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第1章 光の導き手
第49話 導く者
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パキィィィィン
お互いの刃が交差し、先に砕けたのはユウトの結晶刀であった。
「くっ!」
(レンの創造は完璧だった……くそっ!まだ駄目なのか……まだ俺は、ユカリを超えられないのか)
同種の属性が対立した場合、勝敗は互いの持つ属性量・属性力によって決まる。
しかし互いの属性が同種で、尚且つ力が均一の場合は、主自身が持つ力が勝敗を決める事になる。
(この空間さえ撃ち破る事が出来れば)
刀身が砕けてしまった結晶刀を投げ捨てたユウトは再び後方へと飛び退き、ユカリから距離を取った。
「どうしましたユウト……追撃は無しですか?」
左目付近に走った亀裂が徐々に広がっているにも関わらず、ユカリは一切表情を変える事無くユウトに向けて結晶刀を向けた。
(時間限界が迫っている……でも、手を抜いた決着なんて赦されない。それが……私達の選んだケジメなのだから)
ユカリの意識は目の前に立つ、ユウトのみを捉えていた。
そんな時、周辺に意識を向けていたユウトはユカリが創り出した凍華零域の違和感に気付いた。
(この領域……所々亀裂が入って空間が出来ている。凍華零域って奴の効果が弱まっている今なら属性を使えるかもしれない……)
ユウトは右拳を握り締め、ユカリへと向けた。
「ユカリ。もう終わりにしよう……この戦いに、俺が終止符を打つ!」
ユウトは自身の持つ属性全てを込め、右腕に結晶拳を創り出した。
「私の凍華零域が弱まっている事に気が付くなんて……流石ですねユウト」
そう言うとユカリは、凍華零域のみを解除した。
領域開放を維持している為、瞳は金色のままだったが、二人の周囲を覆っていた障壁や床に広がっていた結晶は粉々に砕け散った。
(ユウトの創造物は、結晶拳と……あれは?)
ユカリが視認した二つ目の創造物は〝高速回転させた結晶爆弾〟だった。
ユウトから少し離れた場所に創り出された球体は、ユウトの胸下程の位置で横方向に高速回転した状態で浮遊していた。
「行くぞユカリ……俺が現在出せる全てを込めて、お前を超えて見せるっ!」
ユウトは、結晶拳を回転する結晶爆弾目掛けて加速させた。
(上手く行くか分からないが……ぶっつけ本番っ!)
ユウトは高速回転する結晶爆弾を、加速状態で殴り付けた。
ユウトが結晶爆弾を殴った瞬間、炎の核を覆っていた結晶が砕け散り、中に含まれていた爆炎はユウトの右腕にネジ巻くように纏わり付いた。
「成功したっ!……後は、そのまま……いっちまえっ!!」
ユウトは結晶拳を更に加速させ、ユカリとの距離を詰め始めた。
「ユウト。私に貴方の攻撃は届かないと言った筈です……守結の盾!」
そう口にしたユカリの正面に、巨大な結晶の盾が創り出された。
(予想通り創り出したか……守結の盾。その盾を貫いて、お前を超えるっ!)
「くらえっ!」
『氷結爆撃』
小さな爆発を繰り返している炎を纏わせた結晶拳を、守結の盾目掛けて全力で放った。
両者がぶつかり合った瞬間、赤い閃光が放たれると同時に闘技場全体に地鳴りを轟かせながら甲高い音が響き渡り、熱と氷によって生み出された白い蒸気と黒い爆煙が広がった。
(くそっ!なんて硬さだ。だが……この盾を打ち破れなければ、俺はユカリを超える事は出来ない)
「ユウト……何故そこまで、私を超える必要があるんですか。……ユウの為ですか?それとも、最強と呼ばれる事へと執着ですか?」
守結の盾の向こう側からユカリの声が聞こえ、ユウトはゆっくりと瞼を閉じた。
「ユウだけじゃない……闇から光へと転生した人は沢山いるんだ。争いの無い平和な世界……俺は、そんなお前の理想を信じて歩んで来たんだ。お前自身の理想を貫く為に、俺は戦っている」
吹き荒れる白と黒の煙によって、二人の姿を視認する事が出来ない現状に、光の人々はざわめいていたが、障壁内にいる主力達は二人の戦いを静かに見守っていた。
「それに……俺が超えなきゃ意味が無いんだっ!お前を超えて、お前よりも前へ……いつまでも……大切な人に守られる側でたまるかっ!!」
再び瞼を開けたユウトの左目だけがユカリと同じ様に金色に輝き、右腕にネジ巻く様に纏われた紅蓮の炎は、ユウトの想いに呼応する様に荒々しく燃え上がり、拳の威力を増幅させ続けた。
ピキッ
力を増幅させ続けたユウトの強い想いは、決して砕ける事の無かった守結の盾の表面に大きな亀裂を走らせた。
(……守結の盾が砕ける。この爆発的な威力の増加、やはり貴方も……)
「……ふふ」
砕けないと思っていた守結の盾に亀裂が入っても尚、表情を変える事の無かったユカリであったが、盾一枚隔てた先にいるユウトの事を想い頬を緩めた。
(貴方の想いは、こんなにも大きく強固な物だったんですね)
ユカリは右手で守結の盾を創造し続けたまま、左手で自身の近くに走った亀裂をなぞり、ユウトの成長を心の中で喜んでいた。
(やっぱり貴方は、私にとって……いえ、私達にとって希望となる人でしたね)
壊れゆく守結の盾を前に、ユカリの金色の瞳からは一筋の涙が零れ落ちた。
「優人……私は、私の事を誰よりも信じて向き合ってくれる……そんな貴方が……好きです」
守結の盾と蒸気によって認識する事が出来ないユウトに向けて微笑み、口にした独り言の様な小さな告白は、衝撃音に掻き消えていった。
そして守結の盾に走った亀裂は一気に広がり、甲高い音を立てて砕け散った。
砕け散った際に生み出された衝撃波は、闘技場を覆っていた障壁へとぶつかり徐々に終息した。
二人の光によるぶつかり合いは、闘技場を覆っていた障壁が消えた事によって、人々に終結を告げた。
お互いの刃が交差し、先に砕けたのはユウトの結晶刀であった。
「くっ!」
(レンの創造は完璧だった……くそっ!まだ駄目なのか……まだ俺は、ユカリを超えられないのか)
同種の属性が対立した場合、勝敗は互いの持つ属性量・属性力によって決まる。
しかし互いの属性が同種で、尚且つ力が均一の場合は、主自身が持つ力が勝敗を決める事になる。
(この空間さえ撃ち破る事が出来れば)
刀身が砕けてしまった結晶刀を投げ捨てたユウトは再び後方へと飛び退き、ユカリから距離を取った。
「どうしましたユウト……追撃は無しですか?」
左目付近に走った亀裂が徐々に広がっているにも関わらず、ユカリは一切表情を変える事無くユウトに向けて結晶刀を向けた。
(時間限界が迫っている……でも、手を抜いた決着なんて赦されない。それが……私達の選んだケジメなのだから)
ユカリの意識は目の前に立つ、ユウトのみを捉えていた。
そんな時、周辺に意識を向けていたユウトはユカリが創り出した凍華零域の違和感に気付いた。
(この領域……所々亀裂が入って空間が出来ている。凍華零域って奴の効果が弱まっている今なら属性を使えるかもしれない……)
ユウトは右拳を握り締め、ユカリへと向けた。
「ユカリ。もう終わりにしよう……この戦いに、俺が終止符を打つ!」
ユウトは自身の持つ属性全てを込め、右腕に結晶拳を創り出した。
「私の凍華零域が弱まっている事に気が付くなんて……流石ですねユウト」
そう言うとユカリは、凍華零域のみを解除した。
領域開放を維持している為、瞳は金色のままだったが、二人の周囲を覆っていた障壁や床に広がっていた結晶は粉々に砕け散った。
(ユウトの創造物は、結晶拳と……あれは?)
ユカリが視認した二つ目の創造物は〝高速回転させた結晶爆弾〟だった。
ユウトから少し離れた場所に創り出された球体は、ユウトの胸下程の位置で横方向に高速回転した状態で浮遊していた。
「行くぞユカリ……俺が現在出せる全てを込めて、お前を超えて見せるっ!」
ユウトは、結晶拳を回転する結晶爆弾目掛けて加速させた。
(上手く行くか分からないが……ぶっつけ本番っ!)
ユウトは高速回転する結晶爆弾を、加速状態で殴り付けた。
ユウトが結晶爆弾を殴った瞬間、炎の核を覆っていた結晶が砕け散り、中に含まれていた爆炎はユウトの右腕にネジ巻くように纏わり付いた。
「成功したっ!……後は、そのまま……いっちまえっ!!」
ユウトは結晶拳を更に加速させ、ユカリとの距離を詰め始めた。
「ユウト。私に貴方の攻撃は届かないと言った筈です……守結の盾!」
そう口にしたユカリの正面に、巨大な結晶の盾が創り出された。
(予想通り創り出したか……守結の盾。その盾を貫いて、お前を超えるっ!)
「くらえっ!」
『氷結爆撃』
小さな爆発を繰り返している炎を纏わせた結晶拳を、守結の盾目掛けて全力で放った。
両者がぶつかり合った瞬間、赤い閃光が放たれると同時に闘技場全体に地鳴りを轟かせながら甲高い音が響き渡り、熱と氷によって生み出された白い蒸気と黒い爆煙が広がった。
(くそっ!なんて硬さだ。だが……この盾を打ち破れなければ、俺はユカリを超える事は出来ない)
「ユウト……何故そこまで、私を超える必要があるんですか。……ユウの為ですか?それとも、最強と呼ばれる事へと執着ですか?」
守結の盾の向こう側からユカリの声が聞こえ、ユウトはゆっくりと瞼を閉じた。
「ユウだけじゃない……闇から光へと転生した人は沢山いるんだ。争いの無い平和な世界……俺は、そんなお前の理想を信じて歩んで来たんだ。お前自身の理想を貫く為に、俺は戦っている」
吹き荒れる白と黒の煙によって、二人の姿を視認する事が出来ない現状に、光の人々はざわめいていたが、障壁内にいる主力達は二人の戦いを静かに見守っていた。
「それに……俺が超えなきゃ意味が無いんだっ!お前を超えて、お前よりも前へ……いつまでも……大切な人に守られる側でたまるかっ!!」
再び瞼を開けたユウトの左目だけがユカリと同じ様に金色に輝き、右腕にネジ巻く様に纏われた紅蓮の炎は、ユウトの想いに呼応する様に荒々しく燃え上がり、拳の威力を増幅させ続けた。
ピキッ
力を増幅させ続けたユウトの強い想いは、決して砕ける事の無かった守結の盾の表面に大きな亀裂を走らせた。
(……守結の盾が砕ける。この爆発的な威力の増加、やはり貴方も……)
「……ふふ」
砕けないと思っていた守結の盾に亀裂が入っても尚、表情を変える事の無かったユカリであったが、盾一枚隔てた先にいるユウトの事を想い頬を緩めた。
(貴方の想いは、こんなにも大きく強固な物だったんですね)
ユカリは右手で守結の盾を創造し続けたまま、左手で自身の近くに走った亀裂をなぞり、ユウトの成長を心の中で喜んでいた。
(やっぱり貴方は、私にとって……いえ、私達にとって希望となる人でしたね)
壊れゆく守結の盾を前に、ユカリの金色の瞳からは一筋の涙が零れ落ちた。
「優人……私は、私の事を誰よりも信じて向き合ってくれる……そんな貴方が……好きです」
守結の盾と蒸気によって認識する事が出来ないユウトに向けて微笑み、口にした独り言の様な小さな告白は、衝撃音に掻き消えていった。
そして守結の盾に走った亀裂は一気に広がり、甲高い音を立てて砕け散った。
砕け散った際に生み出された衝撃波は、闘技場を覆っていた障壁へとぶつかり徐々に終息した。
二人の光によるぶつかり合いは、闘技場を覆っていた障壁が消えた事によって、人々に終結を告げた。
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