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最終決戦

137話:キス

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 つかさは美園を守ると言っている。けれど、美園こそつかさを守らなければならないのだ。

 世良田一家と出会わなければ、つかさは今頃日本でゆっくりテレビ中継を楽しんでいられたのだ。
 それなのに無用な騒動に巻き込まれ事件の当事者となり、命の危険に晒されている。あまりにも気の毒すぎる。

「つかさには本当に悪いことしたと思ってる。あたしたちみたいな疫病神に付き合ってこんなことまでさせて」
「そんなことない、謝るのはこっちの方だ。お前たちが偽物家族だって言ったけど、あれ間違いだった」
「……え?」
「偽装じゃなくて、外面が良かっただけって気づいたんだ。お前たち、中身は何にも変わってないな。あの頃のまんま、最高の家族だよ」
「……つかさ」

 美園は泣き出してしまった。
 お調子者で狡猾なつかさの存在が、美園の中でこれほどまでに膨れ上がっているとは想像もしていなかった。

 大丈夫だ、つかさがそう言うと本当に大丈夫だと思えてくるから不思議だ。
 誰よりもつかさを信頼し、頼りきってしまう。
 美園は自分自身の感情に、どう向き合っていいか分からず肩を震わせる。

「おいおい、勘弁してくれって。今は逃げなきゃ、泣いてる場合じゃないって」

 つかさが何とか美園をなだめようとするが、だんだん呼吸も荒くなってくる。

「だめだこりゃ。おい美園、しっかりしろ。誠たちも連れていかなきゃ、お前がしっかりしないとだめだろ」

 強気な発言を繰り返すつかさだが、その手からは夥しい量の血が流れている。 
 その感触は繋いだ手を通して美園にも流れ込んでいるため、余計に恐怖を与えているようだ。
 美園は今にも座り込んでしまいそうだ。

「あ~!もう!」

 つかさは指で胸元のペン先を抑え、レンズを覆う。
 そうして、滑らかな動きで美園の唇に、自分の唇を重ねた。

「―――――んっ!」

 驚きのあまり美園の涙が止まる。
 それを確認したつかさは、素早く美園から離れると、空いた方の手で相手の肩を揺らす。

「おい、大丈夫か。逃げるぞ、しっかりしろ、いいな」

 美園は黙ってこくんこくんと頷いた。
 その頬に次第に赤みが差していくが、それとは真逆につかさの顔は青ざめていく。

 それを見た美園は、つかさの手を痛みが走るくらい強く握りしめる。
 これ以上の血は流させまいと、止血の意味を込めてその手にさらに力を込めた。

「あさこちゃんはあたしの大事な友達、絶対にあたしが守る。……それと、進藤つかさはあたしにとって大切な人、だから絶対死なせない!」

 そう決意して、誠たちを見た。
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