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わしと主(あるじ)とバトロワ 15
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ソーラの<身代わり人形>が壊れ、転送がはじまる。
「くっ……!?」
ソーラは慌てて自分にかかった転送魔法を中和し、その場にとどまった。
しかし、<身代わり人形>が壊れた事実は変わらない。
『ソ、ソーラさんの<身代わり人形>の破壊を確認しました。模擬戦の優勝者はミーフィアです!』
先生の放送が響いた。
あのとき、わしがミーフィアに囁いた言葉はこうじゃった。
「わしがソーラたちの攻撃を止める。その隙にわしの隠蔽魔法でぬしの姿を隠すから、攻撃魔法を唱えながらソーラの死角に移動して隠れていて欲しいのじゃ。そしてわしが合図をしたらソーラに攻撃をしてくれ」と。
あの六つの上位魔法がぶつかった瞬間、ソーラたちに視覚的な面にも感覚的な面にも大きな隙ができた。
大きな魔力がぶつかりあう閃光に視界をふさがれ、ぶつかりあった巨大な魔法が魔力の嵐とでもいうべきものを生み出した。
その間にわしらは、ふたつの呪文を唱えたのだ。
ひとつはわしが得意とする隠蔽魔法、もうひとつはミーフィアが得意とする下級の攻撃魔法。
魔力の嵐によるジャミングがかかった状態では、魔法全般の能力が飛躍的に高いソーラも3匹の使い魔たちも、この二つの小さな魔法の発動には気付かなかった。
その隙にわしはミーフィアの幻影を作り出すとともに、ミーフィアの姿を隠蔽させた。そしてミーフィアは攻撃魔法を唱えた状態のまま、ソーラたちの後ろにまわりこんだのだった。
勝負に勝ったとおもったソーラは、普段は自然と展開している結界さえ解き、無防備な状態にあった。
予測不可能な場所から放たれたソーラの魔法は、いちばん無防備な状態のソーラに当たり、致命的な一撃となったのである。
それは<身代わり人形>の破壊という結果が証明している。
呆然とし口をぱくぱくとさせているソーラにわしは告げた。
「さあ終わりじゃ終わり。ぬしらも危ないことはもうやめんか。まったく同級生に幻獣クラスの使い魔を3匹もけしかけるとは、どうかしておるぞ」
「まだっ――」
おそらく「まだっす」と言い募ろうとしたムー子を、わしはじろりと睨みつけた。
「言ったじゃろう。模擬戦は終わったと。
これ以上続けると言うのなら――
――さすがに遊びではすまさぬぞ?」
わしをしばっていた絶対呪縛がぶつりと音を立てて吹き飛んだ。
伏せていた地面から立ち上がる。
その周囲には左に4本、右に4本、計8本の魔剣が展開されている。
わしの本来の戦闘形態ともいうべき姿。
「ううっ……っす」
「あぅぅ……です」
「はぅ……」
わしの本気を見て3匹の使い魔たちは黙りこくる。
あとはソーラだけじゃった。
ちゃんと反省してくれればいいんじゃが。
模擬戦とはいえ同級生に幻獣をけしかけるとはなんたることじゃ。そんなことでは友達もできないし、せっかく学校に通わせてる意味もなくなってしまう。
そう思ってソーラのほうをみたわしは、ぎょっとした。
「うっ…うっ…」
そこには目じりにたくさんの涙を溜めてガン泣き寸前のソーラがいた……。
「うわあああああああああああああん!」
そのままソーラが大泣きをはじめてしまった。
「くっ……!?」
ソーラは慌てて自分にかかった転送魔法を中和し、その場にとどまった。
しかし、<身代わり人形>が壊れた事実は変わらない。
『ソ、ソーラさんの<身代わり人形>の破壊を確認しました。模擬戦の優勝者はミーフィアです!』
先生の放送が響いた。
あのとき、わしがミーフィアに囁いた言葉はこうじゃった。
「わしがソーラたちの攻撃を止める。その隙にわしの隠蔽魔法でぬしの姿を隠すから、攻撃魔法を唱えながらソーラの死角に移動して隠れていて欲しいのじゃ。そしてわしが合図をしたらソーラに攻撃をしてくれ」と。
あの六つの上位魔法がぶつかった瞬間、ソーラたちに視覚的な面にも感覚的な面にも大きな隙ができた。
大きな魔力がぶつかりあう閃光に視界をふさがれ、ぶつかりあった巨大な魔法が魔力の嵐とでもいうべきものを生み出した。
その間にわしらは、ふたつの呪文を唱えたのだ。
ひとつはわしが得意とする隠蔽魔法、もうひとつはミーフィアが得意とする下級の攻撃魔法。
魔力の嵐によるジャミングがかかった状態では、魔法全般の能力が飛躍的に高いソーラも3匹の使い魔たちも、この二つの小さな魔法の発動には気付かなかった。
その隙にわしはミーフィアの幻影を作り出すとともに、ミーフィアの姿を隠蔽させた。そしてミーフィアは攻撃魔法を唱えた状態のまま、ソーラたちの後ろにまわりこんだのだった。
勝負に勝ったとおもったソーラは、普段は自然と展開している結界さえ解き、無防備な状態にあった。
予測不可能な場所から放たれたソーラの魔法は、いちばん無防備な状態のソーラに当たり、致命的な一撃となったのである。
それは<身代わり人形>の破壊という結果が証明している。
呆然とし口をぱくぱくとさせているソーラにわしは告げた。
「さあ終わりじゃ終わり。ぬしらも危ないことはもうやめんか。まったく同級生に幻獣クラスの使い魔を3匹もけしかけるとは、どうかしておるぞ」
「まだっ――」
おそらく「まだっす」と言い募ろうとしたムー子を、わしはじろりと睨みつけた。
「言ったじゃろう。模擬戦は終わったと。
これ以上続けると言うのなら――
――さすがに遊びではすまさぬぞ?」
わしをしばっていた絶対呪縛がぶつりと音を立てて吹き飛んだ。
伏せていた地面から立ち上がる。
その周囲には左に4本、右に4本、計8本の魔剣が展開されている。
わしの本来の戦闘形態ともいうべき姿。
「ううっ……っす」
「あぅぅ……です」
「はぅ……」
わしの本気を見て3匹の使い魔たちは黙りこくる。
あとはソーラだけじゃった。
ちゃんと反省してくれればいいんじゃが。
模擬戦とはいえ同級生に幻獣をけしかけるとはなんたることじゃ。そんなことでは友達もできないし、せっかく学校に通わせてる意味もなくなってしまう。
そう思ってソーラのほうをみたわしは、ぎょっとした。
「うっ…うっ…」
そこには目じりにたくさんの涙を溜めてガン泣き寸前のソーラがいた……。
「うわあああああああああああああん!」
そのままソーラが大泣きをはじめてしまった。
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