すまん、いちばん最初の使い魔のわしがいらない子ってマジ?

小択出新都

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わしとあるじと迷宮ダンジョン 4

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 そういうわけで、家に帰る前にひと散歩。
  わしが今日の散歩コースに選んだのは、学校の柵の下をくぐり外にでて、近くのカフェテリアの屋根にのぼり、そこから天井裏に侵入し、そのまま抜けていくコースじゃった。

  天井裏は、高い、狭い、暗い、ねこにとって心地よい要素がみっつも揃っている。ネコにとってはすばらしい場所じゃ。

  今日もせまい天井裏を歩いていると、天井に空いた穴から見える店内に、見慣れた女の子の姿を見つけた。

 (おや、ミーフィアではないか)

  ミーフィアは見たことの無い女の子となにか話していた。何をはなしてるんじゃろうか。

 「それであとの問題は、パーティーのメンバーののこりを見つけることね!」

 (パーティー?)

  聞き耳をたてたわしの耳に、聞きなれない単語が飛び込んでくる。

  それから新たな単語が飛び込んできた。「冒険者」と。

 (冒険者……!)

  わしはその単語に衝撃を受けた。

  冒険者!なんと甘美な響きか!

  この世界に転生してから、勇者になることばかり考えていたが、冒険者になるという手もあったのだ。
  たしかに英雄になって、悪を倒し、世界をすくって女の子にモテモテになる勇者には劣る。
  だが、自由気ままに冒険者暮らしをおくり、胸がおどるクエストをクリアして、ランクをどんどんあげて、ついには有名人になって女の子にモテモテに!
  冒険者も悪くないではないか!

  なぜ、思いつかなかったのだろう!
  生まれて1000年、勇者になることばかり考えておった。でも、このような魅力的な職業があったとは……!

  わしが冒険者になって活躍し、かわいい女の子に囲まれてハーレムを作っている自分を妄想していたときも、ミーフィアたちの話は続いていたようじゃった。 
  ふたりともなにか困り顔になっている。

  ふたたび話を聞いてみると、戦士がどうやら見つからないらしい。

  戦士!

  ご存知の通りわしの能力は、ぶっちゃけ戦士寄りのビルドに固まっていた。
  魔法は練習の成果あって技巧的にはなかなかのものじゃが、高位の魔法は使えないし、根本的な魔力量も少なめで、魔法使いとしては三流がいいところ。
  しかし、魔界生活で鍛えられた身体能力と剣の腕、そして魔剣十本を体に搭載した特異な体質は、そこらの戦士には負けない自信がある。
 ちなみに実はいくつか戦士系のスキルも持っている。あんまり使わんけどな……。

  使い魔というのは基本的に魔法型や特殊能力型が多い。
  戦士型の使い魔は、デュラハンやオーガなど種族数が極めて限られる。
  それ以外の使い魔はほとんどが魔法型で、クロネコも魔法寄り――というよりぶっちゃけどっちも弱いけど魔法のほうがまし――の使い魔じゃった。
  クロネコで戦士よりになってる使い魔は、たぶんわしぐらいじゃろう。
  そんなわけで使い魔ランキングでは魔法についての評価が主となっていて、戦士寄りの能力は種族ポイントというかたちで、種族ごとに一括してしか反映されない形になっていた。
  戦士としての評価が高い種族はそれなりじゃが、クロネコのわしの場合何も反映してくれない……。
  おまけに魔法能力がトップクラスのフェニックスやドラゴン、グレーターデーモンなどの幻獣、高位の悪魔たちは、肉弾戦能力もトップクラスという反則的な仕様により、戦士型使い魔というのは非常に空気な傾向になっていた。

  閑話休題。

  どうやら二人は戦士を探しているようじゃった。
  だが、ここでは条件に合う戦士を見つけるのは難しいらしい。

 「とにかくわたしのパーティーには絶対に戦士が必要なの!だって――」

  相手の少女が必死な顔をしてテーブルを叩く。

  彼女たちは戦士を探している。
  わしは冒険者になりたい。

  これほど条件が一致していることがあるだろうか。
  これはきっと運命なのだ!
  異世界転生して1014年。
  そのほとんどを引きこもり、ここ10年ぐらいは家政婦をしてました。
  ついにやってきたわしの異世界での活躍のターン!

 (この機会のがす術なし!)

  わしは急いで天井裏から飛び降りると、彼女たちの前に降りたった。

  そして老齢の戦士らしく、かっこよく彼女たちにアピールする。

 「わしなんてどうじゃ。わし、戦士じゃ……」

  自分を指差し、クールに決めて見せた。

 
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