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 お姉さんと呼ばれるのは断られてしまったが、ご実家にはお邪魔することができた。
 応接間に通されると、

「ようこそ、いらっしゃいました、エトワさま。僕がスカーレット家当主を務めるコーラル・スカーレットです」

 メガネをかけた優しそうな大人の人がそういって微笑んだ。リンクスくんのお父さんだけど、なんていうかとても若々しい人だった。
 私のお父さまもかっこよくて若々しいけど、それより更に若いという感じで下手したら高校生ぐらいに見えるかもしれない。

「一週間お世話になります」

 私が深々と頭を下げると、コーラルさんは苦笑いした。

「そんなにかしこまらないでください。自分の家だと思って過ごしてください」
「ありがとうございます」

 そんなある種のお決まりのやりとりをしたあと、私はずっと背後で見守ってくれていたリンクスくんの方を振り向き、ニヤリと笑みを浮かべた。

「な、なんだよ」
「いやあ、リンクスくんとお父さんってあんまりにてないんだなって」
「リンクスは母親似なんですよ」

 リンクスくんのお母さんは、あるお方の付き人としてずっと旅をしているらしい。
 今回の帰省でも帰ってきてないんだと、この部屋にくるまでの間にリンクスくんたちから聞いていた。

 リンクスくんのお母さん、会ってみたかったなあ。

「へぇ! あの……リンクスくんのお母さんって、もしかしてすごくやんちゃ……元気な方なんですか?」
「ええ、やんちゃな方でしたよ。初めて会ったときは、山賊の女頭領にでも絡まれたのかと思いました」
「わあ、そうなんですね。リンクスくんも初めて会った頃は……」

 私はそこで言葉を止めて、リンクスくんの方を見てしまった。
 リンクスくんは居心地悪そうにみじろぎをする。

「な、何が言いたいんだよ……」

 私はふふふと微笑ましい気持ちになる。

「いやあ、昔はね、ほら」
「いつまで言われるんだよ、それ……五歳ぐらいまでの話だろ」

 そうそう、リンクスくんがガキ大将を卒業してもう五年ぐらい経つのだ。上級生になった今では、後輩の面倒見もいいようで、アイドル的な人気に収まらない兄貴的な良い評判が聞こえてくる。

「立派になりすぎて、姉さんちょっと寂しいよ。たまには昔みたいにやんちゃしてもいいんだよ?」
「何度も言うけど、お姉さんじゃないけどな……」

 仲良くなれたのに、お姉さんと言うことはしっかり否定される。今日はこれで三度目だ。
 やれやれ、少しぐらい認めてくれてもいいのに。

「そうだそうだ! リンクス兄さまと家族なのは僕だけだ!」

 同じく部屋にいる小リンクスくんもリンクスくん側に加勢してきた。
 その言い方だと、コーラルさんが家族から外れてしまうのだけど、そこは突っ込むの野暮。

「わかりました。リンクスくんにも小リンクスくんにもお姉さんと呼んでもらえるよう、一層精進します」
「何もわかってないな……」

 リンクスくんはため息を吐いた。
 それから眉を顰めて。

「あと小リンクスって呼ぶのもやめてやれよ。フェーリスって名前がちゃんとあるんだから」
「あ、ごめんね。でも、小リンクスくんって呼ぶと、なんか嬉しそうだったから」

 私がそう言うと、フェーリスくんは血色の良い満足げな表情で、小さな鼻からふむんっと息を漏らし。

「満更でもない」

 とおっしゃった。



※※※あとがき※※※

 更新は量よりテンポ、量よりテンポ、量よりテンポ
 何としてでもテンポ上げてくぞ

※※※追記※※※
231話でリンクスくんの父の名前をソリスと設定してましたが、後出しのコーラルに統一することにしました。
キャラクターの人となりとかはある程度は決められるんですけど、名前決めるのがすごく苦手で登場してから決めてるので、名前を忘れたり重複したりしてしまうミスが多いです。
発見した際はご連絡くださると助かります。
ただレニーレさんについてはいろんな方の指示を受けて修正してすら間違うので、ごめんなさい私の手にはもう追えないです。
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