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第1章 光の導き手
第12話 誓い
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ルクス二階では、依然として雷鳴が鳴り響いていた。
「すぅ……うぅ……」
ヒナの攻撃を受けたクムは、半ば起きている状態だったが、痛みを我慢し寝たふりを続けていた。
(この子の属性……不自然ですね。闇の人間なら殆ど黒色に染まっている筈なのに、この子の属性は黄色や赤色が黒よりも濃くなってる。この子の攻撃もこの子の周囲にだけ発生している……まるで自分を外敵から守るように。間違いない……この子は転生して闇の人間になってしまった子なんですね)
クムの属性を見てそう判断したヒナは、クムの電撃を受け続けた事で意識を失いかけながらも、水のマイナス属性の治癒を利用して少しずつクムとの距離を詰めていた。
(この階に残る選択をして良かった。おかげでこの子を救う事が出来る……たとえ私の身体がどうなってもあの子は、私が救って見せる。光の主力として……いえ、一人の光の人間として!)
属性を身に纏わせクムに接近する事が出来たヒナは、クムの前に身を屈めゆっくりと頭の上に手を乗せ、クムの頭を優しく撫でた。
(……え?)
「辛かった……でしょう?……私が必ず、あなたが見ている〝悪夢〟から解放して見せますから」
その言葉を聞いたクムは、少しだけ目を開けて声の主を確認した。
目の前の少女は、電撃をその身に受けながらも笑顔でクムの頭を撫でていた。
(私を悪夢から……この悪夢から助けてくれるの?この掌から伝わる暖かさ、懐かしい感じがする。お母さん、お父さん……この夢から醒めたら……あの頃の、幸せな毎日に戻れるかな?)
ヒナがクムを撫でた数秒後、床一面に広がっていた黄色い電撃が一瞬で消滅した。
ヒナは咄嗟にクムから距離を取る為に、数メートル後方に飛び退いた。
(電撃が消えた!咄嗟に離れてしましたが、闇の人間に転生した人が攻撃を任意で止める事は出来ない。これは、次の一撃で全て終わらせるつもりですね)
ヒナの予想は的中し、クムの前方には黄色と赤色が混合した線状の電撃が、雷鳴を激しく轟かせながら円を描き始めた。
様子を見ていたヒナも、身に纏っていた属性を解除すると両腕を大きく広げ始めた。
すると、ヒナの胸部前方に小さな泡沫が発生した。
発生した泡沫の中に、プラスとマイナスの水属性がコポコポと音を立て満たされていき、泡沫内は混合された水属性で一杯になった。
(属性で出来たこの泡沫は、私自身の〝器〟。この器に私の残された属性を全部流し込んで……私の全てを、あの子を救う為に使います!)
ヒナが混合させた属性は、泡沫の中で荒々しく渦を巻き始めた。
クムが形成していた電撃の円も完成し、線状の円から中央に向けて雷が落ちる様に屈折しながら集まり始めた。
(お願い…………助けて!)
「みんながいない……こんな悪夢から私を開放してっ!!」
クムは、頑なに閉じていた目を開け潤んだ萩色を露わにして叫んだ。
胸の内に秘めていた思いを叫んだクムは、抑えてきた気持ちが一気に溢れた事で、頬を伝う涙が滝のように流れていた。
「任せて下さい……私に出せる全てで、あなたを必ず救い出してみせます!」
『誓いの水』
ヒナの残された属性が全て入った泡沫に小さな穴が開くと、クムに向けて青と碧の二色が混合した水の柱が放たれた。
『雷対の悪夢』
クムの形成した円の中心に集まった電撃が接触した瞬間、円一杯に広がる程の電砲がヒナに向けて放たれた。
双方から放たれた攻撃は、二人の間で衝突すると同時に衝撃波を発生させた。
属性の相性が不利なヒナは、水属性を伝って流れてくる電撃を身体に受けながらも、放っている水属性に意識を向け続けた。
(属性は全て泡沫内に注ぎ込みました。これ以上を望むのなら……私の意思で、この境地を乗り越える成長をする以外に……道はありません!)
「私が……私が救うって誓ったんです。私の命が尽きようとも、ここで押し負ける訳にはいきません!」
ヒナの意志に呼応するように泡沫が更に小さくなり、泡沫内の属性は更に強く放たれ始めた。
ヒナが凝縮出来る泡沫の大きさは、ヒナの許容範囲を超え、今までよりも更に強力な属性を放つ事が出来るようになっていた。
その瞬間、強固な意思を持ったヒナの属性にクムの属性が押し負け、一点に集中されていた電撃は一瞬で周囲に弾け飛んだ。
「あっ……」
そして大きく渦を巻いた水の柱は、無防備になったクムに直撃した。
直撃した瞬間、水の柱はクムの身体を包み込む程に大きく範囲を広げ始めた。
(この水……痛くない。撫でて貰ったあの時の暖かさを感じる。やっと起きれるんだね……長い夢だったな)
クムは水属性に呑み込まれながら、安らかに瞳を閉じた。
「…………ありがとう」
クムの身体は微かな水のマイナス属性に包まれながら、プラスの水属性の中に消えていった。
水の柱はルクスの壁を貫きなから伸びていき、徐々に細くなると同時に静かに消えていった。
「本……当に良かった。あの子を救う事ができ……て」
属性を出し尽くし、最後の力を振り絞ったヒナは意識を失い床に倒れ込んだ。
その後、一階の雑魚処理を終えたレンに発見されたヒナは、安心したように眠りについていた。
「すぅ……うぅ……」
ヒナの攻撃を受けたクムは、半ば起きている状態だったが、痛みを我慢し寝たふりを続けていた。
(この子の属性……不自然ですね。闇の人間なら殆ど黒色に染まっている筈なのに、この子の属性は黄色や赤色が黒よりも濃くなってる。この子の攻撃もこの子の周囲にだけ発生している……まるで自分を外敵から守るように。間違いない……この子は転生して闇の人間になってしまった子なんですね)
クムの属性を見てそう判断したヒナは、クムの電撃を受け続けた事で意識を失いかけながらも、水のマイナス属性の治癒を利用して少しずつクムとの距離を詰めていた。
(この階に残る選択をして良かった。おかげでこの子を救う事が出来る……たとえ私の身体がどうなってもあの子は、私が救って見せる。光の主力として……いえ、一人の光の人間として!)
属性を身に纏わせクムに接近する事が出来たヒナは、クムの前に身を屈めゆっくりと頭の上に手を乗せ、クムの頭を優しく撫でた。
(……え?)
「辛かった……でしょう?……私が必ず、あなたが見ている〝悪夢〟から解放して見せますから」
その言葉を聞いたクムは、少しだけ目を開けて声の主を確認した。
目の前の少女は、電撃をその身に受けながらも笑顔でクムの頭を撫でていた。
(私を悪夢から……この悪夢から助けてくれるの?この掌から伝わる暖かさ、懐かしい感じがする。お母さん、お父さん……この夢から醒めたら……あの頃の、幸せな毎日に戻れるかな?)
ヒナがクムを撫でた数秒後、床一面に広がっていた黄色い電撃が一瞬で消滅した。
ヒナは咄嗟にクムから距離を取る為に、数メートル後方に飛び退いた。
(電撃が消えた!咄嗟に離れてしましたが、闇の人間に転生した人が攻撃を任意で止める事は出来ない。これは、次の一撃で全て終わらせるつもりですね)
ヒナの予想は的中し、クムの前方には黄色と赤色が混合した線状の電撃が、雷鳴を激しく轟かせながら円を描き始めた。
様子を見ていたヒナも、身に纏っていた属性を解除すると両腕を大きく広げ始めた。
すると、ヒナの胸部前方に小さな泡沫が発生した。
発生した泡沫の中に、プラスとマイナスの水属性がコポコポと音を立て満たされていき、泡沫内は混合された水属性で一杯になった。
(属性で出来たこの泡沫は、私自身の〝器〟。この器に私の残された属性を全部流し込んで……私の全てを、あの子を救う為に使います!)
ヒナが混合させた属性は、泡沫の中で荒々しく渦を巻き始めた。
クムが形成していた電撃の円も完成し、線状の円から中央に向けて雷が落ちる様に屈折しながら集まり始めた。
(お願い…………助けて!)
「みんながいない……こんな悪夢から私を開放してっ!!」
クムは、頑なに閉じていた目を開け潤んだ萩色を露わにして叫んだ。
胸の内に秘めていた思いを叫んだクムは、抑えてきた気持ちが一気に溢れた事で、頬を伝う涙が滝のように流れていた。
「任せて下さい……私に出せる全てで、あなたを必ず救い出してみせます!」
『誓いの水』
ヒナの残された属性が全て入った泡沫に小さな穴が開くと、クムに向けて青と碧の二色が混合した水の柱が放たれた。
『雷対の悪夢』
クムの形成した円の中心に集まった電撃が接触した瞬間、円一杯に広がる程の電砲がヒナに向けて放たれた。
双方から放たれた攻撃は、二人の間で衝突すると同時に衝撃波を発生させた。
属性の相性が不利なヒナは、水属性を伝って流れてくる電撃を身体に受けながらも、放っている水属性に意識を向け続けた。
(属性は全て泡沫内に注ぎ込みました。これ以上を望むのなら……私の意思で、この境地を乗り越える成長をする以外に……道はありません!)
「私が……私が救うって誓ったんです。私の命が尽きようとも、ここで押し負ける訳にはいきません!」
ヒナの意志に呼応するように泡沫が更に小さくなり、泡沫内の属性は更に強く放たれ始めた。
ヒナが凝縮出来る泡沫の大きさは、ヒナの許容範囲を超え、今までよりも更に強力な属性を放つ事が出来るようになっていた。
その瞬間、強固な意思を持ったヒナの属性にクムの属性が押し負け、一点に集中されていた電撃は一瞬で周囲に弾け飛んだ。
「あっ……」
そして大きく渦を巻いた水の柱は、無防備になったクムに直撃した。
直撃した瞬間、水の柱はクムの身体を包み込む程に大きく範囲を広げ始めた。
(この水……痛くない。撫でて貰ったあの時の暖かさを感じる。やっと起きれるんだね……長い夢だったな)
クムは水属性に呑み込まれながら、安らかに瞳を閉じた。
「…………ありがとう」
クムの身体は微かな水のマイナス属性に包まれながら、プラスの水属性の中に消えていった。
水の柱はルクスの壁を貫きなから伸びていき、徐々に細くなると同時に静かに消えていった。
「本……当に良かった。あの子を救う事ができ……て」
属性を出し尽くし、最後の力を振り絞ったヒナは意識を失い床に倒れ込んだ。
その後、一階の雑魚処理を終えたレンに発見されたヒナは、安心したように眠りについていた。
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