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第一話
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僕の名前は矢藤夜無(やとうよむ)
この春に入学した新入生だ。
だけど今、僕は人生最大のピンチを迎えていた。
「お前、いい匂いがするな」
授業を終え、帰宅する途中のことだった。
桜並木を歩いていたら、突然後ろから男にそう言われたのだ。
長身で薄い水色の短髪と瞳をしていた。
顔立ちも整っており、いわゆるイケメンという奴だった。
「えっと……」
「俺は水瀬朔馬(みなせさくま)」
「あ、えと、ぼ、僕は矢藤夜無です……」
「そうか。よろしくな」
彼は手を差し出してきた。
ここの上級生はこんなフレンドリーな感じなのだろうか。それともこの水瀬という人自身の性格?
それか、異星人のαだから……?
握手を求められたかと思い、こちらからも手を差し伸べた次の瞬間、僕はその手ごと強引に引っ張られた。
もうキス出来る位顔を近づけられる。
「へ~、可愛い顔してんじゃん、β?……いや、Ωか」
「!?」
入学して早々、僕はΩで有ることがバレた。
これが良いことなのか悪いことなのか、この時はまだ分からなかった。
今から約百年前。
突如として異星人がこの星へ飛来してきた。
異星人達は自分達をαと名乗り、友好的な関係を築きたいと申告してきた。
しかし、一部の国による勝手な軍事行動、及び攻撃によって戦争が勃発。
ただでさえこちらは科学技術が劣っている上に責任の押し付け合い等で足並みを揃えられず、各地で敗北を重ね、呆気なくこの星は征服された。
記録では、八割の人口が戦争の犠牲になったとある。(異星人側の記録であり、正確な記録であったかどうかは不明)
その後、向こうの上層部らしき者達は完全なる殲滅ではなく占領という道を選ぶ。
これにより、異星人による統治がなされ、この星はいわゆる植民地のような扱いとなった。
αと名乗る異星人の中でも中流階級かそれ以下の者達による入植が進められる。
宇宙船に乗っていたαは存外人類と外見の大差がなかった。
あるとすれば、彼等は色素が薄い者が多いということだ。
銀髪、もしくは薄い水色や緑色の髪や瞳ばかりだ。
彼等αは戦争によって少なくなった人類と交わり、共に復興しながら数を増やしていく。
やがて、この世界には三種類の人種が存在するようになった。
主に純血、もしくはそれに近い人種α。
完全、もしくはほぼこの星の人種の血が流れているβ。
そして、両方の混血であり、男の身体のまま妊娠が可能であるΩ。
一般的にαはエリートであり外見で区別しやすい。
だが、Ωは身体の特徴がどちら寄りになるかはほぼランダムである。
見た目以外としてはαを引き付けるフェロモンを発する、とのことである。
加えて男の身体で妊娠可能であることからαに狙われるが、見初められればエリートの番(つがい)になれその後の人生はαとともに安泰であるとされる。
なのでΩは積極的にαの番になりたいがため、フェロモンを分泌する薬を過剰に飲んでしまう者もいて問題となっている。
加えて、一般人であるβがΩのフリをするために投薬をするが、精密な検査をすればバレてしまう。
遺伝子レベルで誤魔化すことは不可能なのだ。
そんな状況の中、矢藤夜無はΩであるにも関わらずあまりフェロモンが分泌されない体質であった。
加えて、彼自身αに目を付けられたくないと考えていた。
なぜなら、過去に起きたとある事件のせいでαに対してトラウマを抱えてしまったからだ。
「お前、Ωだろ? 匂いで分かるんだよ」
「っ!?」
「でも、他のΩと違って匂いが薄いな、まさかお前、Ωのフリしたβか?」
「え、あ、は、はい、そう、です」
僕は手を放してもらいたいが為に嘘をついた。
普通ならΩのフリをしたβは絶対に自分からβであることは言わない。
もしバレれば嘘つきとしてそのコミュニティ全体から白い目で見られる。
だが、それでも良かった。
また、あの日みたくαに酷いことをされるくらいなら……。
そう考えている間にも水瀬と名乗ったαは疑いの目を向けてくる。
「あ、あの、手を……」
「……やっぱり、Ωだろ、お前」
「!? ち、違います! ぼ、僕は……」
「なんで嘘つくんだ?」
下校している他の生徒が見てくる。
早くここから離れたい。
すると、水瀬君の後ろから別のαが近づき肩に手を添える。
「朔馬、何してるの?」
「ん? あぁ、ちょっとコイツを口説こうと思ってさ……」
「お前なぁ……」
「だって、こいつ可愛いじゃん、Ωのクセにβのフリなんかして」
もう一人の人物、薄い緑色の髪に切れ長の目の男は溜息を吐く。
「朔馬、あんまりそういうことはしない方が良い」
水瀬君を鋭い目付きで睨んでいる。
僕がそんな目で見られたら何も言えなくなりそうな程怖い。
だが、当の本人は軽く受け流し、僕の手を放した。
すると、その人物が僕へ近づく。
「この馬鹿が迷惑を掛けたな、俺は水無月碧聿(みなずきそういち)」
「ぼ、僕は矢藤夜無、です」
「ああ、よろしく」
彼は手を差し伸べてきた。
どうしようか悩んでると、水無月君は不思議そうに見つめてくる。
「?……握手は苦手か?」
「あ、いえ……」
「安心していい、俺はこの馬鹿と違って節操なしではない」
「は、はい、その、よろしくお願いします、先輩」
「……ん?」
水無月君は僕の言葉に違和感を感じたようだった。
僕の態度が不味かったのかな?
だが、水瀬君が笑って吹き出しそうなのを堪えている。
それに水無月君が気付く。
「おい馬鹿、なにが可笑しい」
「俺ら先輩だって言うから、クク、同じ学年だよ」
「ええっ!? あ、二人とも、僕と同じ?」
「そうだよ、入学式の時俺と目が合ったろ?」
そう言われても……。
確かにαは髪の色素が薄いから大勢集まった場所でも分かる。
でも、だからと言って一人一人顔を覚えているわけではない。
だが、水瀬君は僕を見ていたようだ。
「なんか可愛い奴がいるなって思ってたんだよ、で、さっき声を掛けたんだが……」
「この色情魔が、場所を弁えろ」
まるで漫才をするような二人。
大抵のαはどちらかといえば水瀬君のように奔放な人が多く、水無月君のような自他共に厳しそうな人は珍しい。
「というわけで、あ~……矢藤って言ったか? この後俺の家に来ないか?」
「おい、いい加減にしろよ」
水無月君が殺気を込めて水瀬君を睨む。
流石に雰囲気を感じ取ったのか、水瀬君は引き下がる。
「悪かったよ、そんな目で睨むな……つーことで、また明日な、矢藤」
「う、うん……」
「矢藤君、もしこの馬鹿になにかされたらすぐに俺に言ってくれ、殴って痛みで覚えさせるから」
「い、いや、そこまでしなくても……」
水無月君が物騒なことを言い出すので思わず苦笑いを浮かべてしまう。
二人はそのまま歩いて行ってしまった。
僕はなんだか疲れてしまったのですぐに帰路につく。
正直、あまり明るい人と会話するのは得意じゃない。
出来れば、今後の学校生活でもあまり近づかないようにしようと思った。
矢藤と別れた二人はそろって帰宅する。
その白い外壁の家は一軒家だが、かなり大きい。
豪邸、という程ではないが、二人で暮らすには大きすぎるものだ。
αである二人が裕福層の人物であるという証拠でもある。
先に水無月が扉を開けて入ると、水瀬が後ろから突き飛ばした。
「うわっ!? お前!?」
四つん這いになるように倒れる。
すかさず水瀬が発情した犬のように後ろから抱きついた。
「さっきの何だよ? 俺を殴る? 恋人である俺を?」
「そ、それは、お前が節操がないからだろ……」
「ハッ……こんな風にか?」
水瀬は右手で水無月の胸をまさぐりながら、左手を股間へ伸ばす。
「な、止めろ!! こんな時間に盛りやがって!!」
「仕方ねえだろ、さっきお預けを食らっちまったからな、興奮してしょうがねえんだよ」
水瀬が優しく撫でると、水無月の肉棒が大きくなりその存在感を主張する。
「く……ぅぅ……」
「ほんと、お前は口では強気なのにこっちは弱いよな」
「そ、それは……」
「今日はどうするんだ? 何回して欲しい?」
「……好きにすればいいだろ」
「ったく、素直じゃねえな、ま、そこがいいんだがな」
水無月のベルトを手慣れた様子で外し、シャツのボタンも一つずつ外していく。
やがて上半身の前がはだけさせると、今度は仰向けに寝かせた。
「お前は本当に綺麗な身体してるよな」
「キスマークは着けるなよ、消えるまで何度苦労したと思ってる」
「いいじゃん、緊張感があって」
「あ、コラッ、んん」
胸板にキスをすると、強く吸うことでまるでマーキングするかのようにキスマークを付ける。
そんなことをする水瀬に、涙目になりながら眉間にシワを寄せた。
「止めろって、言ったのに……」
「悪い、お前の泣き顔が見たかったからつい」
「ばか……」
「可愛いぜ、その顔」
そう言って唇を重ねると舌を差し込み絡め合う。
唾液が混じり合い、混ざり合ったそれが水瀬の口から零れ落ちる。
水無月の頬を伝うそれを指で拭き取り、舐めとって得意気に口角を上げる。
そんな彼に、お返しとばかりに強引に抱きついてキスをし返す。
互いに本能に火が着くと、まるで獣のように求め合った。
最終的には水無月が受け入れ、体内に何度も精を出された。
それこそ犬の交尾のように四つん這いの状態で後ろから何度も何度も突かれ揺さぶられる。
下校途中の時のような凛々しい表情など、もうどこにもない。
あるのは、ただ愛しい男のモノを受け入れ喘ぐだけの男の姿だけだった。
行為を終えた二人は玄関で乱れた格好のままだらしなく寝ている。
ただ、水無月を愛おしそうに後ろから抱いている水瀬はその頭を撫でながらとある人物のことを思い浮かべていた。
(矢藤……か、名前は……まあいいか、あのΩ、結構良い匂いしてたな)
背中を預けて安心しきって寝ている水無月の首に口づけをしながら、矢藤を抱く想像をする。
あの弱気なΩはどういった声で鳴くのか。
一人想像しながら不敵な笑みを浮かべる水瀬だった。
この春に入学した新入生だ。
だけど今、僕は人生最大のピンチを迎えていた。
「お前、いい匂いがするな」
授業を終え、帰宅する途中のことだった。
桜並木を歩いていたら、突然後ろから男にそう言われたのだ。
長身で薄い水色の短髪と瞳をしていた。
顔立ちも整っており、いわゆるイケメンという奴だった。
「えっと……」
「俺は水瀬朔馬(みなせさくま)」
「あ、えと、ぼ、僕は矢藤夜無です……」
「そうか。よろしくな」
彼は手を差し出してきた。
ここの上級生はこんなフレンドリーな感じなのだろうか。それともこの水瀬という人自身の性格?
それか、異星人のαだから……?
握手を求められたかと思い、こちらからも手を差し伸べた次の瞬間、僕はその手ごと強引に引っ張られた。
もうキス出来る位顔を近づけられる。
「へ~、可愛い顔してんじゃん、β?……いや、Ωか」
「!?」
入学して早々、僕はΩで有ることがバレた。
これが良いことなのか悪いことなのか、この時はまだ分からなかった。
今から約百年前。
突如として異星人がこの星へ飛来してきた。
異星人達は自分達をαと名乗り、友好的な関係を築きたいと申告してきた。
しかし、一部の国による勝手な軍事行動、及び攻撃によって戦争が勃発。
ただでさえこちらは科学技術が劣っている上に責任の押し付け合い等で足並みを揃えられず、各地で敗北を重ね、呆気なくこの星は征服された。
記録では、八割の人口が戦争の犠牲になったとある。(異星人側の記録であり、正確な記録であったかどうかは不明)
その後、向こうの上層部らしき者達は完全なる殲滅ではなく占領という道を選ぶ。
これにより、異星人による統治がなされ、この星はいわゆる植民地のような扱いとなった。
αと名乗る異星人の中でも中流階級かそれ以下の者達による入植が進められる。
宇宙船に乗っていたαは存外人類と外見の大差がなかった。
あるとすれば、彼等は色素が薄い者が多いということだ。
銀髪、もしくは薄い水色や緑色の髪や瞳ばかりだ。
彼等αは戦争によって少なくなった人類と交わり、共に復興しながら数を増やしていく。
やがて、この世界には三種類の人種が存在するようになった。
主に純血、もしくはそれに近い人種α。
完全、もしくはほぼこの星の人種の血が流れているβ。
そして、両方の混血であり、男の身体のまま妊娠が可能であるΩ。
一般的にαはエリートであり外見で区別しやすい。
だが、Ωは身体の特徴がどちら寄りになるかはほぼランダムである。
見た目以外としてはαを引き付けるフェロモンを発する、とのことである。
加えて男の身体で妊娠可能であることからαに狙われるが、見初められればエリートの番(つがい)になれその後の人生はαとともに安泰であるとされる。
なのでΩは積極的にαの番になりたいがため、フェロモンを分泌する薬を過剰に飲んでしまう者もいて問題となっている。
加えて、一般人であるβがΩのフリをするために投薬をするが、精密な検査をすればバレてしまう。
遺伝子レベルで誤魔化すことは不可能なのだ。
そんな状況の中、矢藤夜無はΩであるにも関わらずあまりフェロモンが分泌されない体質であった。
加えて、彼自身αに目を付けられたくないと考えていた。
なぜなら、過去に起きたとある事件のせいでαに対してトラウマを抱えてしまったからだ。
「お前、Ωだろ? 匂いで分かるんだよ」
「っ!?」
「でも、他のΩと違って匂いが薄いな、まさかお前、Ωのフリしたβか?」
「え、あ、は、はい、そう、です」
僕は手を放してもらいたいが為に嘘をついた。
普通ならΩのフリをしたβは絶対に自分からβであることは言わない。
もしバレれば嘘つきとしてそのコミュニティ全体から白い目で見られる。
だが、それでも良かった。
また、あの日みたくαに酷いことをされるくらいなら……。
そう考えている間にも水瀬と名乗ったαは疑いの目を向けてくる。
「あ、あの、手を……」
「……やっぱり、Ωだろ、お前」
「!? ち、違います! ぼ、僕は……」
「なんで嘘つくんだ?」
下校している他の生徒が見てくる。
早くここから離れたい。
すると、水瀬君の後ろから別のαが近づき肩に手を添える。
「朔馬、何してるの?」
「ん? あぁ、ちょっとコイツを口説こうと思ってさ……」
「お前なぁ……」
「だって、こいつ可愛いじゃん、Ωのクセにβのフリなんかして」
もう一人の人物、薄い緑色の髪に切れ長の目の男は溜息を吐く。
「朔馬、あんまりそういうことはしない方が良い」
水瀬君を鋭い目付きで睨んでいる。
僕がそんな目で見られたら何も言えなくなりそうな程怖い。
だが、当の本人は軽く受け流し、僕の手を放した。
すると、その人物が僕へ近づく。
「この馬鹿が迷惑を掛けたな、俺は水無月碧聿(みなずきそういち)」
「ぼ、僕は矢藤夜無、です」
「ああ、よろしく」
彼は手を差し伸べてきた。
どうしようか悩んでると、水無月君は不思議そうに見つめてくる。
「?……握手は苦手か?」
「あ、いえ……」
「安心していい、俺はこの馬鹿と違って節操なしではない」
「は、はい、その、よろしくお願いします、先輩」
「……ん?」
水無月君は僕の言葉に違和感を感じたようだった。
僕の態度が不味かったのかな?
だが、水瀬君が笑って吹き出しそうなのを堪えている。
それに水無月君が気付く。
「おい馬鹿、なにが可笑しい」
「俺ら先輩だって言うから、クク、同じ学年だよ」
「ええっ!? あ、二人とも、僕と同じ?」
「そうだよ、入学式の時俺と目が合ったろ?」
そう言われても……。
確かにαは髪の色素が薄いから大勢集まった場所でも分かる。
でも、だからと言って一人一人顔を覚えているわけではない。
だが、水瀬君は僕を見ていたようだ。
「なんか可愛い奴がいるなって思ってたんだよ、で、さっき声を掛けたんだが……」
「この色情魔が、場所を弁えろ」
まるで漫才をするような二人。
大抵のαはどちらかといえば水瀬君のように奔放な人が多く、水無月君のような自他共に厳しそうな人は珍しい。
「というわけで、あ~……矢藤って言ったか? この後俺の家に来ないか?」
「おい、いい加減にしろよ」
水無月君が殺気を込めて水瀬君を睨む。
流石に雰囲気を感じ取ったのか、水瀬君は引き下がる。
「悪かったよ、そんな目で睨むな……つーことで、また明日な、矢藤」
「う、うん……」
「矢藤君、もしこの馬鹿になにかされたらすぐに俺に言ってくれ、殴って痛みで覚えさせるから」
「い、いや、そこまでしなくても……」
水無月君が物騒なことを言い出すので思わず苦笑いを浮かべてしまう。
二人はそのまま歩いて行ってしまった。
僕はなんだか疲れてしまったのですぐに帰路につく。
正直、あまり明るい人と会話するのは得意じゃない。
出来れば、今後の学校生活でもあまり近づかないようにしようと思った。
矢藤と別れた二人はそろって帰宅する。
その白い外壁の家は一軒家だが、かなり大きい。
豪邸、という程ではないが、二人で暮らすには大きすぎるものだ。
αである二人が裕福層の人物であるという証拠でもある。
先に水無月が扉を開けて入ると、水瀬が後ろから突き飛ばした。
「うわっ!? お前!?」
四つん這いになるように倒れる。
すかさず水瀬が発情した犬のように後ろから抱きついた。
「さっきの何だよ? 俺を殴る? 恋人である俺を?」
「そ、それは、お前が節操がないからだろ……」
「ハッ……こんな風にか?」
水瀬は右手で水無月の胸をまさぐりながら、左手を股間へ伸ばす。
「な、止めろ!! こんな時間に盛りやがって!!」
「仕方ねえだろ、さっきお預けを食らっちまったからな、興奮してしょうがねえんだよ」
水瀬が優しく撫でると、水無月の肉棒が大きくなりその存在感を主張する。
「く……ぅぅ……」
「ほんと、お前は口では強気なのにこっちは弱いよな」
「そ、それは……」
「今日はどうするんだ? 何回して欲しい?」
「……好きにすればいいだろ」
「ったく、素直じゃねえな、ま、そこがいいんだがな」
水無月のベルトを手慣れた様子で外し、シャツのボタンも一つずつ外していく。
やがて上半身の前がはだけさせると、今度は仰向けに寝かせた。
「お前は本当に綺麗な身体してるよな」
「キスマークは着けるなよ、消えるまで何度苦労したと思ってる」
「いいじゃん、緊張感があって」
「あ、コラッ、んん」
胸板にキスをすると、強く吸うことでまるでマーキングするかのようにキスマークを付ける。
そんなことをする水瀬に、涙目になりながら眉間にシワを寄せた。
「止めろって、言ったのに……」
「悪い、お前の泣き顔が見たかったからつい」
「ばか……」
「可愛いぜ、その顔」
そう言って唇を重ねると舌を差し込み絡め合う。
唾液が混じり合い、混ざり合ったそれが水瀬の口から零れ落ちる。
水無月の頬を伝うそれを指で拭き取り、舐めとって得意気に口角を上げる。
そんな彼に、お返しとばかりに強引に抱きついてキスをし返す。
互いに本能に火が着くと、まるで獣のように求め合った。
最終的には水無月が受け入れ、体内に何度も精を出された。
それこそ犬の交尾のように四つん這いの状態で後ろから何度も何度も突かれ揺さぶられる。
下校途中の時のような凛々しい表情など、もうどこにもない。
あるのは、ただ愛しい男のモノを受け入れ喘ぐだけの男の姿だけだった。
行為を終えた二人は玄関で乱れた格好のままだらしなく寝ている。
ただ、水無月を愛おしそうに後ろから抱いている水瀬はその頭を撫でながらとある人物のことを思い浮かべていた。
(矢藤……か、名前は……まあいいか、あのΩ、結構良い匂いしてたな)
背中を預けて安心しきって寝ている水無月の首に口づけをしながら、矢藤を抱く想像をする。
あの弱気なΩはどういった声で鳴くのか。
一人想像しながら不敵な笑みを浮かべる水瀬だった。
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