28 / 146
座敷童子
26話:座敷童子
しおりを挟む
ひと通り話し終えた栄子は「どうだった」とつかさの様子を伺う。
つかさは「思ったほど面白い話ではなかった」と前置きしつつ、
「<世良田一家実は8人家族だった?!>という見出しと、オチに座敷童子って言葉を持ってくれば少しは話題になるかもしれないですね」
と、結論を出す。
「座敷童子?」
なんだそれは、と元樹が首をひねる。
「東北の方に伝わる子供の妖怪ですよ。その子が住み着けば家が繁栄するって昔から言い伝えもあるくらい古参の妖怪です。悪戯はするみたいですけど、悪い妖怪ではないですよ」
「いやいや、あれはどう考えても人間だって」
美園はひらひらと手を振って笑う。
「そんなの分かってるって。弱いんだよあんたたちのそのネタだと。どうやってタイトルで釣って中身を読ませるか。まずそこが大事なわけ。んで季節がら心霊系のオチに持っていけば多少バズるでしょってこと」
「夜の神社で出会った謎の子供、一言も喋らず、ひっそり姿を消した。まぁ、確かに不思議な話ではあるな」
先ほどの羞恥心を忘れたかのように、腕を組んだ勇治が偉そうにつぶやいた。
その様子を見て、つかさは呆れたようにため息をつく。
全ての話を終えた後、黙って何事か考えていた元樹が、ふとひらめいたように言う。
「なぁ、その子探し出せないか? つかさ君の父親のコネを使って」
「今どうしてるのか気になりますか?」
と、つかさ。
「いやいや、その子のインタビューが撮れたら最高じゃないかと思ってさ。世良田一家には感謝してるんです、神様です、あの家族がいたから私は今こうして生きていられるんです、って。その言葉がもらえれば俺たちの評価はうなぎ昇りだろ? 他人にも愛情深い家族ってことで」
鼻息を荒くする元樹を見て、
「ずいぶん恩着せがましいですね」
と、つかさが氷のように冷たく言い放った。その態度を前に、元樹は言葉に詰まってしまう。
すでに世良田一家の内面を見透かしていたつかさは、何事もなかったかのように答える。
「まぁいいですよ。記事の最後に<ご本人からの連絡を待ってます>って付け加えておきますから」
このネタで納得したのか、つかさは帰り支度を始める。
「今回はこのネタでいきますけど、再来週あたりは、さっきの<モデルファミリーとして前向きな別離>で進めさせていただきます」
つかさは「思ったほど面白い話ではなかった」と前置きしつつ、
「<世良田一家実は8人家族だった?!>という見出しと、オチに座敷童子って言葉を持ってくれば少しは話題になるかもしれないですね」
と、結論を出す。
「座敷童子?」
なんだそれは、と元樹が首をひねる。
「東北の方に伝わる子供の妖怪ですよ。その子が住み着けば家が繁栄するって昔から言い伝えもあるくらい古参の妖怪です。悪戯はするみたいですけど、悪い妖怪ではないですよ」
「いやいや、あれはどう考えても人間だって」
美園はひらひらと手を振って笑う。
「そんなの分かってるって。弱いんだよあんたたちのそのネタだと。どうやってタイトルで釣って中身を読ませるか。まずそこが大事なわけ。んで季節がら心霊系のオチに持っていけば多少バズるでしょってこと」
「夜の神社で出会った謎の子供、一言も喋らず、ひっそり姿を消した。まぁ、確かに不思議な話ではあるな」
先ほどの羞恥心を忘れたかのように、腕を組んだ勇治が偉そうにつぶやいた。
その様子を見て、つかさは呆れたようにため息をつく。
全ての話を終えた後、黙って何事か考えていた元樹が、ふとひらめいたように言う。
「なぁ、その子探し出せないか? つかさ君の父親のコネを使って」
「今どうしてるのか気になりますか?」
と、つかさ。
「いやいや、その子のインタビューが撮れたら最高じゃないかと思ってさ。世良田一家には感謝してるんです、神様です、あの家族がいたから私は今こうして生きていられるんです、って。その言葉がもらえれば俺たちの評価はうなぎ昇りだろ? 他人にも愛情深い家族ってことで」
鼻息を荒くする元樹を見て、
「ずいぶん恩着せがましいですね」
と、つかさが氷のように冷たく言い放った。その態度を前に、元樹は言葉に詰まってしまう。
すでに世良田一家の内面を見透かしていたつかさは、何事もなかったかのように答える。
「まぁいいですよ。記事の最後に<ご本人からの連絡を待ってます>って付け加えておきますから」
このネタで納得したのか、つかさは帰り支度を始める。
「今回はこのネタでいきますけど、再来週あたりは、さっきの<モデルファミリーとして前向きな別離>で進めさせていただきます」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

魔女の虚像
睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。
彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。
事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。
●エブリスタにも掲載しています
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
フリー台本と短編小説置き場
きなこ
ライト文芸
自作のフリー台本を思いつきで綴って行こうと思います。
短編小説としても楽しんで頂けたらと思います。
ご使用の際は、作品のどこかに"リンク"か、"作者きなこ"と入れていただけると幸いです。
桜ハウスへいらっしゃい!
daisysacky
ライト文芸
母親の呪縛から離れ、ようやくたどり着いた
下宿は…実はとんでもないところだった!
いわくありげな魔女たちの巣食う《魔女の館》
と言われるアパートだった!
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる