創造した物はこの世に無い物だった

ゴシック

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第2章 紡がれる希望

第8話 Bullet like snow

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「さてと……続きを始めようか」

 先程までユウキがいた場所には、半透明な回転式結晶銃を両手に携えた少女が立っていた。

「……」

 少女の言葉に対して黄金色こがねいろの髪をした女性は言葉を返すは無かった。

 女性はゆっくりと左腕を少女に向けると、停止していた六対の銃身が少女に銃口を向けたまま、再び女性の周囲を回るように回転し始めた。

「久し振りに外出たけど……外は戦闘続きだね」

 少女は灰色の髪を風に靡かせ、青白磁せいはくじの瞳で回転速度を上げる六対の銃身を見つめていた。

「ユウキの心は不安で一杯だった」

 少女は両手に携えていた結晶銃スタリエットの内、左手の結晶銃を消滅させると、右手の結晶銃を両手で握り締めた。

「僕はずっと……見ているだけの存在だった」

 少女が瞳を閉じ、ゆっくり銃口を女性に向けた瞬間に女性から六本の光線が同時に放たれた。

 回転している状態から放たれた光線は渦巻ながら近づき、一本の巨大な光線へと変化し少女へと接近した。

「……残された微かな想いを受け継ぐまでは」

 少女を軽々と飲み込む程、広範囲に巨大化した光線が接近する中、少女はゆっくりと目を開けた。

雪の弾丸スノウ・バレッタ

 銃口から放たれた一発の弾丸は、雪の結晶を纏いながら女性の放った光線に接触すると、接触箇所から徐々に結晶化していき、弾丸はそのまま結晶化した光線と女性を撃ち抜いた。

「……!」

 撃ち抜かれ結晶化した腹部を抑えながら、浮遊していた女性はゆっくりと降下すると地面に膝を付いた。

「僕も、ただ外の景色を見ていた訳じゃないよ」

 そう言うと少女は、膝を付き結晶化していく腹部に視線を向けている女性に歩みを進めた。

「ユウトの覚悟も……ユウキの誓いも……僕には眩し過ぎる程強い意志だった」

 消滅させた左手の結晶銃を創造した少女は言葉を呟きながらも女性との距離を詰めていった。

「我は……勝たねばならない!」

 結晶化した状態で立ち上がった女性は瞳の色が青藍せいらんから紅蓮へと変色し、その後青藍せいらんに戻る変化を繰り返し続けていた。

「がああぁぁあ!!」

 甲高い悲鳴を上げながら六対の銃身を浮遊させようとする女性だったが、互いにぶつかり合う様に浮遊した銃身の内上下に浮遊していた四対の銃身は〝黒く変色〟した後に爆散して消滅していた。

「死……にたく……ない!」

 小刻みに身体を震わせ、立っている事もやっとな程に結晶化した状態の女性は左手を少女にゆっくりと向けると女性の周囲に紅蓮の雷が纏わり始めた。

 浮遊していた二対の銃身が女性の正面で繋がると、女性の姿が視認出来なくなる程の雷光が銃口に蓄えられ始めた。

「……ユウトが強くなれば、僕も同じように強くなる」

 両手に携えた結晶銃を胸の前で交差させた。

「ユキから受け継いだ想い……力……全ては、僕の中で生き続ける」

 女性が蓄えていた雷光は、再び少女を軽々と呑み込んでしまう程巨大な光線となって放たれた。

「ユキの想いと共に、僕は最後まで見届ける……それが……この〝名前〟と共に託された最後の約束だから」

 交差させていた腕を同時に広げ、勢いをつけたまま弾丸を放った。

増殖する結晶弾グロウス・スタレット

 勢いに逆らう事の無い特殊な弾丸は、放物線を描き少女の前方でぶつかり合うと果物のように裂け、分裂と同時に元の形状へと戻り増殖した。

「これが……僕の使命だ!」

(創造する物は……)

 少女の背後に多数の雪の結晶が舞うと、一斉に雪の結晶が砕け散った。

 すると、雪の結晶だった物は先程少女が放った弾丸へと変化し、分裂と同時に形状を戻し女性に向かって無数の弾丸となって放たれた。

「主……様」

 数が圧倒的に勝っていた弾丸は、光線の結晶化と同時に女性の身体を数え切れない程の弾丸が貫き、瞬時に身体全体を結晶化させると跡形もなく砕け散った。

「名前……まだ伝えていなかったね」

 消えゆく結晶に向けて背を向けた少女は、右手を胸に当てて俯いた。

「僕の名前は〝ユキ〟……ある人が大切な人から名付けられ……その想いと共に受け継いだ……僕の大切な名前だ」

 そう言い残したユキは、入れ替わる直後と同様に身体全体を結晶によって包み込んだ。

 単結晶したユキは浮遊した後、バキッという音と共に粉々に弾け飛び、中からユウキが姿を現した。

「……ユキ」

 呆然と立ち尽くしていたユウキだったが、遠くから近づいて来たユウ達の声で我に帰ると、再びレンの捜索を続行した。

「ん?」

 倒壊した建物の側を浮遊している監視カメラを視認したユウキが近づき、カメラが映しているであろう場所を確認したが、そこには赤黒く焼け焦げた地面しか残されてはいなかった。

 (何でこんな所を映し続けているんだ?)

 そんな中、三人の通信機に通信が入った。

「救援感謝します……私は——」

 初めて聞く声の女性は、別の地点の救援要請を依頼する為に通信したと説明した。

「——日本の主力には世話になりっぱなしだが、頼む……〝俺〟に力を貸して欲しい」

「分かった……任せろ」

 細かな説明を終えた女性から伝えられた言葉に返答したユウキは、創造した転移端末を二人に渡すと各々が指定された地点に向けて転移して行った。

―*―*―*―*―

 アメリカ中央拠点クレイドル支援部隊本部

「やっぱり凄いな……日本の主力」

 監視カメラでユカリ達の戦闘を傍観していた女性は、想像以上の景色に高揚していた。

「任せっぱなしは御免だぜ?大国の力を見せてやろうぜ!ケフィ」

 女性の横で同じ様に戦闘を傍観していた男性は、監視カメラの位置情報と主力の現在位置を確認しながら総長席に座っているであろう女性に声を掛けた。

「……ケフィ?」

 女性から返答がない事に疑問を感じた男性は、視線を画面に向けたまま再度声を掛けた。

「ケフィも忙しいんでしょ……もしくは夢の中」

 男性に向けて声を掛けた女性は、自身が傍観していたユカリ達の画面を切り替えるとクライフが戦闘中の障壁周辺を映す監視カメラを確認し始めた。

「夢の中は有り得ないな。ケフィは作戦の立案時と国の危機的状況には、一番頼りになる総長だからな」

 男性が手を止めて総長席に身体を向けると、ケフィの姿が見当たらなかった。

「あれ?……ケフィがいない」

 違和感を感じた男性が総長席に歩み寄り確認したが、ケフィの姿は確認出来なかった。

「一体どこに……ん?」

 男性が視線を向けた先には、敵と味方の現在位置が映し出された画面と〝ある女性〟の入隊当時の写真と笑顔で映る二人の女性の写真だった。

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