すまん、いちばん最初の使い魔のわしがいらない子ってマジ?

小択出新都

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 そういうわけでわしとソーラは、ペルージアの街にやってきた。
 ミーフィアやクララとはこの町で合流することにしていた。

 ペルージアは迷宮ダンジョンをもつ、いわゆる迷宮都市じゃ。

 この世界にはおおまかにわけてふたつの冒険者が存在している。

 この世界に住むさまざまな人々の頼みごとや悩みごとを、依頼という形で解決してその報酬で生活する一般冒険者。
 それから迷宮ダンジョンが存在する都市に住みつき、ダンジョンにもぐってマジックアイテムやモンスターの素材などを持ち帰り、それを売って生活の糧にする迷宮冒険者。

 ソーラのようなが召喚師がやってることも、根本的には一般冒険者と同じなのだが、召喚師協会や国から直接依頼を引き受けて、冒険者ギルドに所属してないものは冒険者とは呼ばれなかった。

 モンスターが跋扈している世界では、誰かに問題を解決してほしいという人は多い。
 依頼を受託しているのは冒険者ギルドだけでなく、召喚師協会や魔法使い組合などいろいろとある。
 そういう元請け組織のどこに所属しているかで、だいたいなんと呼ばれるかが決まる。

 冒険者ギルドは所属するのに必要な資格がなく、試験もなく、誰でもなれる分、あまり良い依頼や重要な依頼はまわってこない
 それでも最大手ということもあり、たくさんの人間が集まってくるし、頭角を現し有名になった冒険者には、貴族や王族などが重要な依頼をしたりもする。

 もうひとつの、迷宮冒険者じゃが。

 まず、普通のダンジョンと迷宮ダンジョンの違いを説明しなければならない。

 ダンジョンとは古い坑道や天然の洞窟、古代の遺跡などがモンスターの巣窟となった場所である。
 大抵、そこにはもともとあった貴重なアイテムやモンスターたちが運び込んだ財宝などがあり、それを目当てで冒険者が潜入したりする。
 こういうダンジョンは、一度誰かが攻略してしまうともう終わりだった。
 当然のことながら、宝は復活しないし、モンスターもしばらくは住み着かない。

 迷宮ダンジョンはそういう一般的なダンジョンの数百倍の広さを持っている。
 中規模と呼ばれるペルージアの迷宮ダンジョンも、一般的なダンジョンの400倍程度の広さがあると予想されている。

 そして大きな特徴が、ダンジョン内のモンスターやアイテムが定期的に復活するということだ。
 これには諸説あるが、魔界と裂け目でつながってるという説が有力じゃった。

 魔界とこの世界がダンジョンの最深部にある裂け目でつながっており、そこからモンスターやマジックアイテムなどがあふれ出してるんだそうじゃ。
 最深部にはとてつもなく強いモンスターがいて、それを倒すと裂け目も閉じるとうわさされてるが、そんなことやりたがる冒険者はまずいないし、できる冒険者もほとんどいないらしい。

 そんなわけで迷宮ダンジョンが見つかると、そこから産出されるマジックアイテム目当てで冒険者が集まる。
 彼らは一般冒険者のように流浪のたびはせず、迷宮ダンジョンの近くにずっと滞在する。
 その性質は一般の冒険者をなんでも屋とすると、トレージャーハンターに近い。
 彼らはパーティーや、もっと大規模のクランを作り、ダンジョンを攻略しマジックアイテムを持ち帰る。
 それが迷宮冒険者だ。

 そんな迷宮冒険者たちが持ち帰るアイテムを目当てに商人たちが集まってくる。
 人が集まると、それを目的に飲食店や酒場が開かれていく。
 国も裂け目からモンスターがあふれでてきてはこまるので、それなりの支援をする。
 そうして迷宮ダンジョンがある場所は、迷宮都市ができあがっていくのである。

 以上が、迷宮都市、および迷宮冒険者の概要である。

 この世界に来たのは10年ほど前だし、子育てや家事にはあんまり関係ないから知らんかった……。
 なのでくる前にちょっと調べたのじゃ

 この都市のダンジョンについてはすでに100階層程度まで攻略されてるようじゃった。
 ちなみに1階層で普通のダンジョンひとつ分程度らしい。

 迷宮都市は独特の活気に満ちていた。
 ただちょっと治安が悪い感じもする。冒険者という名のあらくれものたちが集まるのだから、仕方ないことじゃが。
 はやく、ミーフィアたちと合流せねばなるまい。

 そう思いながら道を歩いていると、向こうに見慣れた少女の姿が見えた。

「おーい、ミーフィアー!」
「あ、クロトさん。許可がとれてよかったですね」

 わしらの姿をみて、ミーフィアがにっこりと微笑む。

「ミーフィア、あとで話が。ちょっと協力してほしいの……」
「あ、うん。だいたいわかったかも」

 友達と合流したソーラが、ミーフィアの袖をゆさゆさと揺らした
 うむ、仲良きことはいいことじゃ。

 そうしてペルージアで、ミーフィアとクララと合流した。

「ほ、本物だ……。本物のソーラさんだ……」

 クララがやたら静かだと思ったら、ソーラの顔をみて呆けた顔をしていた。
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