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1巻
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しおりを挟む第一章 異世界というやつに転生しました。
普通の日本人だった私が異世界に転生して最初に見たのは、周りのがっかりした表情だった。
清潔そうな白い布に覆われた部屋。
そこには貴族風の格好の美青年さん、執事風の格好のお爺さん、それから白衣のお医者さんに、たくさんの看護師さんと助産師らしきお婆さん。みんなが生まれたばかりの私を取り囲んでいる。
その全員が一様に落ち込んだ表情をしていた。
なんだこれ。
あまりに暗い雰囲気に、赤ちゃんが生まれためでたい日だってのにむしろ葬式だよ、と思わず心の中で突っ込んだ。あとから考えると、この日は彼らにとって、おめでたい日がいきなり葬式に変わったようなものだったんだろうけど。
助産師のお婆さんが呻くように言う。
「まさか魔力をほとんどもたずに生まれてきただけではなく、目すら見えない赤子とは……」
え? 見えてるけど!? 超見えてますけど!!
私はしゃべれないので、再び心の中で突っ込む。
現にこうして周囲の状況を、きっちり認識できているぐらいだ。
そう思ったとき、私はようやく違和感に気づく。
あれ? そもそも赤ちゃんがこんなに周囲をはっきりと見ることなんてできるっけ。目を開けるのすら、数日経たないとできなかったような……
執事の服を着た白髪のお爺さんが、医者らしき男性にたずねる。
「間違いないのか?」
「はい……あらゆる魔法で検査しましたが、魔力は一般人の百分の一レベル。さらに目に先天性の異常があり、成長しても目が見えるようになることはないでしょう」
「まさか、魔法使いの名家として名高いシルフィール公爵家の第一子が魔力をほとんどもたずに生まれてくるとは……」
つまりはそういうことらしい。
私の生まれてきた家は魔法使いの名家で、それなのに私は魔力をほとんどもたずに生まれてきたと。そりゃ、こんな雰囲気にもなりますよね、と同情する。
私を抱きかかえる助産師の後ろから、啜り泣く声が聞こえてきた。
「こんなはず、こんなはずないわ……」
「奥さま……」
そこには綺麗な女性が、ベッドに横たわっていた。
薄着の袖から覗く腕は真っ白で細く、迂闊に触れたら折れてしまいそうだ。容姿はどこか儚げで美しく、だけど目には気の強さを感じさせる光があった。今は悲嘆にくれているけど。
どうやら、この女性が私の母みたいだ。
そんな女性のもとに貴族風の美青年が駆け寄り、その手を握って、情熱的な声音で話しかけた。
「ダリア、お前が気に病むことはない! お前はよくがんばってくれた! ただ……今回は……運が悪かったのだ……」
「あなた……」
たぶん、この男性が私の父なのだろう。この場で一番、偉いっぽいし。
生まれてきたことを不運認定されたけど……
でも、魔力の無い私を産んだことで女性が責められる空気にならなくて少し安心する。
「そうです。奥さまのせいではありません」
「そうです! 不運だっただけです!」
部屋にいる他の人たちも励ましの言葉をかけた。
(はいはーい、不運の塊ですよー)
赤ちゃんだから何もリアクションができないし、心の中だけで手を挙げておく。
しかし、このお葬式みたいな状況、どうしたらいいだろう。残念ながら、私に収拾をつけることは無理そうだった。
そんな中、執事風のお爺さんが、私の父らしき人に囁く。
「ご決断は早くされたほうがいいと思います……。当主として正しきご決断を……」
「ああ……」
なになに。
なんのお話ですか?
嫌な予感がして、二人の会話に意識がいく。
父は目を瞑って眉間に皺を作り、必死に何かを考えている。そんなに悩みすぎたら健康に悪いよ、と心配になるほどだった。
それから目を開き、苦渋の表情で私を指して告げた。
「この子は公爵家の娘にはふさわしくない存在だ。よって当主として廃嫡を宣言する」
それから執事に向かって言う。
「処分してくれ」
ほぁ~、なるほどなー。
って処分!?
ちょっと、処分ってなに!?
廃嫡あたりまでは当然かなぁと思って聞いていた私だけど、処分という物騒な言葉が出てきてぎょっとする。
あれですか? もしかして文字通りの処分ですか?
憧れのファンタジーな世界に転生したのに、三十分も経たずに終わり?
ま、まじかぁ……これ……まじかぁ……
せっかくの異世界転生。
ちょっといいことも期待してたのに。私ツエーとか、モテモテで困っちゃうとか、平穏に生きたいとか言いながら強敵に殴りかかるとか。
期待とのあまりの落差に呆然となる。
こんなのってないよー。絶対おかしいよ。
人生の不条理を知りました。
二回目にしてようやく思い知りました。
当主の命令を受けた執事が侍女を呼び、指示を出し始めて、部屋はどたばたし出す。
そんな中、私の母親らしき女性は侍女たちに支えられて部屋を出ていった。
そして十分後。
「では……いきます……」
医者の手には先端が真っ赤に熱せられた鉄の棒がありました。その先端部分は丸く平らになっていて、何か模様が刻まれている。あっつあつで、いい感じにお肉が焼けそうです。
(ええぇ……、わざわざそんな苦しそうなやり方してくれなくても……)
あんまりにもあんまりな方法に、私もさすがにへこんでくる。
もっと別な方法なかったの? もうちょっと楽に逝けるような……ねっ……ねっ……?
そんなことを思っていても、無情にもその鉄の棒は私の顔に近づいてくる。
あぁ……まじか、これは……死ぬぅ……、死ぬのかぁ……
どうも私の異世界生活は、ここで終わりらしい。
まだ……何もしてないのに……
知識チートで無双したり、料理作ってさすがと言われたり、いろいろやってみたかったなぁ……
まあ勉強も料理も苦手だから、普通に無理なんだけど……
そんなことを考えている私の額に、鉄の棒が容赦なく押しつけられた。
人生はノンストップ。
ぎゃあああああああああああああ!
いったぁあああ! あっつぅうういいいいいいいいい!
じゅわー。くるくる。
じんせいおわた。
* * *
なーんてことがあったけど、今も元気に生きてます!
もう三歳ぐらいになります。ようやく歩けるようになってきました。
私の額には、あれ以来、変な文字と模様が刻まれてます。異世界の文字で『失格』と書かれているそうです。ちなみに魔法によって刻まれてるから、一生消えないらしいです。
この烙印がある限り、シルフィール公爵家の跡継ぎには絶対になれないんだとか。才能のない子が血筋に頼って後継者争いを起こさないために、こうやって処分すると聞いた。
とはいっても、よっぽどのことがない限り、こんなことしないらしい。私はそのよっぽどな例に当てはまってしまったというわけ。
これが『処分』なのだそうだ。
もう、なんだ~。びっくりさせないでよ〜。
てっきり殺されるのかと思ったよ。
正直、赤ちゃんに焼き印もかなりエキセントリックだけど、文字通り処分されるよりはマシだよね。ということで、私の中では異世界の文化ってすごいねって感想と、生きてて良かったって気持ちで落ち着いている。
大切だよね、命。
さらに跡継ぎ失格ということで冷遇されてるかといえばそうではない。
いや、たぶん跡継ぎとして育てられる場合よりは、待遇は悪いんだろうけど、そこは大金持ちの公爵家ということで、三食きちんと美味しいごはんを食べさせてもらい、使用人に面倒を見てもらい、何不自由ない生活を送っている。
どうやら、十五歳になるまではこのまま面倒を見てもらえるらしい。十五歳を過ぎたら家を出ないといけないけど、それまではこの国の学校にも通わせてもらえるそうだ。
だから十五歳までには自力で生活する術を身につけなければならないけど、しばらくは悠々自適な生活が送れるのだ。
ということで私の異世界生活は、今のところぜんぜん問題ナッシングである。
家族関係のほうはどうかというと、当然かもしれないけどかなり希薄だ。
お父さま――名前はクロスウェルさまというんだけど――は一ヶ月に一度部屋に会いに来るぐらい。
大貴族の当主と跡継ぎ失格の子供だと、こんなもんよねという感じである。むしろ定期的に会いに来ることに、微かな愛情を感じてしまっている。
お母さまのほうは心労がたたり、体調を崩して、遠方で静養中だ。
私たちが暮らす国ウィルゼルドには、最強の魔法使いたちと呼ばれる四大公爵家が存在する。その中でも『王家の盾』と別名で呼ばれるシルフィール公爵家に嫁いできて数年、やっと生まれた待望の子供が魔力ほぼゼロの私である。
申し訳なくなってきましたね……。すみません……
ということで、弱ってるお母さまに、魔力ゼロの子供は劇物すぎるので、あれ以来まったく会ってません。それでいいと思います。早く元気になってください。
ちなみに個人的な話になってしまうけど、どうも成長が遅い気がする。
子供って二歳になれば立って歩けることが多いらしいけれど、私の場合、三歳になってやっとできるようになった。
しかもまだ、うまく歩けない。足ががくがくする。
他の子に比べると、成長がかなり遅いんじゃないだろうか……
あ、そういえば目が見えないって言われてたけど、本当に見えませんでした。
そもそもこの歳になっても、目が開かないという……
じゃあ、あのときも今もどうやって周囲を見回していたかというと、心眼〈マンティア〉というスキルらしい。
微小な魔力を周囲に放って、その力で景色を認識する能力なんだとか。かなりレアなスキルらしく、魔法の検査でも気づかれなかったけど、レアだからといって別にすごい能力ってわけでもない。
だから周囲の評価も相変わらずだ。
ちなみに私の一般人の百分の一程度の魔力は全部それに使われてるらしい。
目が開かないせいで、周囲からは糸目と呼ばれるようになり、それがいつの間にか名前にもなってしまった。この世界では生まれてすぐに名前をつけたりはしないようだ。
近況報告としてはこれぐらいだろうか。
そういえば転生したときに、神さまに会って何か力をもらった気がするんだよね。
でも、なぜだろう。それについてぜんぜん思い出せない。
思い出そうとすると、頭がズキズキする。
これは何かこの世界に関わる重大な秘密が隠されてるのでは!?
……無いな。
まあ、話が逸れたけど、力は無くとも、それなりに異世界で楽しく暮らしてますってことで!
第二章 跡継ぎ候補の子供たち
あれからまた一年経って、四歳になりました。
あっ、私にも個室が与えられて、そこで暮らしています。
広さは1DKぐらい! 超ひろい!
その部屋で運ばれてきた美味しいごはんを食べて、床でごろごろしていたら、侍女さんが部屋にやってきた。
「エトワさま、クロスウェルさまがお呼びです」
その言葉に珍しいなと思う。
私がお父さまに呼び出されることはめったにない。月イチで会うときに、一緒に食事を取らされるだけだ。
なので呼び出される理由に、まったく想像がつかない。
侍女さんに手を引かれ、お父さまがいる部屋まで廊下をぬるっと歩く。
シルフィール公爵家の本邸は、お城みたいな大きさで、こうして父親に会いに行くにもかなりの距離を歩かなければならない。
まあ、これが嫡子だったら、近場の部屋が与えられたのだろうけど。
「ここでございます」
侍女さんに案内されたのは、私の部屋の扉よりかなり大きな扉の前。
扉を開けてもらって中に入ると、そこには見たことのない五人の子供たちがいた。
私と同じ年ごろの男の子四人に、女の子一人。
それぞれ容姿や雰囲気は違うけれど、地球生まれだったら全員キッズモデルをやってそうなほど美形である。
見るからに利発で、おまけに育ちの良さそうな雰囲気がある。
子供たち五人はソファーに座り、その反対側に父が、そして後ろには執事が控えている。
私がぼけーっと突っ立っていると。
「来たか、糸目。そこに座っていなさい」
父に言われ、ちょっと離れたところに置いてあった椅子に座る。
五人の子供たちは行儀よく、びしっとした姿勢でソファーに座っていた。なんかもう私とは育ちが違う感じだ。
この子たちいったい誰だろう。
当然、私の頭にはそんな疑問が浮かぶ。
「シルウェストレ五侯の子息である君たちに今日集まってもらったのは、以前話した通りの事情だ」
シルウェストレ五侯と聞いて、私はああっと思い出す。
このシルフィール公爵家は国内最高位の貴族だけあって、たくさんの分家をもつ。
その中でも家格が高く有力で、本家とかなり近い扱いなのが、シルウェストレ五侯と呼ばれる五つの侯爵家である。
代々、本家の当主とその跡継ぎを守る護衛役という役目を引き継ぎ、最悪の事態には養子としてシルフィール家の跡継ぎになったりすることもあるらしい。定期的に婚姻が交わされていて、血縁も非常に近くなっている。
「この家には後継者がいない。ダリアはもう子供を産む自信がないそうだ……。そこで君たちには、この家の跡継ぎ候補になってほしいと思っている」
あ、最悪の事態って私ですよね。
どうやら私が生まれたことが、お母さまのメンタルをぶち折ってしまったらしい。国でも最強と言われる魔法使いの一人であるお父さまとの間に、魔力ほぼゼロの子供が生まれてきたのである。自分に問題がないと思わないわけがない。さもありなん。
『由緒正しい公爵家に跡継ぎがいない問題』発生である。
そこでお父さまはシルウェストレの子供たちを呼んで、跡継ぎ候補にすることにしたらしい。
ああ、申し訳ない……
「君たちの能力を調べさせてもらった。素晴らしい魔力と魔法の才能だ。誰もが公爵家の当主としてふさわしい素養をもっている。できることなら君たちのうちの誰かに、このシルフィール家の跡継ぎになってほしい」
「我が家にとって大変名誉な話。感謝の言葉しかありません」
「シルフィール公爵家の跡継ぎという大任。僕のような者がふさわしいかはわかりませんが、精一杯の努力をさせていただきます」
「身に余る光栄です。私も精一杯の努力をすることを約束させていただきます」
なにこれ、この子たち本当に四歳ですか?
私と同い年なのに、大人顔負けのはきはきとした口調と、優雅でびしっとした所作で、お父さまの言葉に答えていく。
気のせいだろうか、彼らの周囲にきらきらと輝くオーラみたいなのが見える。
なんかもう自分とは別の生物な気がしてきた。
魔法の才能が抜群な上に、利発で聡明。おまけに容姿も端麗。
確かにこの子たちなら、公爵家の跡継ぎ候補にもふさわしいだろう。
「ただ誰を跡継ぎにすべきかという話なのだが、現状、君たちの力は非常に拮抗している。ここで安易に誰かを選べば、それ以外の家への誠意を欠くことになってしまう」
シルフィール公爵家とシルウェストレ五侯との関係はとても深いらしい。
誰か適当に選ぶなどということはできないのだろう。家同士の関係まで考えると。
「そこで君たちには今日からこの家で暮らしてもらい、十五歳になるまでの間に試験を受けてもらう。その中で、もっともよく成長し、忠実に役目を果たせた者を、この公爵家の跡継ぎとして選ばせてもらいたい」
「試験とはなんでしょうか?」
子供たちがお父さまにたずねる。
「君たちは本来シルフィール家の次期当主を守る護衛役という役目につくはずだった。次期当主を守るための魔法の力、人とのコミュニケーション能力、そして貴族の一員として大切な他家を尊ぶ心、これらすべてが必要な仕事だ。だからその役目をどれだけ立派に務められるかを君たちへの試験としたい。君たちにはシルウェストレ五侯の子息として護衛役を務めてもらいたいんだ」
その言葉に子供たちは戸惑った顔をする。
「し、しかし、守るべき跡継ぎの方がおられません」
そう思うのも当たり前だ。
肝心の跡継ぎがいないから、彼らがその候補にひっぱり出されてるのだ。なのに、跡継ぎの護衛役をやれっていうのは無理な話だ。
そんな話を蚊帳の外から聞いていた私に、お父さまの目がようやく向く。
え、私っすか……? 他ならぬお父さまから跡継ぎ失格の判定を下された身っすよ。
「次期当主の代わりは、このエトワを使う」
まじっすか……
跡継ぎ失格の人間を守るってかなり意味ない気がする。ていうか、守る意味あるの? 襲ってくる敵とかいなくない?
私の疑問は当然のことだったらしい。
子供たちも困った顔をした。
「しかし、エトワさまは……」
言葉を濁す少年。
うん、気持ちはわかる……。言いたいこともわかる。
それにお父さまが頷く。
「その通りだ。残念ながら、守る価値はない」
いや、そこまではっきり断言されると哀しいです。
そう思っていたら執事が近づいてきて、私の首に何かをかけた。
緑色の宝石がついたネックレスだ。澄んだ南国の海のような色をしていて、不思議な文様が刻まれている。
なんじゃこりゃ。
「これは我がシルフィール家の家宝の一つ。風の大精霊石だ」
うん、やばいよ。明らかにお高いというか、貴重すぎて値段さえつけられない雰囲気がある代物が出てきたよ。
これ失くしたら、家どころか国レベルでやばくなるやつだよ、たぶん。
やばい、やばい。そんなもの、私の首にかけんでくれ。
しかし、私の意思は微塵もその場に反映されないらしい。淡々と話は進んでいく。
「君たちには十五歳になるまで、この石がかけられたこの子を守ってほしい」
なるほど、価値がない分は、家宝で埋め合わせってことね。って、なんて無茶をするんだ……このおっさん……。私の父親だけど……
「わかりました! 何があろうとシルフィール家の家宝、大精霊石を守り抜いてみせます!」
「シルフィール家の宝、絶対悪党には渡しません!」
「アリエル家の人間として、クロスウェルさまの期待に必ず応えてみせます」
うん、私おまけだよね。完全におまけ……
大精霊石がメイン……
拒否権はないっぽい。
ちくしょー、わかったよ~。大人しくぶらさげておくよー。
この騒動の原因は私にもあるから、大人しくこの状況を受け入れることにする。
そもそも抵抗したところで、どうにかなったとは思えないけど。
最後に、今まで私と目も合わさなかったお父さまが、ちらっと一度だけ私の目を見た。表面上はいつも通り何もない感じの表情だったけど……なんとなく伝わってきてしまう。
なんだよー、そんな顔すんなよぉ……
大貴族の当主ともなると大変だなぁ……
どうやらこの件はお父さまとしても本意ではないようだ。
貴族の当主っていったら絶大な権力をもっていてやりたい放題と思われがちだけど、前当主や親戚たちの意向を汲まなきゃいけなかったり、いろいろ大変らしい。
今回の件も、そういうところからの圧力があったのだろう。
私は心の中でため息をついて、この状況を完全に受け入れる。
そして話はまとまり、お父さまと執事は去って、部屋には子供だけが残された。
なんだか気まずい沈黙が私たちを包み込む。
そんな中で男の子の一人が、いきなりソファーに体を投げ出し、めんどくさそうな声で言った。
「あーだりぃ。なんでこんな弱そうなわけわかんないヤツの護衛をしなきゃなんないんだよ」
あれ? この子、お父さまといたときとぜんぜん態度が違いません……?
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