モデルファミリー <完結済み>

MARU助

文字の大きさ
上 下
128 / 146
野望は絶対阻止!

126話:元樹と栄子のなれそめ その2

しおりを挟む
 栄子はたまたまお茶くみに行った先で、元樹とその当時の上司が言い合いをしているのを聞いたのだという。

「元樹さん、猛然と意見してたわ。女子社員のことをあまりにもバカにしている。業務後に接待に連れ出すなら給料を払うべきだし、行きたくないと言ってる子を連れ出すのは鬼のやることだ、って」
「ああ、そう言えば……あったかもなぁ」

 遠い記憶が、薄ぅ~く蘇ってくる。

「あたし、びっくりしたのよ。普段大人しくて人に意見することのないような目立たない人に、こんな一面があったなんて、って」

 ずいぶんな言われようだな、と元樹は苦笑する。

「あの上司とはいろいろあって、私情が挟まってたんだよ」
「そうなの」

 栄子を前にしてバツが悪そうな元樹だったが、思い切って白状する。

「実はその当時付き合ってた彼女を取引先の男に寝取られちゃってさ。その原因が仕事終わりの接待だったんだよ」
「ええ?!」
「最初は愛子も行きたくないって俺に泣きついてたんだけど、俺はなんとかなだめて頑張れって応援してたクチなんだ。だけど、いつの間にか自分から進んで業務外の仕事を受けるようになって、どうしたんだろうなって思ってたら、A社の役員の男と意気投合して付き合い始めたんだ」
「あらまぁ、そんなことが」

 栄子はつまらなそうに口を尖らせた。
 正義感の強い王子様だと思っていた元樹が、実は女に振られた恨みを上司にぶつけていただけだなんて、ちょっとみっともない。

「がっかりしたか」

 元樹の言葉に、栄子は首を振る。

「人生そんなもんでしょ。出会いがあって別れがある。結果的に私はあなたと結婚して、勇治と美園と誠に出会えたんだから、結果オーライよ」
「やっぱりお前はポジティブだよ」

 そう言って元樹は笑う。
 つられて栄子も声を上げて笑い、ふと思いついたように答える。

「さっき言ってたテニスコーチとは何でもないから」
「ん?」
「あなたさっき心配してたじゃない。コーチと私の仲」
「ああ、あれか。まぁな」

 照れ隠しだろう、元樹はボリボリ頭を掻く。

「まぁ、あれだな。お前もリンリンちゃんとのこと疑ってるようだけど、あくまであの子はファンタジーの中の存在だから。手はいっさいつけてない、指先のちょんちょんだけだ。最近思うのはEカップ巨乳より、お前くらいのささやかな胸の方が……」

 バコン!!

 栄子の右ナックルが見事に決まった。
 壁にめり込んで白目を向いた元樹を残し、栄子は颯爽と駆けだしていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ライト短編集

篁 しいら
ライト文芸
篁 しいらの短編集を纏めました。 死ネタ無し/鬱表現有り

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

黄昏の恋人~この手のぬくもりを忘れない~【完結】

水樹ゆう
ライト文芸
高校三年生の優花は、三年前の交通事故以来『誰かと逃げる夢』を繰り返し見ていた。不意打ちのファーストキスの相手が幼馴染の晃一郎だと知ったその日、優花の運命は大きく動き出す――。 失われた記憶の向こう側にあるのもは? 現代学園を舞台に繰り広げられる、心に傷を負った女子高生とそれを見守る幼馴染の織りなす、恋と友情と切ない別れの物語。 2019/03/01 連載スタート 2019/04/11 完結 ★内容について 現代の高校を舞台に、主人公の優花が体験する運命を変える長い1日の物語です。恋愛(幼馴染との淡い初恋)、ファンタジー、SF、サスペンス、家族愛、友情など、様々な要素を含んで物語は展開します。 ★更新について 1日1~5ページ。1ページは1000~2000文字くらいです。 一カ月ほどの連載になるかと思います。 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。 ★ライト文芸大賞に参加中です♪

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

僕らは不完全な世界で猫を撫でる。

道端の椿
ライト文芸
僕は動物飼育のひどい現状に絶望し、自分を守るために世界から心を閉ざした。クラスメイトの綾という女の子がその重い扉をノックする――

時のコカリナ

遊馬友仁
ライト文芸
高校二年生の坂井夏生は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

サプレッション・バレーボール

四国ユキ
ライト文芸
【完結まで毎日更新】 主人公水上奈緒(みなかみなお)と王木真希(おうきまき)、右原莉菜(みぎはらりな)は幼馴染で、物心ついたときから三人でバレーボールをやっていた。そんな三人の、お互いがお互いへの想いや変化を描いた青春百合小説。 スポーツ物、女女の感情、関係性が好きな人に刺さる作品となっています。

処理中です...