すまん、いちばん最初の使い魔のわしがいらない子ってマジ?

小択出新都

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 まずわしらがやってきたのは、冒険者ギルドの支部じゃった。

 冒険者になるには、まずここで登録をすまさなければならない。
 街の中にある木製の三階建ての大きな建物に入ると、メイスを腰につけた大柄な男や、ローブで全身を覆ってるせいで顔の見えない男、顔に傷のある強そうな剣士など、さまざまな冒険者たちがいた。
 案の定、男所帯じゃった。
 女性もいないことはないが、男に比べると数は少ない。

 わしは受付を見て、女性だと確認しほっと一息ついた。
 メガネをかけた理知的そうな女性じゃった。

「ほれ、ぬしら登録をすませてこい。わしは最後でよいから」

 そういってまずは若い者たちから促すと、まず受付にむかったのはクララだった。

「受付のお姉さん、冒険者登録したいんですけど!」
「はい、エインルーンの生徒さんですね。いいですよ。
 そこのステータス測定用の魔力結晶にタッチしてください」

 そういうと受付のお姉さんは、赤色のクリスタルが中央についた円盤みたいなものをクララにさしだした。

 それにクララがタッチし、しばらくして赤色のクリスタルが青色に変わると、受付のお姉さんが、「はい、もういいですよ」っと言った。
 それから名前や年齢、出身地などを聞かれたあと。

「はい、これがクラリネッタさんの冒険者カードです」

 と、クララがカードを渡された。

 ほう、今はあんなものがあるのか。便利じゃのう。
 わしの見た資料だと、いちいち体力やすばやさを測定せねばならなかったらしい。

「なによ、lv3ってぜんぜん低いじゃない……」

 クララが自分のカードを見て、不満そうな声を漏らす。

「どれどれ?」
「きゃっ、いきなりみるな!えっち!」

 わしが興味本位でカードをのぞきこむと、クララがいやがった。

(むう、えっちなことなのか……?)

 疑問に思って首をかしげると、クララがちょっと何かいじったあと、カードをさしだしてきた。

「ほら、見なさいよ」
「おおー、これが、冒険者カード」

 冒険者協会に入ったときに配布されるもので、本人の顔写真、レベル、各種ステータスが記載されている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:クラリネッタ=クリッサ
冒険者Lv:3

<ステータス>
体力:D
魔力:F
力:E
耐性:E
器用さ:B
すばやさ:E
知性:C

<スキル>
なし

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ほほー。ってぬし……、魔法学校の生徒なのに、魔力がいちばん低いステータスって……」
「うるさいわね!」

 率直な感想をのべたらクララに怒られた。

「次はわたしがいきますね」

 次はミーフィアの番じゃった。
 受付のお姉さんに似たようなやり取りをしたあと、冒険者カードを持ってくる。

「あ、ちょっと待ってくださいね」

 ミーフィアは何故か赤面して、ちょっとカードをいじったあと、わしに見せてきた。
 何なんじゃろう。

 わしは首をかしげたが、ミーフィアの冒険者カードを見せてもらう。クララものぞきこんできた。

「れ、レベル5!?」
「はい……、そうみたいです……」

 ちょっと赤面したミーフィアの冒険者カードには、彼女の冒険者としてのステータスが記載されていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:ミーフィア=エレセス
冒険者lv:5
<ステータス>
体力:D
魔力:A
力:E
耐性:E
器用さ:E
すばやさ:E
知性:A

<スキル>
魔法威力強化lv2

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふむぅ、すごいのう」

 体力面の評価は低いが、魔法面の能力については完全にトップクラスである。
 魔法威力強化は、通常より魔法を高威力でうてるようになるスキルじゃ。
 魔法がうまくつかえないときに魔力をいっぱい注ぎこむ癖があったから、いつの間にか身に付いたのじゃろう。

 冒険者Lv5というのはいっけん低く見えるが、実のところかなり高い数字と調べて知っておった。
 冒険者レベルはあげるための数値がかなり厳しく設定されており、Lv10を越えることはほとんどないといっていいらしい。
 Lv同士での差の開きも大きいのが特徴じゃった。

 目安的な話を言うと、Lv1で一般人、Lv2でちょっと鍛えた一般人、Lv3でようやく駆け出し冒険者といった感じになる。
 Lv4がようやく一人前の冒険者で、Lv5は中級クラスの冒険者ということになってくる。

 魔法学校の生徒だとほとんどがLv3かLv4で、Lv5はめったにいないといっていい。

 数ヶ月前まではおちこぼれだったのに、もうすっかり一級の魔法使いということじゃった。
 才能だけではなく、努力もきちんつづけねばこうはならない。

「ちゃんと勉強をつづけておったのじゃな。えらいぞ」
「そんな、クロトさん」

 褒めてやると赤面して照れた。
 本当にいい子じゃ。
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