さん以外にも、きっと偉い人も使ったんだろうなぁ。

「ちなみに、ローブの内側に入れる場所があるからしまっとくといいよ」

 死神さんが左胸のあたりをポンポンっと叩いている。
 それに合わせてローブの左側の胸あたりを探ってみる。

(あ。・・・)

 確かに、ポケットがついてる。
 レアはその中にハサミを入れる。
 でも、ハサミが小さすぎてぶっかぶかです。
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