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バラバラの絆
18話:事の起こり
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ことの発端は3年前に遡る。
元樹の勤めていた外資系企業の不正献金問題が発覚し、ニュース番組がその報道一色になった時期があった。
その中心にいたのが元樹であり、そのスクープに一役買ったのが芸能レポーターの進藤仁だった。
「お宅の家族を取材したい」
ある日、進藤仁からそんな依頼を受けた。
当時の世良田一家は地元では有名な仲良し家族で、毎年モデルファミリー候補に選ばれるのではと話題になっていた。けれど、なかなかこれといった決め手にかけていた。
そこへ有名人からの取材依頼。これをきっかけに一気に知名度を上げ、モデルファミリー代表候補にのし上がってやろうと目論んだ一家は快く取材を受け入れた。
進藤仁を利用して自分たちに有利な記事を書かせようと企んでいたが、相手の方が一枚上手だった。
進藤仁は取材にかこつけ元樹の会社にまで入り込み、内部事情をいろいろ入手し始めた。
そしてその当時、元樹がお気に入りだったクラブのママが企業スパイであるという情報をキャッチした。
元樹の勤めていた会社は、政府関係者やライバル企業に多額の金を渡し、あらゆる機密情報を手に入れ他国へ情報提供することを生業としたスパイ企業だったのだ。
それを知らなかった元樹は、仲介役として政府要人や企業幹部たちの接待に明け暮れ、結果的にスパイの片棒を担ぐことになった。
当時、気に入っていたクラブのママを席に着かせ相手のご機嫌を取る。
そうやって信頼関係を深めた所で、あとは会社の上層部たちが商談に入る。元樹としては通常の商談だと思っていたから罪悪感などない。
けれど、実際は日本企業に不利益な情報を他国に売る土台固めをさせられていたと後で知ったのだ。
進藤仁はこともあろうに、元樹とママがホテルで密会を重ねている写真をスクープ記事として取り上げた。
見出しはこうだ。
<S企業の幹部、スパイと密会! 日本の機密情報をX国に垂れ流し>
記事の内容は衝撃的だった。
この記事が出ると同時に、上層部は元樹を切り離しにかかった。
自分たちは全く知らなかったこと、全ては部下が勝手にやったこと、元よりそういう筋書きが用意されていたようだ。長年会社のために尽くしてきた元樹は、トカゲの尻尾切りのように退職を余儀なくされた。
けれど、ただでは転ばない。元樹は会社を告発するという形で会見の場を設け、全てを包み隠さず暴露したのだ。
自社の経営実態を把握していなかったこと、クラブのママがスパイだとは知らなかったこと、何も知らなさ過ぎて自分のことを恥じていること。元樹は全国放送で深々と頭を下げた。
逃げの一手に走る重役や政府関係者らを横目に、会社から首を切られた一介の社員が誠実な対応をした。
この両者の対比が進藤仁によって再びフューチャーされ、結果的に日本中から敵視されていた元樹は、勇気ある告発者としてヒーローに祭り上げられたのだ。
元樹の勤めていた外資系企業の不正献金問題が発覚し、ニュース番組がその報道一色になった時期があった。
その中心にいたのが元樹であり、そのスクープに一役買ったのが芸能レポーターの進藤仁だった。
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そこへ有名人からの取材依頼。これをきっかけに一気に知名度を上げ、モデルファミリー代表候補にのし上がってやろうと目論んだ一家は快く取材を受け入れた。
進藤仁を利用して自分たちに有利な記事を書かせようと企んでいたが、相手の方が一枚上手だった。
進藤仁は取材にかこつけ元樹の会社にまで入り込み、内部事情をいろいろ入手し始めた。
そしてその当時、元樹がお気に入りだったクラブのママが企業スパイであるという情報をキャッチした。
元樹の勤めていた会社は、政府関係者やライバル企業に多額の金を渡し、あらゆる機密情報を手に入れ他国へ情報提供することを生業としたスパイ企業だったのだ。
それを知らなかった元樹は、仲介役として政府要人や企業幹部たちの接待に明け暮れ、結果的にスパイの片棒を担ぐことになった。
当時、気に入っていたクラブのママを席に着かせ相手のご機嫌を取る。
そうやって信頼関係を深めた所で、あとは会社の上層部たちが商談に入る。元樹としては通常の商談だと思っていたから罪悪感などない。
けれど、実際は日本企業に不利益な情報を他国に売る土台固めをさせられていたと後で知ったのだ。
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見出しはこうだ。
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記事の内容は衝撃的だった。
この記事が出ると同時に、上層部は元樹を切り離しにかかった。
自分たちは全く知らなかったこと、全ては部下が勝手にやったこと、元よりそういう筋書きが用意されていたようだ。長年会社のために尽くしてきた元樹は、トカゲの尻尾切りのように退職を余儀なくされた。
けれど、ただでは転ばない。元樹は会社を告発するという形で会見の場を設け、全てを包み隠さず暴露したのだ。
自社の経営実態を把握していなかったこと、クラブのママがスパイだとは知らなかったこと、何も知らなさ過ぎて自分のことを恥じていること。元樹は全国放送で深々と頭を下げた。
逃げの一手に走る重役や政府関係者らを横目に、会社から首を切られた一介の社員が誠実な対応をした。
この両者の対比が進藤仁によって再びフューチャーされ、結果的に日本中から敵視されていた元樹は、勇気ある告発者としてヒーローに祭り上げられたのだ。
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