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第1章 光の導き手
第33話 破局する心
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※現在のユウトは女の状態です。
「……そうか」
冷たく投げ掛けられた言葉に表情を曇らせたユウトは、俯きながらユカリに背を向けた。
「お前なら……解ってくれると思っていたんだけどな」
再びユカリに向けられたユウトの瞳からは、一筋の涙を流していた。
「……ユウト?」
ユカリは依然として繋がりを感じていない筈の、少女に向けて手を伸ばした。
「じゃあな。ユカリ」
短く別れを告げたユウトは、ユカリに背を向け結晶の翼を創り出し空高く飛び立つと、行き先も定めず東の方角へと飛び去って行った。
「本当に……彼女は偽物だったんでしょうか?……ユウト」
「当たり前だろ」
(ようかく厄介な奴がいなくなったか)
ユウト?は、少女の飛び去った方角を見て不敵な笑みを漏らした。
「さて、俺は自分の仕事をするかな!」
ユウト?は身を翻すと、ルミナ内に戻る扉へと歩き始めた。
「何かやる事があるんですか?」
「……すぐに分かるさ」
ヒナに問われたユウト?は、ピタリと立ち止まり一言だけ言い残し、ルミナ内へと戻っていった。
―*―*―*―*―
南米大陸 上空
山々が連なる広大な大地を見下ろしながら結晶の翼を動かしていたユウトは、先の見えない未来について考えていた。
(俺は、ユカリの為に存在していた……なら、今の俺の存在意義はなんなんだ?)
『双対の災禍』
思い悩んでいたユウトに向けて、渦を巻いた二種の火炎が飛んで来た。
「っ!あぶなっ!」
火炎に気付いたユウトは咄嗟に翼を動かす事で後方へと下がり、放たれた火炎を回避した。
ユウトへ放たれた二種類の火炎は、雲を貫きながら消えていった。
「危ねぇな……いきなり何すんだ!」
属性を放った人物は大小様々な山々が聳え立つ中で、囲まれるように存在する平坦な大地に立っていた。
天然の決戦場の中央にいた少女は、蒼いツインテールを風に靡かせ紅緋と紺碧の双刃を両手に携えたまま、静かにユウトを見つめていた。
(あの子は確か、シュウの時にいた……)
ユウトは誘われるように、少女のいる決戦場へと降り立つと背中の翼を解除し、結晶刀を創り出した。
「「……」」
互いに様子を見合いながら、数分が経過した時。
「……貴方とまた戦う事になるとは思わなかった」
ユウトを見据えていた少女は、硬く閉ざしていた口をようやく開いた。
「俺は、こうなる可能性が有るとは思っていたよ……最初から俺は死ぬつもりなんて無かったからな」
「でも……結局は時間の問題。貴方はここで殺される……〝ボスの右腕〟である私に」
そう告げた少女の周囲を、黒い火炎が熱波を放ちながら渦巻き始めた。
「あの時とは何もかも違う。今度は、俺がお前に勝つ番だ」
戦闘態勢に入ったユウトの瞳は、通常時よりも更に紅蓮に輝いていた。
「貴方は確かに以前よりも遥かに強くなった。でも、勝つのは……私」
そう言うと少女は、緩やかに紺碧の刃を振り上げた。
そして次の瞬間、振り下ろされた紺碧の刃から闇の属性を纏った蒼炎の斬撃が放たれた。
(少し左寄りの斬撃か)
ユウトは顔色一つ変える事なく、身体をほんの僅か右に動かす事で、放たれた斬撃を紙一重で回避した。
斬撃は背後の山々を二つに割りながら進み続け、徐々に消滅していった。
「……これなら?」
少女はユウトとの距離を一瞬で詰めると、紅緋の刃を払った。
ユウトは咄嗟に、その刃を右手に持った結晶刀で防いだ。
少女が続けて払った紺碧の刃を、ユウトは左手に創り出した結晶拳で防いだ。
「弱点を突くのは良いが、その手が使えるのは武器を創り出せない奴だけだ」
両側で攻撃を受け止めているユウトは、紺碧の刃を結晶拳で上側に弾き、体勢を崩した少女に向けて結晶拳を加速させた。
『加速する結晶の鉄拳』
放たれた一撃を避ける事が出来なかった少女は、加速した拳が腹部に直撃した事で後方の山へと吹き飛ばされた。
「かはっ……!」
山に激突した少女は、強烈な衝撃によって多少蹌踉めいたが、その後何事も無かったかの様に携えた双刃に属性を纏わせた。
「……」
少女は依然として光を感じない、冷たい瞳をユウトへと向けた。
(やっぱりおかしい……戦っていると、以前ユキの時に感じていた違和感を常に感じる)
そんな時、ユウトは何気なく少女の首元に目を向けた。
(あれは?)
以前は戦闘に集中していた為気付かなかったが、少女の首にはフィリアが着けられた首輪に酷似した首輪が着けていた。
(もしそうだとすれば……やる事は一つだ)
決意を固めたユウトは、右手に持つ結晶刀を強く握り締めた。
(あの首輪を破壊して、目の前の少女を呪縛から解放する。それが今、俺に出来る最善の方法だ!)
ユウトは強い意志を胸に、少女に向けて結晶刀を構えた。
「……そうか」
冷たく投げ掛けられた言葉に表情を曇らせたユウトは、俯きながらユカリに背を向けた。
「お前なら……解ってくれると思っていたんだけどな」
再びユカリに向けられたユウトの瞳からは、一筋の涙を流していた。
「……ユウト?」
ユカリは依然として繋がりを感じていない筈の、少女に向けて手を伸ばした。
「じゃあな。ユカリ」
短く別れを告げたユウトは、ユカリに背を向け結晶の翼を創り出し空高く飛び立つと、行き先も定めず東の方角へと飛び去って行った。
「本当に……彼女は偽物だったんでしょうか?……ユウト」
「当たり前だろ」
(ようかく厄介な奴がいなくなったか)
ユウト?は、少女の飛び去った方角を見て不敵な笑みを漏らした。
「さて、俺は自分の仕事をするかな!」
ユウト?は身を翻すと、ルミナ内に戻る扉へと歩き始めた。
「何かやる事があるんですか?」
「……すぐに分かるさ」
ヒナに問われたユウト?は、ピタリと立ち止まり一言だけ言い残し、ルミナ内へと戻っていった。
―*―*―*―*―
南米大陸 上空
山々が連なる広大な大地を見下ろしながら結晶の翼を動かしていたユウトは、先の見えない未来について考えていた。
(俺は、ユカリの為に存在していた……なら、今の俺の存在意義はなんなんだ?)
『双対の災禍』
思い悩んでいたユウトに向けて、渦を巻いた二種の火炎が飛んで来た。
「っ!あぶなっ!」
火炎に気付いたユウトは咄嗟に翼を動かす事で後方へと下がり、放たれた火炎を回避した。
ユウトへ放たれた二種類の火炎は、雲を貫きながら消えていった。
「危ねぇな……いきなり何すんだ!」
属性を放った人物は大小様々な山々が聳え立つ中で、囲まれるように存在する平坦な大地に立っていた。
天然の決戦場の中央にいた少女は、蒼いツインテールを風に靡かせ紅緋と紺碧の双刃を両手に携えたまま、静かにユウトを見つめていた。
(あの子は確か、シュウの時にいた……)
ユウトは誘われるように、少女のいる決戦場へと降り立つと背中の翼を解除し、結晶刀を創り出した。
「「……」」
互いに様子を見合いながら、数分が経過した時。
「……貴方とまた戦う事になるとは思わなかった」
ユウトを見据えていた少女は、硬く閉ざしていた口をようやく開いた。
「俺は、こうなる可能性が有るとは思っていたよ……最初から俺は死ぬつもりなんて無かったからな」
「でも……結局は時間の問題。貴方はここで殺される……〝ボスの右腕〟である私に」
そう告げた少女の周囲を、黒い火炎が熱波を放ちながら渦巻き始めた。
「あの時とは何もかも違う。今度は、俺がお前に勝つ番だ」
戦闘態勢に入ったユウトの瞳は、通常時よりも更に紅蓮に輝いていた。
「貴方は確かに以前よりも遥かに強くなった。でも、勝つのは……私」
そう言うと少女は、緩やかに紺碧の刃を振り上げた。
そして次の瞬間、振り下ろされた紺碧の刃から闇の属性を纏った蒼炎の斬撃が放たれた。
(少し左寄りの斬撃か)
ユウトは顔色一つ変える事なく、身体をほんの僅か右に動かす事で、放たれた斬撃を紙一重で回避した。
斬撃は背後の山々を二つに割りながら進み続け、徐々に消滅していった。
「……これなら?」
少女はユウトとの距離を一瞬で詰めると、紅緋の刃を払った。
ユウトは咄嗟に、その刃を右手に持った結晶刀で防いだ。
少女が続けて払った紺碧の刃を、ユウトは左手に創り出した結晶拳で防いだ。
「弱点を突くのは良いが、その手が使えるのは武器を創り出せない奴だけだ」
両側で攻撃を受け止めているユウトは、紺碧の刃を結晶拳で上側に弾き、体勢を崩した少女に向けて結晶拳を加速させた。
『加速する結晶の鉄拳』
放たれた一撃を避ける事が出来なかった少女は、加速した拳が腹部に直撃した事で後方の山へと吹き飛ばされた。
「かはっ……!」
山に激突した少女は、強烈な衝撃によって多少蹌踉めいたが、その後何事も無かったかの様に携えた双刃に属性を纏わせた。
「……」
少女は依然として光を感じない、冷たい瞳をユウトへと向けた。
(やっぱりおかしい……戦っていると、以前ユキの時に感じていた違和感を常に感じる)
そんな時、ユウトは何気なく少女の首元に目を向けた。
(あれは?)
以前は戦闘に集中していた為気付かなかったが、少女の首にはフィリアが着けられた首輪に酷似した首輪が着けていた。
(もしそうだとすれば……やる事は一つだ)
決意を固めたユウトは、右手に持つ結晶刀を強く握り締めた。
(あの首輪を破壊して、目の前の少女を呪縛から解放する。それが今、俺に出来る最善の方法だ!)
ユウトは強い意志を胸に、少女に向けて結晶刀を構えた。
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