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オヘラハウスへ
103話:いざ、決戦の場へ
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リステッド海の一部を埋め立てて作られたオペラハウス。
今現在、その外観は黒いシートに覆い隠されているため、全貌を伺い知ることができない。
城の窓から眺めていた時はすぐ近くにあるように思えたが、実際は市街地からかなり離れた位置にあるようだ。
ここへたどり着くまでに車で50分ほどの時間を要した。
オペラハウスへ入るためには海上に渡された大きな橋を渡る必要がある。
頑丈そうなその橋は車が横並びで8台は通過できるほどの幅があった。
ここがオペラハウスへの唯一の渡し橋となるが、情報を聞きつけたマスコミや野次馬たちが集まり、道を塞いでいた。
銃を携えた警官や軍隊が大勢警護にあたっており、用のないものの通行を制限しているようだ。
よく見ると、その中に日本の自衛隊の姿もある。
誘拐されたのが日本人ということもあり、政府が迅速にサポート体制を整えてくれたのだろう。
元樹は車の中から日本国旗の腕章を眺め、静かに敬礼する。相手も同じように目礼を返してきた。
政府に対し偉そうに言い放ったことを後悔しているが、今はそれどころではない。
今考えるべきは自身の保身ではなく、誠の無事と家族の安全だ。元樹は握りこぶしに一層の力を込め、目の前のオペラハウスを凝視した。
多くのフラッシュやマスコミのカメラに見守られながら、一家を乗せた公用車はフリーパスで検問を通過した。
長い橋を渡ること15分、ようやくオペラハウスの入り口で出迎えたトワ達と合流することができた。
予定より1時間ほど早くオペラハウスに辿り着くことができたため、人質交換までに気持ちを落ち着ける時間は確保できたようだ。
トワとマツムラは映画の中の登場人物のように、長いマントを身につけ、全身を覆い隠していた。
「ご苦労様です」
硬い表情でトワが頭を下げるのにあわせ、一家も車から降りてぎこちない挨拶を交わす。そしてすぐさま建物を見上げた。
今立っている場所は黒いシートの内側になるため、非公開とされる建物の全貌を見ることができた。
高く聳え立つそれはシルバーを基調とした美しく洗礼されたデザインだったが、あまりにも大きすぎて全体がどんな形状をしているのかさえ把握できない。
敷地面積がかなりあるということだけは確かだった。
一家はオペラハウスに感心する間もなく、入口の方へ誘導される。
「ではこちらへ」
そう言ってマツムラが片手を挙げた時、マントの内側が覗けて腰の長剣が目に入った。
一家は口にこそ出さないものの、誰もが不安を抱いた。
やはりテロリスト相手だ、武装しなければならないのだろう。そう考えると、ここからが正念場だという気がして、改めて覚悟を固まる。
トワたちと儀礼的な会話を交わしたのち、一家はマツムラ先導の元、更に入り口で厳重なセキュリティーチェックを受け、ようやく建物内に入ることができた。
敵に指定された時間は夕刻の5時だ。
今現在、その外観は黒いシートに覆い隠されているため、全貌を伺い知ることができない。
城の窓から眺めていた時はすぐ近くにあるように思えたが、実際は市街地からかなり離れた位置にあるようだ。
ここへたどり着くまでに車で50分ほどの時間を要した。
オペラハウスへ入るためには海上に渡された大きな橋を渡る必要がある。
頑丈そうなその橋は車が横並びで8台は通過できるほどの幅があった。
ここがオペラハウスへの唯一の渡し橋となるが、情報を聞きつけたマスコミや野次馬たちが集まり、道を塞いでいた。
銃を携えた警官や軍隊が大勢警護にあたっており、用のないものの通行を制限しているようだ。
よく見ると、その中に日本の自衛隊の姿もある。
誘拐されたのが日本人ということもあり、政府が迅速にサポート体制を整えてくれたのだろう。
元樹は車の中から日本国旗の腕章を眺め、静かに敬礼する。相手も同じように目礼を返してきた。
政府に対し偉そうに言い放ったことを後悔しているが、今はそれどころではない。
今考えるべきは自身の保身ではなく、誠の無事と家族の安全だ。元樹は握りこぶしに一層の力を込め、目の前のオペラハウスを凝視した。
多くのフラッシュやマスコミのカメラに見守られながら、一家を乗せた公用車はフリーパスで検問を通過した。
長い橋を渡ること15分、ようやくオペラハウスの入り口で出迎えたトワ達と合流することができた。
予定より1時間ほど早くオペラハウスに辿り着くことができたため、人質交換までに気持ちを落ち着ける時間は確保できたようだ。
トワとマツムラは映画の中の登場人物のように、長いマントを身につけ、全身を覆い隠していた。
「ご苦労様です」
硬い表情でトワが頭を下げるのにあわせ、一家も車から降りてぎこちない挨拶を交わす。そしてすぐさま建物を見上げた。
今立っている場所は黒いシートの内側になるため、非公開とされる建物の全貌を見ることができた。
高く聳え立つそれはシルバーを基調とした美しく洗礼されたデザインだったが、あまりにも大きすぎて全体がどんな形状をしているのかさえ把握できない。
敷地面積がかなりあるということだけは確かだった。
一家はオペラハウスに感心する間もなく、入口の方へ誘導される。
「ではこちらへ」
そう言ってマツムラが片手を挙げた時、マントの内側が覗けて腰の長剣が目に入った。
一家は口にこそ出さないものの、誰もが不安を抱いた。
やはりテロリスト相手だ、武装しなければならないのだろう。そう考えると、ここからが正念場だという気がして、改めて覚悟を固まる。
トワたちと儀礼的な会話を交わしたのち、一家はマツムラ先導の元、更に入り口で厳重なセキュリティーチェックを受け、ようやく建物内に入ることができた。
敵に指定された時間は夕刻の5時だ。
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