12 / 33
わしと主(あるじ)とバトロワ 10
しおりを挟む
後ろから放たれた灼熱をまとったフェニックスの突撃。
「空食剣オフィス!加速剣グラム!」
わしはふたつの魔剣を発動させ、フェニックスの体を十字に切り裂くと一気に逆方向へ加速させる。
フェニックスの体はバラバラになりながら、向こうへ吹き飛んでいった。
しかし、吹き飛んだ先に炎が集まりだし、すぐに体が再生する。
体を再生させたフェニ子は、こちらを恨みがましい瞳で睨みながらヒステリックに騒ぎ始めた。
「ひどいです!ひどいです!長(おさ)さま!なんでわたしだけ攻撃するんですか?!ほかの子が攻撃してもぜんぜん反撃しなかったじゃないですか!」
「ぬしは不死身じゃろうが!」
「ずるいです!ひどいです!さべつです!わたしだってほかのみんなみたいにやさしく攻撃しないで接して欲しいです!」
「なら飛び掛ってくるな!」
2000℃を超える炎の突撃などかまされた日には、どうしても防がざるを得ない。
フェニ子の場合、死なないので攻撃して止めるほうがやりやすい。
「よくもフェーニを殺ったっすね!」
「やっとらんわ!そもそもネコのわしがフェニックスを殺せるか!」
それにしても……。
「しかし、ムー子はともかく、なぜフェニ子がいるんじゃ?」
フェニ子はゴブリン退治にいっていたはずだった。
できれば、わしがいきたかったのに……。
「長さまが浮気してると聞いて、一分で終わらせて飛んできました」
確かにフェニ子の実力なら、ゴブリン退治など一分もかからんじゃろうが。
「浮気?さっきからまたわけのわからぬことを……」
「そんな格好をしてるのにまだしらをきるつもりですか!?浮気じゃないというなら、この場で証明してみてください!」
「そんな格好?」
別に変な格好はしてない。逃げるために、ミーフィアを抱えているだけじゃ。
「そのお姫さまだっこです!」
「そうっす!信用ならないっす!お姫さまだっこしてるのに、ぜんぜんまったく信じられないっす!」
なぜそんなにもお姫さまだっこにこだわる……。
抱えなければ、ミーフィアが危険なのだから当然じゃろう。
しかし、このままでは埒が明かない。
わしは落ち着いて、あくまで冷静に理論的に、彼女たちにわしが浮気などしてないこと証明することにした。
「よかろう。証明してやろう。えー、こほん。
浮気というものはまず本命の恋人が必要じゃ。本命がいなければ、浮気は成り立たん。
わしは誰かと恋仲だったわけではないじゃろう?本命の相手など、どこにもおらん。
だからわしが浮気なんて話は、ぜったいに成り立たないのじゃ。
どうじゃ、完璧じゃろう」
ふふん。
きわめて正しい証明をしたわしだったはずじゃが、言い切った途端、なぜか背筋に悪寒がはしった。
「あの……、クロトさん……、さすがにそれはあんまりなんじゃ……」
なぜかミーフィアまで、ちょっと呆れた瞳でわしを見てくる。
「わし……なにか間違えたじゃろうか……?」
「間違えたというか……その……」
「死んで……クロト……。それから一緒になろ……ね……?」
「ころっすっす!ぶっころすっすっす!このアホネコ!」
「あはは、そうですよね。わたしと長さまは別に何かあったわけじゃないですもんね……。
そのまま全部燃やして、存在ごと何もなくしてやりますよ!」
うむ……、なんかまずかったようじゃのう……。
齢1000年を越えるわしが、今日学んだこと。
女の子に理論的に話をしてはいけない……。
わしは怒り狂った三人から、ミーフィアを抱え脱兎のごとくにげだした。
※お知らせ (2015/07/15)
読んでくださってる方ありがとうございます。
なんかもうちょっと薄味に話を進める予定だったのが、考えていたより濃い感じになってきました。
普段は書き直したりするのですが、この小説は実験的な部分も多いので、とりあえずこのまま投稿してみようと思います。
本題ですが、8月20日まで更新がかなり落ちる予定です。
本来ならゼロ更新の予定なのですが、書くほうにも書かないほうにも意志が薄弱なので、更新があったら「ああ作者が自分に負けてるんだな」と思っていただけたらと思います。
拙作にお付き合いいただいてる方に本当に感謝です。
「空食剣オフィス!加速剣グラム!」
わしはふたつの魔剣を発動させ、フェニックスの体を十字に切り裂くと一気に逆方向へ加速させる。
フェニックスの体はバラバラになりながら、向こうへ吹き飛んでいった。
しかし、吹き飛んだ先に炎が集まりだし、すぐに体が再生する。
体を再生させたフェニ子は、こちらを恨みがましい瞳で睨みながらヒステリックに騒ぎ始めた。
「ひどいです!ひどいです!長(おさ)さま!なんでわたしだけ攻撃するんですか?!ほかの子が攻撃してもぜんぜん反撃しなかったじゃないですか!」
「ぬしは不死身じゃろうが!」
「ずるいです!ひどいです!さべつです!わたしだってほかのみんなみたいにやさしく攻撃しないで接して欲しいです!」
「なら飛び掛ってくるな!」
2000℃を超える炎の突撃などかまされた日には、どうしても防がざるを得ない。
フェニ子の場合、死なないので攻撃して止めるほうがやりやすい。
「よくもフェーニを殺ったっすね!」
「やっとらんわ!そもそもネコのわしがフェニックスを殺せるか!」
それにしても……。
「しかし、ムー子はともかく、なぜフェニ子がいるんじゃ?」
フェニ子はゴブリン退治にいっていたはずだった。
できれば、わしがいきたかったのに……。
「長さまが浮気してると聞いて、一分で終わらせて飛んできました」
確かにフェニ子の実力なら、ゴブリン退治など一分もかからんじゃろうが。
「浮気?さっきからまたわけのわからぬことを……」
「そんな格好をしてるのにまだしらをきるつもりですか!?浮気じゃないというなら、この場で証明してみてください!」
「そんな格好?」
別に変な格好はしてない。逃げるために、ミーフィアを抱えているだけじゃ。
「そのお姫さまだっこです!」
「そうっす!信用ならないっす!お姫さまだっこしてるのに、ぜんぜんまったく信じられないっす!」
なぜそんなにもお姫さまだっこにこだわる……。
抱えなければ、ミーフィアが危険なのだから当然じゃろう。
しかし、このままでは埒が明かない。
わしは落ち着いて、あくまで冷静に理論的に、彼女たちにわしが浮気などしてないこと証明することにした。
「よかろう。証明してやろう。えー、こほん。
浮気というものはまず本命の恋人が必要じゃ。本命がいなければ、浮気は成り立たん。
わしは誰かと恋仲だったわけではないじゃろう?本命の相手など、どこにもおらん。
だからわしが浮気なんて話は、ぜったいに成り立たないのじゃ。
どうじゃ、完璧じゃろう」
ふふん。
きわめて正しい証明をしたわしだったはずじゃが、言い切った途端、なぜか背筋に悪寒がはしった。
「あの……、クロトさん……、さすがにそれはあんまりなんじゃ……」
なぜかミーフィアまで、ちょっと呆れた瞳でわしを見てくる。
「わし……なにか間違えたじゃろうか……?」
「間違えたというか……その……」
「死んで……クロト……。それから一緒になろ……ね……?」
「ころっすっす!ぶっころすっすっす!このアホネコ!」
「あはは、そうですよね。わたしと長さまは別に何かあったわけじゃないですもんね……。
そのまま全部燃やして、存在ごと何もなくしてやりますよ!」
うむ……、なんかまずかったようじゃのう……。
齢1000年を越えるわしが、今日学んだこと。
女の子に理論的に話をしてはいけない……。
わしは怒り狂った三人から、ミーフィアを抱え脱兎のごとくにげだした。
※お知らせ (2015/07/15)
読んでくださってる方ありがとうございます。
なんかもうちょっと薄味に話を進める予定だったのが、考えていたより濃い感じになってきました。
普段は書き直したりするのですが、この小説は実験的な部分も多いので、とりあえずこのまま投稿してみようと思います。
本題ですが、8月20日まで更新がかなり落ちる予定です。
本来ならゼロ更新の予定なのですが、書くほうにも書かないほうにも意志が薄弱なので、更新があったら「ああ作者が自分に負けてるんだな」と思っていただけたらと思います。
拙作にお付き合いいただいてる方に本当に感謝です。
0
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから
咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。
そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。
しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる