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野望は絶対阻止!
126話:元樹と栄子のなれそめ その2
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栄子はたまたまお茶くみに行った先で、元樹とその当時の上司が言い合いをしているのを聞いたのだという。
「元樹さん、猛然と意見してたわ。女子社員のことをあまりにもバカにしている。業務後に接待に連れ出すなら給料を払うべきだし、行きたくないと言ってる子を連れ出すのは鬼のやることだ、って」
「ああ、そう言えば……あったかもなぁ」
遠い記憶が、薄ぅ~く蘇ってくる。
「あたし、びっくりしたのよ。普段大人しくて人に意見することのないような目立たない人に、こんな一面があったなんて、って」
ずいぶんな言われようだな、と元樹は苦笑する。
「あの上司とはいろいろあって、私情が挟まってたんだよ」
「そうなの」
栄子を前にしてバツが悪そうな元樹だったが、思い切って白状する。
「実はその当時付き合ってた彼女を取引先の男に寝取られちゃってさ。その原因が仕事終わりの接待だったんだよ」
「ええ?!」
「最初は愛子も行きたくないって俺に泣きついてたんだけど、俺はなんとかなだめて頑張れって応援してたクチなんだ。だけど、いつの間にか自分から進んで業務外の仕事を受けるようになって、どうしたんだろうなって思ってたら、A社の役員の男と意気投合して付き合い始めたんだ」
「あらまぁ、そんなことが」
栄子はつまらなそうに口を尖らせた。
正義感の強い王子様だと思っていた元樹が、実は女に振られた恨みを上司にぶつけていただけだなんて、ちょっとみっともない。
「がっかりしたか」
元樹の言葉に、栄子は首を振る。
「人生そんなもんでしょ。出会いがあって別れがある。結果的に私はあなたと結婚して、勇治と美園と誠に出会えたんだから、結果オーライよ」
「やっぱりお前はポジティブだよ」
そう言って元樹は笑う。
つられて栄子も声を上げて笑い、ふと思いついたように答える。
「さっき言ってたテニスコーチとは何でもないから」
「ん?」
「あなたさっき心配してたじゃない。コーチと私の仲」
「ああ、あれか。まぁな」
照れ隠しだろう、元樹はボリボリ頭を掻く。
「まぁ、あれだな。お前もリンリンちゃんとのこと疑ってるようだけど、あくまであの子はファンタジーの中の存在だから。手はいっさいつけてない、指先のちょんちょんだけだ。最近思うのはEカップ巨乳より、お前くらいのささやかな胸の方が……」
バコン!!
栄子の右ナックルが見事に決まった。
壁にめり込んで白目を向いた元樹を残し、栄子は颯爽と駆けだしていった。
「元樹さん、猛然と意見してたわ。女子社員のことをあまりにもバカにしている。業務後に接待に連れ出すなら給料を払うべきだし、行きたくないと言ってる子を連れ出すのは鬼のやることだ、って」
「ああ、そう言えば……あったかもなぁ」
遠い記憶が、薄ぅ~く蘇ってくる。
「あたし、びっくりしたのよ。普段大人しくて人に意見することのないような目立たない人に、こんな一面があったなんて、って」
ずいぶんな言われようだな、と元樹は苦笑する。
「あの上司とはいろいろあって、私情が挟まってたんだよ」
「そうなの」
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「ええ?!」
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「あらまぁ、そんなことが」
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「がっかりしたか」
元樹の言葉に、栄子は首を振る。
「人生そんなもんでしょ。出会いがあって別れがある。結果的に私はあなたと結婚して、勇治と美園と誠に出会えたんだから、結果オーライよ」
「やっぱりお前はポジティブだよ」
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「さっき言ってたテニスコーチとは何でもないから」
「ん?」
「あなたさっき心配してたじゃない。コーチと私の仲」
「ああ、あれか。まぁな」
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「まぁ、あれだな。お前もリンリンちゃんとのこと疑ってるようだけど、あくまであの子はファンタジーの中の存在だから。手はいっさいつけてない、指先のちょんちょんだけだ。最近思うのはEカップ巨乳より、お前くらいのささやかな胸の方が……」
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