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座敷童子

26話:座敷童子

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 ひと通り話し終えた栄子は「どうだった」とつかさの様子を伺う。
 つかさは「思ったほど面白い話ではなかった」と前置きしつつ、

「<世良田一家実は8人家族だった?!>という見出しと、オチに座敷童子って言葉を持ってくれば少しは話題になるかもしれないですね」

 と、結論を出す。

「座敷童子?」

 なんだそれは、と元樹が首をひねる。

「東北の方に伝わる子供の妖怪ですよ。その子が住み着けば家が繁栄するって昔から言い伝えもあるくらい古参の妖怪です。悪戯はするみたいですけど、悪い妖怪ではないですよ」
「いやいや、あれはどう考えても人間だって」

 美園はひらひらと手を振って笑う。

「そんなの分かってるって。弱いんだよあんたたちのそのネタだと。どうやってタイトルで釣って中身を読ませるか。まずそこが大事なわけ。んで季節がら心霊系のオチに持っていけば多少バズるでしょってこと」
「夜の神社で出会った謎の子供、一言も喋らず、ひっそり姿を消した。まぁ、確かに不思議な話ではあるな」

 先ほどの羞恥心を忘れたかのように、腕を組んだ勇治が偉そうにつぶやいた。
 その様子を見て、つかさは呆れたようにため息をつく。

 全ての話を終えた後、黙って何事か考えていた元樹が、ふとひらめいたように言う。

「なぁ、その子探し出せないか? つかさ君の父親のコネを使って」
「今どうしてるのか気になりますか?」

 と、つかさ。

「いやいや、その子のインタビューが撮れたら最高じゃないかと思ってさ。世良田一家には感謝してるんです、神様です、あの家族がいたから私は今こうして生きていられるんです、って。その言葉がもらえれば俺たちの評価はうなぎ昇りだろ? 他人にも愛情深い家族ってことで」

 鼻息を荒くする元樹を見て、

「ずいぶん恩着せがましいですね」

 と、つかさが氷のように冷たく言い放った。その態度を前に、元樹は言葉に詰まってしまう。
 すでに世良田一家の内面を見透かしていたつかさは、何事もなかったかのように答える。

「まぁいいですよ。記事の最後に<ご本人からの連絡を待ってます>って付け加えておきますから」

 このネタで納得したのか、つかさは帰り支度を始める。

「今回はこのネタでいきますけど、再来週あたりは、さっきの<モデルファミリーとして前向きな別離>で進めさせていただきます」
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