上 下
106 / 140
連載

232.それゆけ冒険者たち

しおりを挟む

リリーシィちゃん……ポムチョム冒険者学校でエトワと仲良しの女の子。明るく元気!
エルフィス……エトワが3年生のころにポムチョム冒険者学校に転校して来た剣術の名家とされる商家の女の子。ツンツンしてる。登場話数は163話から。


 私さんの行方不明事件から私さんが帰ってきて、はや三週間!
 いやー戻ってきてくれて良かったですね。私も私さんのことは心配してましたよ。はい、いろんな方にご心配をおかけすることになってしまいましたね。私さん何かコメントはありますでしょうか。はい、おっほん、こうして戻ってきてこられたのもご心配くださったみなさんのおかげだと思います。ありがとうございます。ありがとうございます。

 帰ってきてからも、お母様の社交界復帰パーティーに招待されたり、それが終わると私たちが暮らしているルヴェンドのお屋敷にお母様がやってきたり、『まだやり終えてない公爵夫人のお仕事があるでしょう』とお付きの侍女の人に連れていかれたり、いろいろありました。

 そんな私なのですが近頃はまあまあ平和に過ごしております。
 今日はお休みの日なので、ソフィアちゃんと観劇に行ってまいりました。

「エトワさまは最近、絵本を読まれてるんですか?」

 そんな観劇の帰り道、私は書店によって本を買っていた。
 この世界の本は、一応印刷技術があるせいか、そんなに高くはない……安くもないけど。
 元の世界でいうと、だいたいゲーム一本分ぐらいの値段で買えるものが多い。絵がつく本になると、もうちょっと高いかも。

 私が買った本も、ページ数は少ないけど、色の付いた絵が入ってるのでそれなりのお値段はしてしまった。それがお買い物用の手提げかばんに五冊ぐらい入っている。

「うん~、なんだか読みたくなっちゃってね~」

 あの行方不明事件以来、不思議と絵本に目が行くようになってしまったのだ。
 なんとなく気になって手にとって読むようになり、読んでみるとなかなか面白くて、ちょっとハマってしまった。劇のチケット代に絵本代と、今月のお小遣いはすっかりピンチだ。

「私、知らない本が多くてねぇ。読んでみると楽しいよね」
「はい! 私も楽しくて、2歳のころにたくさん集めて読んでしまいました!」

 2歳……それは早いよ……。
 しかも、もしかして自分で読んでたの? お母さんに読んでもらうんじゃなくて。

 私はまたソフィアちゃんの天才児っぷりを知ってしまった。
 出会ったころが4歳で、その頃にはきはきしゃべってたんだから、不思議ではないけれど……。やっぱりこの子達って頭の出来が私たちとは違うんだなぁ……。


***


「今日はみなさんに冒険者免許を取ってもらおうと思います」

 ポムチョム小学校の授業、授業開始早々のウィークマン先生の言葉に子供たちは目を輝かせた。

「わー! 冒険者免許ー!!」
「ついに俺たちも冒険者かー!」

 そんな中、エルフィスちゃん——ポムチョム小学校に転校してきて一年、だいぶクラスにも馴染んできた——は大人ぶった仕草で腕を組んで言う。

「ふん、みんな子供ね。冒険者免許ぐらいで騒いじゃって」

 そう言いながらも、椅子に座る肩から上が細かく左右に揺れていた。嬉しさを隠しきれてない。

 私はというと、ちょっと心配になってた。だって、私たちまだ小学四年生だ。冒険者として活動をはじめるのは、ちょっと早いんじゃないかな。
 そう思ってたら、ウィークマン先生と目が合った。

「大丈夫ですよ、エトワさん。受ける依頼の管理は、ギルド側でやってくれますから。冒険者学校を卒業するまでは先生の許可がないと、免許をもってても依頼は受けさせてもらえません。今回は実際に冒険者の仕事を体験してもらう感じです。もちろん、あちらで子供たちの実力に合った安全なものを選んで頂いてます」

 考えを読まれてた……。
 確かにいつまでも授業だけでは、学べる範囲にも限界があるよね。この世界の子供の独り立ちは、私がいる世界よりも早い。このぐらいの年齢でも、少しずつ実践を学んでいくべきなのかもしれない。
 ……やっぱりまだちょっと早いんじゃないかと思ってるけど。


※短めですが。
今年一年ありがとうございました。良いお年を。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。