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第4章 魔導都市の陰謀
16-7 夜の砂漠へ
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「ねぇ?まだ怒ってるの?」
「べつにぃ」
馬車に揺られるなか、アメリアはムスっとしたそららに声をかけた。
ここは、ハクが派遣した砂の蠍討伐部隊が率いる救護班の馬車。
私たちは砂の蠍が根城にしていた砂漠から無事に脱出できた・・・。ような気がする。
結局のところ、トキが言うに、転送の魔法陣はあの一瞬に全ての魔力を放出して壊れたのではないか。
さらに、大幅な定員オーバー。過負荷状態になり、機械も故障。その結果、あのような状態にあったのではないか。と推察する。
そう、そららが怒っているのはそこなのだ。
「まぁまぁ、初めからアメリアも『恨みっこなし』って言ってたじゃない。とりあえず、生きてるだけよしとしましょうよ」
「ねぇね、ご機嫌なおして?」
「・・・」
ご立腹のそらら。
私たちは、別にそららに悪意があるわけではない。全てはたまたまだった。
アメリアが起動した転送魔法は地上に出る前に効力がなくなり、地下神殿より少し離れたところに『生き埋め』状態になったのだ。例えて言いようがないのだけど、頭だけ残してすべて砂漠埋まっちゃう感じ。
砂だから軽いかな?と思ってたんだけど、これがまた重くて動きやしないからびっくり。私たちはそのまま首から下は埋まってる状態だったの。
そらら以外。
そららだけは、あの、無駄に大きな胸が砂の上に乗っかっていて、少し上半身がみんなより出ていたんだけど、・・・。そららも最初体の自由が効かないから風で吹かれておでこのホクロが見えちゃって。
それで、不機嫌。
別に、ホクロなんてたいしたことないんだけど、何がそんなに嫌なんだろ。
「ダメだ・・・こりゃ」
「はぁ・・・」
私とアリシアは顔を見合わせてため息を付くとそのままそこに座り込んだ。
結局、そららはほとんど自力で出てこれたんだけど、少ししたら討伐隊の馬車が見えたからそのまま助けて
もらって、トキが事の顛末を報告してくれて、一旦王宮へ戻るって感じ。
正直、あんな状態で助けてもらったこっちのほうがなんか恥ずかしい。
「まぁ。とりあえず王宮に着くまで寝て少しでも休みましょう。その子みたいに」
「その子?」
「・・・」
アメリアは大きなあくびをするとその場に横になった。
私はアリシアとそららの顔を見てみる。
アリシアも、私とそらのことを見ている。
下を向いて動かないのはそららだけ。よく見てみると、静かに寝息を立てている。
よほど疲れたのか、ほんとに死んだように寝ていて気づかなかったわ。
そう言えば、私たち、夜からずっと戦いっぱなしだったもんね。
横になるアメリアを見ると、急激に睡魔に襲われてくる。
アリシアも、そららにもたれて静かに寝ている。
私もそららにもたれかかると、小刻みに揺れる馬車に身を任せ目を閉じた。
王宮で目が覚めた時、私は一番最後だった。
アメリアも、そららも、アリシアも、エルだって起きていた。
トキと女の子はここにはいないみたい。別室かな?
(はぁ・・・。布団で寝られるって幸せ・・・。)
目の前に広がる天井を見ながら私は大きなため息をついた。
ついさっきまで激戦を繰り広げてたとは思えないわ。
「・・・」
そららとアメリアが何かを話しているみたい。
でも、上手く聞こえない。まだ眠いし、もう少し寝ていたい気持ちな私は特に気にしないでもう一度寝ようかと二度寝の準備をしていた。
「無理だよ」
アリシアの声が聞こえた。
何が無理なんだろ。また、何か企んでるのかな。めんどくさくなければいいけど。
「いや、でもこれ以上は・・・」
意味あり気なアメリアの言葉は最後のほうが聞こえなかった。
この流れは嫌な予感しかしない。
「ねぇ、何の話?」
私は布団に入ったまま声をかけた。
起き上がるのも面倒だし、どうでもよい話であればそのまま寝れる。むしろ、寝たい。
「あ、お姉ちゃん!起きたの??もう2日も寝てるから心配したよ!」
「ふ、ふつかぁ!?」
私は布団から体を起こすと、部屋の中央に置かれたテーブルに集まる3人の姿を見た。
みんなサン=ドラゴで用意された綺麗な服を着ている。
・・・私だけ汚い。あの日のまま。
「汚い・・・」
「わかってるわよ!!そんなこと!私も、トキに言って・・・」
「待って!!」
私がベッドから起きて入口の扉に向かおうと歩き出すとアメリアが強めの声で私のことを止める。
他の2人も真剣な顔だ。
「ど、どうしたのよ」
「いいから、待って」
「う、うん・・・」
私が何かしでかしたのか?と思うくらいの神妙な顔でこっちを見る3人。ここまで来ると気味が悪い。
私はとりあえず3人の座るテーブルへ行くことにして、そっと腰をかけた。
変わらず、何か言いにくそうに3人は黙っている。
「な、なに?私、なにかした」
私の声に答えにくそうに顔を見合わせる3人。
アメリアが、少し言いにくそうに答えた。
「ま、まぁ。私・・・たち?かな」
「ちょっと!!うちまで巻き込まないでよ!!」
「ねぇね、ずるい」
「そうよ、そらも仲間でしょ!同じよ!」
「ちょ、ちょっと待って!意味がわかんないよ」
目の前でそらら対アメリア、アリシアの戦いが始まった。
何かを、揉めているらしい。それも、私たち?のせいで。
「だーかーらー。壊しちゃったでしょ?私たち」
「壊した?」
いまいちピンとこない私。
どうやら、何かを壊した事でもめているらしい。でも、今起きた私は無関係な気がするんだけど。
「そららを助けるのに、地下神殿破壊しちゃったじゃない。」
「・・・あぁ!」
あぁ!思い出した。あそこ、一応この国では重要な遺跡だったんだ!トキもそんなこと言っていたような・・・。
「だから、うちは捕まってただけで何も壊してないってば!!」
「ねぇね、ずるい」
「そうよ!あんた、こんな時に一人逃げるなんてずるいわよ!」
「そ、そんなこと今言ってても仕方ないでしょ!それで、なんでここで話し合ってるの!?私たち、閉じ込められてるの!?」
「・・・」
また、沈黙が広がった。
「アリスたち。死刑・・・かも」
「ちょ、ちょっと縁起でもない!!」
「いえ、本当なのよ。きらら。あなたが寝ている間、トキが代表で説明に行ってるわ」
「・・・うそ。私たち、なにも悪いことしてないのに・・・」
「まぁ、大事な遺跡を破壊しちゃったら普通死刑。よね」
・・・。
静かな空気が部屋に広がる。
気まずい。
誰だ、一番壊したやつ。
そもそも、誰のせい?私たちが悪いの?
わ、わたしは弓も使ってないし、魔法使えないからこうゆうときは攻撃魔法が得意そうなアメリアやアリシアの方が罪が重そうな・・・。
私が視線をチラッと二人に向けると、とてもそんなことを言い出せるような雰囲気ではなかった。
「逃げよ」
「っえ?」
アリシアから聞こえた言葉は意外だった。
逃げる。
何から?
この国から?
それって、国際指名手配!ってやつじゃないの!?
っていうよりも、簡単に逃げられるモノなの!?
「やっぱ、そうだよね」
「うち今回は関係ないのにぃ・・・」
私以外の3人の中では、脱走ということがほぼ決まっているらしい。
いやいや、あんたたち、いろんな意味でまずくない!?
「よしっ!みんな、トキには悪いけど逃げましょう!このまま待ってて拘束されたら終わりよ!」
「逃げよ」
「はぁ。うちまでなんでぇ」
いやいやいや、あんたたち、何考えてるの?本気?
アメリアの声で立ち上がる3人は灯り取り用にあった人が一人通れるかどうかって大きさの窓からそっと部屋を抜け出すと闇夜の城下町へ移動していく。
「ちょ、ちょっと待って!本気!?3人ともよく考えて、逃げるなんて」
「お姉ちゃんも早く!二人が行っちゃう!」
部屋に残された私は窓の外で手招きしているそららを見て足踏みしながらその場少し考えたけど、一人残っても仕方ない!という結論でエルを抱き、弓を持つとそららが伸ばした手を掴み、外へ出た。
外は砂漠の国にしては少し肌寒いくらいだった。
真っ暗な城下町で月明かりに照らされた大小二つの影が、少し離れたところで手招きをしているように見える。
「あ、あんた。魔剣は!?」
「魔剣?取られちゃったじゃん!あのクソジジィに!!」
「あ、あぁ。そうだったわね」
そららは手ぶらで、普通の町娘のような姿だった。もう、だいぶこの子といるように感じるけど、こんな姿は初めて見るわ。こうしてれば可愛いのに。
「今は、アメリアの故郷、ムーンブルグに行ってみようよ!うちの魔剣もそこにあると思う。あのジジィはムーンブルグへ行った変な奴と知り合いだったみたいだし」
「変な奴?そういえば地下神殿でもそんなこと言ってたわよね?なに?それ」
「うーん・・・。わかんない!今はほらっ、二人が待ってる!」
私の手を握って走り出すそらら。私もエルも、それにつられて走り出す。
この時はまだわからなかったけど、私の運命の歯車はこの世界でも確実に動き始めていた。
「べつにぃ」
馬車に揺られるなか、アメリアはムスっとしたそららに声をかけた。
ここは、ハクが派遣した砂の蠍討伐部隊が率いる救護班の馬車。
私たちは砂の蠍が根城にしていた砂漠から無事に脱出できた・・・。ような気がする。
結局のところ、トキが言うに、転送の魔法陣はあの一瞬に全ての魔力を放出して壊れたのではないか。
さらに、大幅な定員オーバー。過負荷状態になり、機械も故障。その結果、あのような状態にあったのではないか。と推察する。
そう、そららが怒っているのはそこなのだ。
「まぁまぁ、初めからアメリアも『恨みっこなし』って言ってたじゃない。とりあえず、生きてるだけよしとしましょうよ」
「ねぇね、ご機嫌なおして?」
「・・・」
ご立腹のそらら。
私たちは、別にそららに悪意があるわけではない。全てはたまたまだった。
アメリアが起動した転送魔法は地上に出る前に効力がなくなり、地下神殿より少し離れたところに『生き埋め』状態になったのだ。例えて言いようがないのだけど、頭だけ残してすべて砂漠埋まっちゃう感じ。
砂だから軽いかな?と思ってたんだけど、これがまた重くて動きやしないからびっくり。私たちはそのまま首から下は埋まってる状態だったの。
そらら以外。
そららだけは、あの、無駄に大きな胸が砂の上に乗っかっていて、少し上半身がみんなより出ていたんだけど、・・・。そららも最初体の自由が効かないから風で吹かれておでこのホクロが見えちゃって。
それで、不機嫌。
別に、ホクロなんてたいしたことないんだけど、何がそんなに嫌なんだろ。
「ダメだ・・・こりゃ」
「はぁ・・・」
私とアリシアは顔を見合わせてため息を付くとそのままそこに座り込んだ。
結局、そららはほとんど自力で出てこれたんだけど、少ししたら討伐隊の馬車が見えたからそのまま助けて
もらって、トキが事の顛末を報告してくれて、一旦王宮へ戻るって感じ。
正直、あんな状態で助けてもらったこっちのほうがなんか恥ずかしい。
「まぁ。とりあえず王宮に着くまで寝て少しでも休みましょう。その子みたいに」
「その子?」
「・・・」
アメリアは大きなあくびをするとその場に横になった。
私はアリシアとそららの顔を見てみる。
アリシアも、私とそらのことを見ている。
下を向いて動かないのはそららだけ。よく見てみると、静かに寝息を立てている。
よほど疲れたのか、ほんとに死んだように寝ていて気づかなかったわ。
そう言えば、私たち、夜からずっと戦いっぱなしだったもんね。
横になるアメリアを見ると、急激に睡魔に襲われてくる。
アリシアも、そららにもたれて静かに寝ている。
私もそららにもたれかかると、小刻みに揺れる馬車に身を任せ目を閉じた。
王宮で目が覚めた時、私は一番最後だった。
アメリアも、そららも、アリシアも、エルだって起きていた。
トキと女の子はここにはいないみたい。別室かな?
(はぁ・・・。布団で寝られるって幸せ・・・。)
目の前に広がる天井を見ながら私は大きなため息をついた。
ついさっきまで激戦を繰り広げてたとは思えないわ。
「・・・」
そららとアメリアが何かを話しているみたい。
でも、上手く聞こえない。まだ眠いし、もう少し寝ていたい気持ちな私は特に気にしないでもう一度寝ようかと二度寝の準備をしていた。
「無理だよ」
アリシアの声が聞こえた。
何が無理なんだろ。また、何か企んでるのかな。めんどくさくなければいいけど。
「いや、でもこれ以上は・・・」
意味あり気なアメリアの言葉は最後のほうが聞こえなかった。
この流れは嫌な予感しかしない。
「ねぇ、何の話?」
私は布団に入ったまま声をかけた。
起き上がるのも面倒だし、どうでもよい話であればそのまま寝れる。むしろ、寝たい。
「あ、お姉ちゃん!起きたの??もう2日も寝てるから心配したよ!」
「ふ、ふつかぁ!?」
私は布団から体を起こすと、部屋の中央に置かれたテーブルに集まる3人の姿を見た。
みんなサン=ドラゴで用意された綺麗な服を着ている。
・・・私だけ汚い。あの日のまま。
「汚い・・・」
「わかってるわよ!!そんなこと!私も、トキに言って・・・」
「待って!!」
私がベッドから起きて入口の扉に向かおうと歩き出すとアメリアが強めの声で私のことを止める。
他の2人も真剣な顔だ。
「ど、どうしたのよ」
「いいから、待って」
「う、うん・・・」
私が何かしでかしたのか?と思うくらいの神妙な顔でこっちを見る3人。ここまで来ると気味が悪い。
私はとりあえず3人の座るテーブルへ行くことにして、そっと腰をかけた。
変わらず、何か言いにくそうに3人は黙っている。
「な、なに?私、なにかした」
私の声に答えにくそうに顔を見合わせる3人。
アメリアが、少し言いにくそうに答えた。
「ま、まぁ。私・・・たち?かな」
「ちょっと!!うちまで巻き込まないでよ!!」
「ねぇね、ずるい」
「そうよ、そらも仲間でしょ!同じよ!」
「ちょ、ちょっと待って!意味がわかんないよ」
目の前でそらら対アメリア、アリシアの戦いが始まった。
何かを、揉めているらしい。それも、私たち?のせいで。
「だーかーらー。壊しちゃったでしょ?私たち」
「壊した?」
いまいちピンとこない私。
どうやら、何かを壊した事でもめているらしい。でも、今起きた私は無関係な気がするんだけど。
「そららを助けるのに、地下神殿破壊しちゃったじゃない。」
「・・・あぁ!」
あぁ!思い出した。あそこ、一応この国では重要な遺跡だったんだ!トキもそんなこと言っていたような・・・。
「だから、うちは捕まってただけで何も壊してないってば!!」
「ねぇね、ずるい」
「そうよ!あんた、こんな時に一人逃げるなんてずるいわよ!」
「そ、そんなこと今言ってても仕方ないでしょ!それで、なんでここで話し合ってるの!?私たち、閉じ込められてるの!?」
「・・・」
また、沈黙が広がった。
「アリスたち。死刑・・・かも」
「ちょ、ちょっと縁起でもない!!」
「いえ、本当なのよ。きらら。あなたが寝ている間、トキが代表で説明に行ってるわ」
「・・・うそ。私たち、なにも悪いことしてないのに・・・」
「まぁ、大事な遺跡を破壊しちゃったら普通死刑。よね」
・・・。
静かな空気が部屋に広がる。
気まずい。
誰だ、一番壊したやつ。
そもそも、誰のせい?私たちが悪いの?
わ、わたしは弓も使ってないし、魔法使えないからこうゆうときは攻撃魔法が得意そうなアメリアやアリシアの方が罪が重そうな・・・。
私が視線をチラッと二人に向けると、とてもそんなことを言い出せるような雰囲気ではなかった。
「逃げよ」
「っえ?」
アリシアから聞こえた言葉は意外だった。
逃げる。
何から?
この国から?
それって、国際指名手配!ってやつじゃないの!?
っていうよりも、簡単に逃げられるモノなの!?
「やっぱ、そうだよね」
「うち今回は関係ないのにぃ・・・」
私以外の3人の中では、脱走ということがほぼ決まっているらしい。
いやいや、あんたたち、いろんな意味でまずくない!?
「よしっ!みんな、トキには悪いけど逃げましょう!このまま待ってて拘束されたら終わりよ!」
「逃げよ」
「はぁ。うちまでなんでぇ」
いやいやいや、あんたたち、何考えてるの?本気?
アメリアの声で立ち上がる3人は灯り取り用にあった人が一人通れるかどうかって大きさの窓からそっと部屋を抜け出すと闇夜の城下町へ移動していく。
「ちょ、ちょっと待って!本気!?3人ともよく考えて、逃げるなんて」
「お姉ちゃんも早く!二人が行っちゃう!」
部屋に残された私は窓の外で手招きしているそららを見て足踏みしながらその場少し考えたけど、一人残っても仕方ない!という結論でエルを抱き、弓を持つとそららが伸ばした手を掴み、外へ出た。
外は砂漠の国にしては少し肌寒いくらいだった。
真っ暗な城下町で月明かりに照らされた大小二つの影が、少し離れたところで手招きをしているように見える。
「あ、あんた。魔剣は!?」
「魔剣?取られちゃったじゃん!あのクソジジィに!!」
「あ、あぁ。そうだったわね」
そららは手ぶらで、普通の町娘のような姿だった。もう、だいぶこの子といるように感じるけど、こんな姿は初めて見るわ。こうしてれば可愛いのに。
「今は、アメリアの故郷、ムーンブルグに行ってみようよ!うちの魔剣もそこにあると思う。あのジジィはムーンブルグへ行った変な奴と知り合いだったみたいだし」
「変な奴?そういえば地下神殿でもそんなこと言ってたわよね?なに?それ」
「うーん・・・。わかんない!今はほらっ、二人が待ってる!」
私の手を握って走り出すそらら。私もエルも、それにつられて走り出す。
この時はまだわからなかったけど、私の運命の歯車はこの世界でも確実に動き始めていた。
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