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第3章 宮廷に潜む闇
12-7 宮廷魔導士試験、3日目 決勝戦
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アリシアは、再びフランと別れた待合室のようなところへ戻ってきた。
試合のあと、2回戦が終わるまでは対戦相手の戦い方を見ることはズルい!との理由から今回は休憩という名の軟禁状態だった。
まぁ、初戦のアルビドは無事に作戦通りに倒せた。
余裕はあまりなかったけど、それでもいつも通りにできたと思う。
試合のあと、一番に報告したかったフランとは会っていない。どこにいるのかわからないでいた。
「試験の時はずっと一緒って言ってたのに・・・」
アリシアは少し苛立ったような口調で椅子の座ると、隣のベンチを足で軽く蹴飛ばしていた。
次の対戦相手は、きっとアメリアだろう。
外の様子は見えなかったけど、すごい大きな音がした。アリシアの予想では、トキの土魔法で作った何かが崩れた音。と考えている。そうすると、崩れてしまったのであれば魔力切れ、もしくは術者の戦闘不能が考えられる。
アメリアは強い。
正直、勝つ方法がなかった。
「アリシアさん、もうすぐ時間です。アメリアさんも地上に向かいますので行ってください。ここは内側から鍵を閉めますので」
地下通路の方から宮廷騎士の1人がドアを開けた。
「わかりました。すぐに行きます。・・・あの、フラン様は?」
「さぁ?とくになにも存じておりませんが」
「そうですか・・・わかりました。ありがとうございます。」
アリシアは立ち上がり地上へ続くドアに手を伸ばす。
目を閉じて深呼吸をすると、そこには懐かしいものと、見たこともない物が置かれている。
アリシアはそれを手に取ると
「がん・ばれあ・・りしあ。綺羅星」
紙に書かれたこの世界での言葉。
それは昨日の夜フランと見たトルヴァニアの樹の下に書かれていたモノと同じものだった。
そして、綺羅星。元の世界でのきららの名前。まだ、この世界の文字がわからないからわかる文字でかいたのだろう。
アリシアは一緒に置いてあったネックレスを見て、それがフレイアを召喚するに必要な石だと悟った。
自分がいない3日間で、姉たちは自分たちのためにこの小さな輝石を得るためになにかしていたに違いない。なれないメッセージまで。
ここに、どうゆうわけか2人がいた。
さっきは紫色の髪が観客席で見えたけど、姉たちは自分が知らないところでいつも守ってくれている。
そう実感できた瞬間だった。
アリシアは少し大きめのネックレスを頭からスッポリとかぶるように身につけると、勢いよく地上に駆け上がった。
私とそらはリカを挟むように宮廷魔導師に紛れて座っていた。
頭上の席には国王様、王女様。貴族の方がいらっしゃる。恐れ多くて上を向けない。
まぁ、そらら曰く、面倒だから関わりたくない。なるべく、目立たないように。
と言っている。
相手が国王様だし、それには賛成。さわらぬ神になんとやら・・・。
「あ、アリシア!」
そららは私たちが出てきた通路から出てくる小さな銀髪の少女。アリシアを見つけた。
が、リカに睨まれると申し訳なさそうにシュンっと小さくなっていた。
アリシアもこっちに気がついて手を振っている。
私とそららは小さく手を振るのみだった。
アリシアとは反対側の入場口からは大きな銀髪の女性。アメリアがゆっくりと現れた。
私の姿を見て、彼女は少し驚いたものの私は笑顔で手を振り返す。
アリシアも、アメリアもどっちも大事。アメリアとはお友達になれるかもしれないし。
「やっぱり、アリシアが相手か」
「アリスも、きっとアメリアが相手だと思った」
二人は向き合ったままお互いにらみ合ったままだった。
「アリスのおねえちゃんと、知り合いなの?」
「お姉ちゃん?私はさっき食事処で知り合ったウエイトレスだと思ったけど?」
「お姉ちゃんも、アリスもウエイトレスじゃない。なにか事情があったんだと思う」
「ふぅん。事情ね。まぁ、私はなんでもいいけど。早く終わらせちゃいましょ」
「アリスの勝ち・・・でね」
「輝石も、契約もしていない魔道士が契約者に勝てるわけないでしょ?いくら魔力が膨大でも、契約者の力には叶わないわ」
「そうだね。でも、負けない」
「その世間知らずなとこ、ムカつくのよ!」
アメリアが声を荒げる。
遠目に見ていてよく聞こえないけど、どうやら仲が悪いらしい。
まぁ、どっちも頑固って言えば頑固のような・・・。
「これより!決勝戦、アメリア・リズ・ノークベルとアリシア・ウィル・トルヴァニアの決勝戦を開始する。」
リカが立ち上がると、会場のざわめきもなくなり、嘘のように静まり返る。
誰もが、この瞬間を楽しみにしていたのだろう。
「腕輪の破壊、魔力切れ、ギブアップ。いづれかにより勝敗を決めるものとする。以上!始め!」
リカが手を上空に向けると、火柱が数本天に昇る。
それを合図に、アメリアは氷の鎗を。
アリシアは炎の鎗を。
観客たちは割れんばかりの歓声を。
炎と氷が激突した。
試合のあと、2回戦が終わるまでは対戦相手の戦い方を見ることはズルい!との理由から今回は休憩という名の軟禁状態だった。
まぁ、初戦のアルビドは無事に作戦通りに倒せた。
余裕はあまりなかったけど、それでもいつも通りにできたと思う。
試合のあと、一番に報告したかったフランとは会っていない。どこにいるのかわからないでいた。
「試験の時はずっと一緒って言ってたのに・・・」
アリシアは少し苛立ったような口調で椅子の座ると、隣のベンチを足で軽く蹴飛ばしていた。
次の対戦相手は、きっとアメリアだろう。
外の様子は見えなかったけど、すごい大きな音がした。アリシアの予想では、トキの土魔法で作った何かが崩れた音。と考えている。そうすると、崩れてしまったのであれば魔力切れ、もしくは術者の戦闘不能が考えられる。
アメリアは強い。
正直、勝つ方法がなかった。
「アリシアさん、もうすぐ時間です。アメリアさんも地上に向かいますので行ってください。ここは内側から鍵を閉めますので」
地下通路の方から宮廷騎士の1人がドアを開けた。
「わかりました。すぐに行きます。・・・あの、フラン様は?」
「さぁ?とくになにも存じておりませんが」
「そうですか・・・わかりました。ありがとうございます。」
アリシアは立ち上がり地上へ続くドアに手を伸ばす。
目を閉じて深呼吸をすると、そこには懐かしいものと、見たこともない物が置かれている。
アリシアはそれを手に取ると
「がん・ばれあ・・りしあ。綺羅星」
紙に書かれたこの世界での言葉。
それは昨日の夜フランと見たトルヴァニアの樹の下に書かれていたモノと同じものだった。
そして、綺羅星。元の世界でのきららの名前。まだ、この世界の文字がわからないからわかる文字でかいたのだろう。
アリシアは一緒に置いてあったネックレスを見て、それがフレイアを召喚するに必要な石だと悟った。
自分がいない3日間で、姉たちは自分たちのためにこの小さな輝石を得るためになにかしていたに違いない。なれないメッセージまで。
ここに、どうゆうわけか2人がいた。
さっきは紫色の髪が観客席で見えたけど、姉たちは自分が知らないところでいつも守ってくれている。
そう実感できた瞬間だった。
アリシアは少し大きめのネックレスを頭からスッポリとかぶるように身につけると、勢いよく地上に駆け上がった。
私とそらはリカを挟むように宮廷魔導師に紛れて座っていた。
頭上の席には国王様、王女様。貴族の方がいらっしゃる。恐れ多くて上を向けない。
まぁ、そらら曰く、面倒だから関わりたくない。なるべく、目立たないように。
と言っている。
相手が国王様だし、それには賛成。さわらぬ神になんとやら・・・。
「あ、アリシア!」
そららは私たちが出てきた通路から出てくる小さな銀髪の少女。アリシアを見つけた。
が、リカに睨まれると申し訳なさそうにシュンっと小さくなっていた。
アリシアもこっちに気がついて手を振っている。
私とそららは小さく手を振るのみだった。
アリシアとは反対側の入場口からは大きな銀髪の女性。アメリアがゆっくりと現れた。
私の姿を見て、彼女は少し驚いたものの私は笑顔で手を振り返す。
アリシアも、アメリアもどっちも大事。アメリアとはお友達になれるかもしれないし。
「やっぱり、アリシアが相手か」
「アリスも、きっとアメリアが相手だと思った」
二人は向き合ったままお互いにらみ合ったままだった。
「アリスのおねえちゃんと、知り合いなの?」
「お姉ちゃん?私はさっき食事処で知り合ったウエイトレスだと思ったけど?」
「お姉ちゃんも、アリスもウエイトレスじゃない。なにか事情があったんだと思う」
「ふぅん。事情ね。まぁ、私はなんでもいいけど。早く終わらせちゃいましょ」
「アリスの勝ち・・・でね」
「輝石も、契約もしていない魔道士が契約者に勝てるわけないでしょ?いくら魔力が膨大でも、契約者の力には叶わないわ」
「そうだね。でも、負けない」
「その世間知らずなとこ、ムカつくのよ!」
アメリアが声を荒げる。
遠目に見ていてよく聞こえないけど、どうやら仲が悪いらしい。
まぁ、どっちも頑固って言えば頑固のような・・・。
「これより!決勝戦、アメリア・リズ・ノークベルとアリシア・ウィル・トルヴァニアの決勝戦を開始する。」
リカが立ち上がると、会場のざわめきもなくなり、嘘のように静まり返る。
誰もが、この瞬間を楽しみにしていたのだろう。
「腕輪の破壊、魔力切れ、ギブアップ。いづれかにより勝敗を決めるものとする。以上!始め!」
リカが手を上空に向けると、火柱が数本天に昇る。
それを合図に、アメリアは氷の鎗を。
アリシアは炎の鎗を。
観客たちは割れんばかりの歓声を。
炎と氷が激突した。
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