141 / 146
ラストファミリー 全ては家族のために
139話:国民栄誉笑
しおりを挟む
――3ヶ月後。
ようやく一時の混乱も落ち着き平和になった一家だが、なぜか総理官邸に招待される運びとなった。
柄にもなくよそ行きの顔をした一家は、全員正装姿で総理大臣の前に直立不動の姿勢で並んでいる。
説教されに来ているのでも、怒られに来ているのでもない。
どういうわけだが世良田一家の首元には、誇らしげに輝く金色にメダルがかけられていた。
まさかまさかの急展開。
国民の信頼を裏切り、モデルファミリー制度を廃止に追いこんでしまった一家は、どえらいことになっているのである。
国民栄誉笑。
モデルファミリー制度廃止と当時に、急拵えで作られた国民を元気にする新しい制度――「国民栄誉笑(こくみんえいよしょう)」。
その名の通り栄誉なことであり、笑えることでもあるのだが、なぜか一家はそれの記念すべき第一回目の受賞者となったのだ。
いわば、今年一番日本を愉快にさせたものに授けようといった賞なのである。
こんなふざけた賞にも関わらず、総理自らが授与してくれるというのだから、驚きである。
「栄誉笑だと? バカにしてやがる」
そう息巻いて怒っていた元樹も、この厳粛な場においては平伏しきっている。
何を持ってして<栄誉>で、何を持ってして<笑い>なのかは分からないが、栄誉に関してはしがない一家がユグドリアの国家転覆を防ぎ、世界に驚異をもたらしかねない核兵器の存在を暴いたことが評価されたらしい。
そして笑いは言うまでもなく、この一家の存在自体である。
この栄誉を授けられているのは、一家だけではない。
総理を前にして右から元樹、栄子、勇治、美園、つかさ、誠、その腕に犬のあんこ、そしてケンジとタキが並んでいる
犬を含めたその全員にメダルがかかっており、その様子を中継しているつかさの父親、仁の首にも誇らしげに光るものぶら下がっていた。
人相の悪さから官邸を通過する際、暴力団と間違えられてひと悶着起こしたようだが、今はご機嫌である。
なぜ、こいつらまでもが……と不満を持つ美園だが、確かにつかさの功績は大きく、悔しいが仁もそうだ。
仁がつかさに持たせたレコーダーにより全ての会話が盗聴され、リアルタイムで世界各国に配信されたのだから。
その結果、反世良田一家ムードだった国民は、一気に世良田一家擁護へと代わり、最後の決着がつくまで固唾をのんで一家の無事を見守った。
この状況を把握していなかった一家は、日本に帰った途端、罵詈雑言を浴びせられ、腐った卵のひとつでも飛んでくるものと覚悟していただけに、横断幕に拍手喝采で迎え入れられ腰が抜けるほど驚愕した。
大袈裟に服の内側に防弾チョッキまで身につける念の入用だったため、状況が全く理解できていない。
出迎えた世良田一家のファンたちが作る花道を前に、唖然とした表情の元樹たちの姿は、お茶の間の笑いを誘った。
数日にして一家はヒーローとなったのだ。
国民は嘘くさい家族像に憧れるよりも、ありのままの一家のハチャメチャさに共感したのだ。
喧嘩して罵りあって、悪口を言い合って、でも言いたいこと言い合えば最後はひとつになれる。
ここぞという時に信頼しあえる形こそ、本来追い求めなければならない理想の家族像ではないのだろうか、と。
それに伴い、国会でも新たにモデルファミリー制度に対する見直しが議論された。
過去のモデルファミリー受賞家族が、一家と同じように演技していたり、賞金獲得後に離散していたりと好ましいものではなかった事も発覚し、制度は今年を持って終了したのだ。
「しばらくは別れられないわね」
「ああ、金がなきゃどうしようもねぇ」
と、栄子と元樹はぼやいていたが、2人とも妙に嬉しそうだった。
ようやく一時の混乱も落ち着き平和になった一家だが、なぜか総理官邸に招待される運びとなった。
柄にもなくよそ行きの顔をした一家は、全員正装姿で総理大臣の前に直立不動の姿勢で並んでいる。
説教されに来ているのでも、怒られに来ているのでもない。
どういうわけだが世良田一家の首元には、誇らしげに輝く金色にメダルがかけられていた。
まさかまさかの急展開。
国民の信頼を裏切り、モデルファミリー制度を廃止に追いこんでしまった一家は、どえらいことになっているのである。
国民栄誉笑。
モデルファミリー制度廃止と当時に、急拵えで作られた国民を元気にする新しい制度――「国民栄誉笑(こくみんえいよしょう)」。
その名の通り栄誉なことであり、笑えることでもあるのだが、なぜか一家はそれの記念すべき第一回目の受賞者となったのだ。
いわば、今年一番日本を愉快にさせたものに授けようといった賞なのである。
こんなふざけた賞にも関わらず、総理自らが授与してくれるというのだから、驚きである。
「栄誉笑だと? バカにしてやがる」
そう息巻いて怒っていた元樹も、この厳粛な場においては平伏しきっている。
何を持ってして<栄誉>で、何を持ってして<笑い>なのかは分からないが、栄誉に関してはしがない一家がユグドリアの国家転覆を防ぎ、世界に驚異をもたらしかねない核兵器の存在を暴いたことが評価されたらしい。
そして笑いは言うまでもなく、この一家の存在自体である。
この栄誉を授けられているのは、一家だけではない。
総理を前にして右から元樹、栄子、勇治、美園、つかさ、誠、その腕に犬のあんこ、そしてケンジとタキが並んでいる
犬を含めたその全員にメダルがかかっており、その様子を中継しているつかさの父親、仁の首にも誇らしげに光るものぶら下がっていた。
人相の悪さから官邸を通過する際、暴力団と間違えられてひと悶着起こしたようだが、今はご機嫌である。
なぜ、こいつらまでもが……と不満を持つ美園だが、確かにつかさの功績は大きく、悔しいが仁もそうだ。
仁がつかさに持たせたレコーダーにより全ての会話が盗聴され、リアルタイムで世界各国に配信されたのだから。
その結果、反世良田一家ムードだった国民は、一気に世良田一家擁護へと代わり、最後の決着がつくまで固唾をのんで一家の無事を見守った。
この状況を把握していなかった一家は、日本に帰った途端、罵詈雑言を浴びせられ、腐った卵のひとつでも飛んでくるものと覚悟していただけに、横断幕に拍手喝采で迎え入れられ腰が抜けるほど驚愕した。
大袈裟に服の内側に防弾チョッキまで身につける念の入用だったため、状況が全く理解できていない。
出迎えた世良田一家のファンたちが作る花道を前に、唖然とした表情の元樹たちの姿は、お茶の間の笑いを誘った。
数日にして一家はヒーローとなったのだ。
国民は嘘くさい家族像に憧れるよりも、ありのままの一家のハチャメチャさに共感したのだ。
喧嘩して罵りあって、悪口を言い合って、でも言いたいこと言い合えば最後はひとつになれる。
ここぞという時に信頼しあえる形こそ、本来追い求めなければならない理想の家族像ではないのだろうか、と。
それに伴い、国会でも新たにモデルファミリー制度に対する見直しが議論された。
過去のモデルファミリー受賞家族が、一家と同じように演技していたり、賞金獲得後に離散していたりと好ましいものではなかった事も発覚し、制度は今年を持って終了したのだ。
「しばらくは別れられないわね」
「ああ、金がなきゃどうしようもねぇ」
と、栄子と元樹はぼやいていたが、2人とも妙に嬉しそうだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる