125 / 140
連載
249.
しおりを挟む
お姉さんと呼ばれるのは断られてしまったが、ご実家にはお邪魔することができた。
応接間に通されると、
「ようこそ、いらっしゃいました、エトワさま。僕がスカーレット家当主を務めるコーラル・スカーレットです」
メガネをかけた優しそうな大人の人がそういって微笑んだ。リンクスくんのお父さんだけど、なんていうかとても若々しい人だった。
私のお父さまもかっこよくて若々しいけど、それより更に若いという感じで下手したら高校生ぐらいに見えるかもしれない。
「一週間お世話になります」
私が深々と頭を下げると、コーラルさんは苦笑いした。
「そんなにかしこまらないでください。自分の家だと思って過ごしてください」
「ありがとうございます」
そんなある種のお決まりのやりとりをしたあと、私はずっと背後で見守ってくれていたリンクスくんの方を振り向き、ニヤリと笑みを浮かべた。
「な、なんだよ」
「いやあ、リンクスくんとお父さんってあんまりにてないんだなって」
「リンクスは母親似なんですよ」
リンクスくんのお母さんは、あるお方の付き人としてずっと旅をしているらしい。
今回の帰省でも帰ってきてないんだと、この部屋にくるまでの間にリンクスくんたちから聞いていた。
リンクスくんのお母さん、会ってみたかったなあ。
「へぇ! あの……リンクスくんのお母さんって、もしかしてすごくやんちゃ……元気な方なんですか?」
「ええ、やんちゃな方でしたよ。初めて会ったときは、山賊の女頭領にでも絡まれたのかと思いました」
「わあ、そうなんですね。リンクスくんも初めて会った頃は……」
私はそこで言葉を止めて、リンクスくんの方を見てしまった。
リンクスくんは居心地悪そうにみじろぎをする。
「な、何が言いたいんだよ……」
私はふふふと微笑ましい気持ちになる。
「いやあ、昔はね、ほら」
「いつまで言われるんだよ、それ……五歳ぐらいまでの話だろ」
そうそう、リンクスくんがガキ大将を卒業してもう五年ぐらい経つのだ。上級生になった今では、後輩の面倒見もいいようで、アイドル的な人気に収まらない兄貴的な良い評判が聞こえてくる。
「立派になりすぎて、姉さんちょっと寂しいよ。たまには昔みたいにやんちゃしてもいいんだよ?」
「何度も言うけど、お姉さんじゃないけどな……」
仲良くなれたのに、お姉さんと言うことはしっかり否定される。今日はこれで三度目だ。
やれやれ、少しぐらい認めてくれてもいいのに。
「そうだそうだ! リンクス兄さまと家族なのは僕だけだ!」
同じく部屋にいる小リンクスくんもリンクスくん側に加勢してきた。
その言い方だと、コーラルさんが家族から外れてしまうのだけど、そこは突っ込むの野暮。
「わかりました。リンクスくんにも小リンクスくんにもお姉さんと呼んでもらえるよう、一層精進します」
「何もわかってないな……」
リンクスくんはため息を吐いた。
それから眉を顰めて。
「あと小リンクスって呼ぶのもやめてやれよ。フェーリスって名前がちゃんとあるんだから」
「あ、ごめんね。でも、小リンクスくんって呼ぶと、なんか嬉しそうだったから」
私がそう言うと、フェーリスくんは血色の良い満足げな表情で、小さな鼻からふむんっと息を漏らし。
「満更でもない」
とおっしゃった。
※※※あとがき※※※
更新は量よりテンポ、量よりテンポ、量よりテンポ
何としてでもテンポ上げてくぞ
※※※追記※※※
231話でリンクスくんの父の名前をソリスと設定してましたが、後出しのコーラルに統一することにしました。
キャラクターの人となりとかはある程度は決められるんですけど、名前決めるのがすごく苦手で登場してから決めてるので、名前を忘れたり重複したりしてしまうミスが多いです。
発見した際はご連絡くださると助かります。
ただレニーレさんについてはいろんな方の指示を受けて修正してすら間違うので、ごめんなさい私の手にはもう追えないです。
応接間に通されると、
「ようこそ、いらっしゃいました、エトワさま。僕がスカーレット家当主を務めるコーラル・スカーレットです」
メガネをかけた優しそうな大人の人がそういって微笑んだ。リンクスくんのお父さんだけど、なんていうかとても若々しい人だった。
私のお父さまもかっこよくて若々しいけど、それより更に若いという感じで下手したら高校生ぐらいに見えるかもしれない。
「一週間お世話になります」
私が深々と頭を下げると、コーラルさんは苦笑いした。
「そんなにかしこまらないでください。自分の家だと思って過ごしてください」
「ありがとうございます」
そんなある種のお決まりのやりとりをしたあと、私はずっと背後で見守ってくれていたリンクスくんの方を振り向き、ニヤリと笑みを浮かべた。
「な、なんだよ」
「いやあ、リンクスくんとお父さんってあんまりにてないんだなって」
「リンクスは母親似なんですよ」
リンクスくんのお母さんは、あるお方の付き人としてずっと旅をしているらしい。
今回の帰省でも帰ってきてないんだと、この部屋にくるまでの間にリンクスくんたちから聞いていた。
リンクスくんのお母さん、会ってみたかったなあ。
「へぇ! あの……リンクスくんのお母さんって、もしかしてすごくやんちゃ……元気な方なんですか?」
「ええ、やんちゃな方でしたよ。初めて会ったときは、山賊の女頭領にでも絡まれたのかと思いました」
「わあ、そうなんですね。リンクスくんも初めて会った頃は……」
私はそこで言葉を止めて、リンクスくんの方を見てしまった。
リンクスくんは居心地悪そうにみじろぎをする。
「な、何が言いたいんだよ……」
私はふふふと微笑ましい気持ちになる。
「いやあ、昔はね、ほら」
「いつまで言われるんだよ、それ……五歳ぐらいまでの話だろ」
そうそう、リンクスくんがガキ大将を卒業してもう五年ぐらい経つのだ。上級生になった今では、後輩の面倒見もいいようで、アイドル的な人気に収まらない兄貴的な良い評判が聞こえてくる。
「立派になりすぎて、姉さんちょっと寂しいよ。たまには昔みたいにやんちゃしてもいいんだよ?」
「何度も言うけど、お姉さんじゃないけどな……」
仲良くなれたのに、お姉さんと言うことはしっかり否定される。今日はこれで三度目だ。
やれやれ、少しぐらい認めてくれてもいいのに。
「そうだそうだ! リンクス兄さまと家族なのは僕だけだ!」
同じく部屋にいる小リンクスくんもリンクスくん側に加勢してきた。
その言い方だと、コーラルさんが家族から外れてしまうのだけど、そこは突っ込むの野暮。
「わかりました。リンクスくんにも小リンクスくんにもお姉さんと呼んでもらえるよう、一層精進します」
「何もわかってないな……」
リンクスくんはため息を吐いた。
それから眉を顰めて。
「あと小リンクスって呼ぶのもやめてやれよ。フェーリスって名前がちゃんとあるんだから」
「あ、ごめんね。でも、小リンクスくんって呼ぶと、なんか嬉しそうだったから」
私がそう言うと、フェーリスくんは血色の良い満足げな表情で、小さな鼻からふむんっと息を漏らし。
「満更でもない」
とおっしゃった。
※※※あとがき※※※
更新は量よりテンポ、量よりテンポ、量よりテンポ
何としてでもテンポ上げてくぞ
※※※追記※※※
231話でリンクスくんの父の名前をソリスと設定してましたが、後出しのコーラルに統一することにしました。
キャラクターの人となりとかはある程度は決められるんですけど、名前決めるのがすごく苦手で登場してから決めてるので、名前を忘れたり重複したりしてしまうミスが多いです。
発見した際はご連絡くださると助かります。
ただレニーレさんについてはいろんな方の指示を受けて修正してすら間違うので、ごめんなさい私の手にはもう追えないです。
82
お気に入りに追加
15,283
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。