121 / 130
第三部 最終
7
しおりを挟む使用人達が使うキッチンにレイが来ていた。机を少しなぞり昔を思い出す。
何度かここへ来てはベルにいろいろな事を教えてもらっていた。ここなら二人でいても不自然で疑われる事がないためしょっちゅう来ていた。
自分が冒険者になると出ていった時も応援してくれたベルとの思い出はたくさんあり助けられた事の方が多かった。
そんなベルから禁じ手の話を初めて聞いた時は恐ろしかった。使い方をしっかりと覚えれは大丈夫だといっていた。一度聞けば忘れる事の無い禁じ手はいつも心のどこかにある。
「レイ様、あいつは大丈夫です」
「わかった」
「すみません急に。ただ、きちんと話がしたくて」
「ああ、久しぶりだな」
「立派になられて…お強くなりましたね。ほとんど教える事は無いのですが最後に一つだけ伝えなければならない禁じ手があります」
「禁じ手?」
昔に教えてもらったのが幾つかあるがそれで終わりだと思っていた。しかも大人になった今、何の禁じ手が必要なのかと。
「はい、これは伝術士最後の伝え術です」
「てことは伝術士にならないと聞けないんじゃねぇの?」
「はい…」
「なら、」
「わかってます」
「何でだ?」
「レイ様に大切な人ができたからです」
「だとしても…」
「これは…結婚祝いですかね!」
「は?」
「伝術士だからとかではないです。レイ様だから教えたいと思ったんです。聞いても使うか使わないかはレイ様次第です。禁じ手はどれもそうですが特にこれはです」
「ベル…」
「心して聞いてください。そしてもしその時がきたら覚悟を」
「……。」
「聞きたく無かったですか?」
「いや…わからないが。ありがとうと素直にでるのは聞けて良かったと思ってるからだと思う」
「はい。レイ様、良き伴侶を迎え心より嬉しく思います。ソードさんとロキさんを大切に」
「ああ、勿論だ。ありがとう」
「ベルのお陰でソードに会えた。この剣が俺達を助けてくれたんだ。感謝する、それに俺もベルに会いたかった」
「そうですか、良かった!」
しばらくベルとそれぞれ話をした。
「レイ様、お気づきかと思いますがソードさんはかなりの魔力をおもちです。はっきりとはわかりませんがレイ様と同等はあるかと。くれぐれもご注意ください」
「わかった。ん?」
「…黒オーラだしたな。レイ様、戻りましょう」
「そうだな」
俺は未だに禁じ手は恐ろしく思う。それでいい。恐怖に勝ってしまえば人ではなくなってしまう…そんな気がする。
そう言えば…ベルはここで何を作っていたんだろうな。いつも何かしていた気がする。
「兄さん?」
「ハイルか…」
「珍しいですね、こんな所でどうしたんですか?」
「いや、懐かしくて」
「そうですか。ベルと仲良かったですよね確か」
「そうだな、いろいろ教わった」
「兄さん、俺魔術研究は向いてないと思って別の道へ進んで良かったです」
「そうか」
「今度、好きな人紹介します」
「あ?お前いたの?」
「はい」
「おい、じゃあソードに抱きつくな。浮気だ」
「……嫉妬えげつない!」
こうして恒例のクラークス家での休日を楽しんで帰宅した。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる