すまん、いちばん最初の使い魔のわしがいらない子ってマジ?

小択出新都

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わしとあるじと迷宮ダンジョン 3

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 その日、一週間に及んだ謹慎が解けていたわしは、学園のなかでなんでも屋さんを開いていた。
 謹慎の最終日、ソーラも含め人化できる使い魔たちを順番にお姫さま抱っこさせられるという意味不明な儀式をさせられたうえで、機嫌をもどした使い魔たちとソーラたちになぜか「まあ特別に許す」といわれ、謹慎を解かれたのだった。
 年頃の娘たちが考えることはまったくわからん。

 甘えたいざかりなのじゃろうか?
 まあ全員人化してるときは軽いから、抱っこぐらいいつしてやっても構わんのじゃが。

 それはおいておいて、わしのなんでも屋が正式に開店じゃ。
 学園の人たちが通る道に、椅子とテーブルをならべて看板をだしていたんじゃが。

「わぁ、用務員のねこさんだぁ!」
「なんでも屋さんって?」
「文字通りの意味じゃ!困ったことがあったら、依頼すれば解決してやるぞ。ただし学園から遠いところでの依頼は無理じゃが」
「なんでもやってくれるんだぁ!」

 いや、確かにそうなんじゃが、ちょっとニュアンスが違わんか?
 わしはそう聞いた途端、目をきらきらと輝かせた女子生徒たちをみて、勘でそう思った。

「じゃあ、お手をしてください!」
「ふむっ、よかろう」

 断るのもなんなので、お手ぐらいはしてやる。

「ねこさん、あーん!」

 おいしそうなパンのかけらをなげてきた。
 おいしそうなのでぱくっとくちでキャッチしてやる。

「バク宙してください!バク宙!」
「ふっ、たやすいことじゃ」

 猫であるわしの運動神経を生徒たちにみせつけてやる。

 わぁー、ぱちぱちと拍手とともに、生徒たちがもっていた小銭やらお菓子を投げ込んでくれる。

 わしは拍手をくれる生徒たちに、サーカスのスターよろしく手を振った。
 うむ、これはおつかいですらなく、おひねりじゃな。

 また目的から一歩、遠ざかった気がするぞ。

「そういえばおぬしら授業はどうしたんじゃ?」

 気づいたんじゃが、いまは授業の時間で、生徒たちは本来、実技以外のものは校舎にはいっておるはずじゃった。
 そんな場所で、なんでも屋をひろげたわしもわしじゃが。

「今日から長期休暇ですよ?ねこさん知らなかったんですか?」
「おぉ、そうだったのか」

 そういえば、ソーラがもってきたおしらせプリントにも、そんなことが書いてあった気がする。
 歳をとるとわすれっぽくなっていかん。

「ふむ、それではソーラもはやく帰ってくるかものう。散歩でもしたら、家にもどるか」
「あ、もう終わっちゃうんだぁ」
「うむ、また開くから何かこまったことがあったら言いにくるが良い」
「はーい、さよならねこさーん」
「またねー、ねこさーん」

 生徒たちは素直に手をふってくれる。
 うむ、みんないい子たちばかりじゃ。

 あとはもう少しまともな依頼をもってきてくれればいいのじゃが。

 あ、おひねりにもらったにぼしうまい。

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