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バラバラの絆
19話:事の顛末
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「あの当時は大変だったわ。近所の人があからさまに噂話をするんだもの。あそこの家の旦那さん、人が良さそうに見えるけどとんだ極悪人だったのね、って」
栄子が遠い目をする。
「悪かった」
元樹が謝る。
「でもお前は正直に全部話したんじゃ。なぁんも恥じることなんてない」
ケンジが息子を庇うように力強い口調で言い切り、それに同意するようにタキも頷いた。
父親の温かい言葉に触れて、元樹の中にこみあげてくるものがあったようだ。思わず目頭を押さえた。
うなだれている元樹を前に、栄子が深いため息をひとつ。
「結果的に進藤君のお父様に助けていただいたわ。元樹さんの会見をセッティングしてくださったんだもの。たくさんの報道陣に声をかけてくれたおかげであの会見が注目されたし」
つかさは神妙な顔をして頷くが、それが気に入らなかった勇治は嫌味ったらしく反論する。
「けっ、何が感謝だ。元々火をつけたのはこいつの親父だろ。あいつはスクープのことしか考えてないんだよ。スクープのためならなんでもする、そんなクズ……」
ボフッ!
美園が勇治の横腹に肘鉄を食らわせる。
「何するんだお前……」
「お兄ちゃん!」
目を大きく見開いて勇治を見る美園。
「お兄ちゃんも感謝してるよね、進藤君のお父さんには。ね? ね?」
そういわれて周囲を見渡してみると、懇願するような家族の視線とかち合った。
事態を把握した勇治は嘘くさい笑みを貼り付けて「ああ、スクープのためならなんでもするその根性。俺も見習わなきゃなって思ってるんだよ」と意味不明な言葉を落とす。
部屋の中になんともいえない微妙な空気が漂い始めたのを察知した栄子は、素早く話の流れを変える。
「さぁさぁ、暗い話はなしよ。結果的に元樹さんは今新しい会社で部長職として頑張ってるんだもの。結果オーライよ」
「ああ、そうだ。今の部署は若い女の子が多くて、仕事に行くのが楽しくって、ハハハ」
思わず飛び出た元樹の本音に、栄子の抑揚のない声が続く。
「ほんと、良かったわよね元樹さん。若い子っていいわよね、元気をもらえるもの。あなたが楽しそうで何よりだわ、フフフ」
「――――」
喋るたびに墓穴を掘り続ける元樹を憐れむように見つめる家族。
栄子は元樹をひと睨みするとすぐに表情を切り替え、つかさに向き直る。
「進藤君は美園のお友達だし、せっかく今日おうちに来ていただいたんだから特別に取材を受けてもいいわよ」
「本当ですか?」
つかさの目が輝いた。
「ええ本当よ」
「うわぁ、嬉しいな。栄子さん、ありがとうございます」
「まぁ、栄子さんだなんて、ホホ」
あら、可愛い子。
栄子は元樹の冷めたような視線を無視して、気分は女子高生。ちょうど美園くらいの年の頃にいろんな男の子と遊び、青春を謳歌していた時代を思い起こした。
そんな栄子の年甲斐もないはしゃぎように、ケンジとタキはあからさまに顔を顰めてズズズとお茶を啜った。
栄子が遠い目をする。
「悪かった」
元樹が謝る。
「でもお前は正直に全部話したんじゃ。なぁんも恥じることなんてない」
ケンジが息子を庇うように力強い口調で言い切り、それに同意するようにタキも頷いた。
父親の温かい言葉に触れて、元樹の中にこみあげてくるものがあったようだ。思わず目頭を押さえた。
うなだれている元樹を前に、栄子が深いため息をひとつ。
「結果的に進藤君のお父様に助けていただいたわ。元樹さんの会見をセッティングしてくださったんだもの。たくさんの報道陣に声をかけてくれたおかげであの会見が注目されたし」
つかさは神妙な顔をして頷くが、それが気に入らなかった勇治は嫌味ったらしく反論する。
「けっ、何が感謝だ。元々火をつけたのはこいつの親父だろ。あいつはスクープのことしか考えてないんだよ。スクープのためならなんでもする、そんなクズ……」
ボフッ!
美園が勇治の横腹に肘鉄を食らわせる。
「何するんだお前……」
「お兄ちゃん!」
目を大きく見開いて勇治を見る美園。
「お兄ちゃんも感謝してるよね、進藤君のお父さんには。ね? ね?」
そういわれて周囲を見渡してみると、懇願するような家族の視線とかち合った。
事態を把握した勇治は嘘くさい笑みを貼り付けて「ああ、スクープのためならなんでもするその根性。俺も見習わなきゃなって思ってるんだよ」と意味不明な言葉を落とす。
部屋の中になんともいえない微妙な空気が漂い始めたのを察知した栄子は、素早く話の流れを変える。
「さぁさぁ、暗い話はなしよ。結果的に元樹さんは今新しい会社で部長職として頑張ってるんだもの。結果オーライよ」
「ああ、そうだ。今の部署は若い女の子が多くて、仕事に行くのが楽しくって、ハハハ」
思わず飛び出た元樹の本音に、栄子の抑揚のない声が続く。
「ほんと、良かったわよね元樹さん。若い子っていいわよね、元気をもらえるもの。あなたが楽しそうで何よりだわ、フフフ」
「――――」
喋るたびに墓穴を掘り続ける元樹を憐れむように見つめる家族。
栄子は元樹をひと睨みするとすぐに表情を切り替え、つかさに向き直る。
「進藤君は美園のお友達だし、せっかく今日おうちに来ていただいたんだから特別に取材を受けてもいいわよ」
「本当ですか?」
つかさの目が輝いた。
「ええ本当よ」
「うわぁ、嬉しいな。栄子さん、ありがとうございます」
「まぁ、栄子さんだなんて、ホホ」
あら、可愛い子。
栄子は元樹の冷めたような視線を無視して、気分は女子高生。ちょうど美園くらいの年の頃にいろんな男の子と遊び、青春を謳歌していた時代を思い起こした。
そんな栄子の年甲斐もないはしゃぎように、ケンジとタキはあからさまに顔を顰めてズズズとお茶を啜った。
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