すまん、いちばん最初の使い魔のわしがいらない子ってマジ?

小択出新都

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わしと主(あるじ)とバトロワ 6

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 わしは気配を消しながら、生徒たちが10人ぐらいが集まってるほうに向かっていった。

 それだけの人数で徒党を組んでいるなら、さすがに作戦を考えなければならない。
 もしくは何か別の原因で、それだけの人が集まらざる得なくなったのか。
 その場合、怪我や大事などでなければいいがのう、と思う。

 気配を感じた場所に着くと、ひとりの生徒がしゃがみこんだ姿勢で、低木の枝のしたに身を隠していた。
 周りをみると、他にも木のくぼみにがんばって体を隠してる生徒や、枝の間で伏せている生徒がいる。
 待ち伏せという雰囲気ではない。

 話し合ったりする気配はなく、みんな一心不乱に身を隠している。
 むしろ何かから逃げているようないでたちだった。

 よく見ると、低木のしたに隠れていた生徒はエセナじゃった。

「何しておるんじゃ?」

 わしは姿をあらわし、直接たずねることにした。

「うわあっ!?って、なんだ……。ミーフィアのネコかよ。びびらせんなよ」

 わしが声をかけると、エセナは一瞬びっくりした声をあげたが、わしの姿をみるとほっとした表情になった。

「あ、いまは戦いはタンマな、タンマ。それどころじゃないんだよ」
「それどころじゃないとな?」
「ああ。あれを見ろ」

 エセナがそういってゆびをさしたのは、木々の間からのぞく空だった。

「あんま顔をだすなよ」

 そう注意されてちょこっと顔をだしながら空を見上げると、わしの目に豆粒みたいな大きさのものが空を飛んでるのが見えた。

「あれはハイランドワイバーン!」

 ハイランドワイバーンは、飛亜竜の一種だった。
 人を乗せたままでもとても高く飛べるのと、人に従順で言うことを聞きやすいのが特徴で、その高度は低級の使い魔では追いつけない高さにある。
 見上げていると、空の彼方から声が聞こえてきた。

「ふははは、どこに隠れている!このハイランドワイバーンがいる限り、僕を倒すことは君たちにはできないぞ!大人しく降参するといい!」

「あいつハイランドワイバーンで、ずっと俺たちの魔法が届かない高さから攻撃してきやがるんだ」
「なるほど、確かにこれはちとずるいのう」

 作戦そのものは間違っていない。
 使い魔の特徴を生かして優位に立ちまわる戦術は正しい。

 しかし、それは使い魔を自分の実力で召喚していればこその話だ。

 ハイランドワイバーンは人工的な改良品種なのだ。
 人に従順な性格なので、使い魔を使役する能力が低いものでも扱えて、契約時にもむずかしい魔法での召喚や交渉をする必要はない。それでいて性能はかなり高い。

 かわりに値段がめっぽうに高い。
 買うなら貴族の別荘を土地ごと一軒買えるぐらいの金がいる。

 つまり金に飽かした作戦ということじゃった。
 ルール的には問題ないのじゃろうが、学生同士の戦いでこれはちょっと首をかしげる。

「レナとフィムがやられちまった。こっちの魔法がなんとか届けばいいんだが。隠れることしかできないぜ。ちくしょう!」

 エセナの不満そうな顔はそういうことじゃった。
 生徒たちもこんな財力の差を利用したやりかたで、一方的にやられるのは納得いかないのだろう。
 他の隠れている生徒たちも、同じような表情で眉をしかめていた。
 なんとか一矢報いてやりたいという顔じゃった。

 だから10人もの生徒が、一緒に集まってこうやって隠れることになったのだろう。

「ふむ、わかった。わしがなんとかしよう」
「え?」
「ちょっとわしはミーフィアをつれてくるから、そのまま待っておれ」

 とにかく敵対的な集団でないことはわかった。
 わしはまず隠れてるミーフィアにも、集団に合流してもらうことにした。
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