夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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第三部 最終

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今年もやってきた…あの恒例行事が


「待ってたよ~ロキ君ソード君~!」

ハグを求め大きく手を広げる。

「だから、ハグはさせないって言ってるだろ!」

「お前はいつもそうだ、ソード君に大きめのフード被せるのもいい加減やめないか!何年経ってると思うんだ!」

「そっちこそ、何年同じ事するんだ!また、いつ手を出されるかわからない。触れるな見るな会話するな」

「また、レイさん怒ってますね」

「毎年恒例だな」

 ルーベンの改心からソード達は毎年クラークス家を訪れるようになった。喜ばしい事だが相変わらずルーベンはソードを溺愛している。

「暑い!」

「ソード君!」

「あ、脱ぐな!」

大きめのフードを無理矢理レイに被され暑さの限界だった。これはまだマシになった方で1年目は袋に詰められたような姿で抱えられていた。流石怒られ、年々薄着にはなるがレイは納得いってなかった。

「暑い…」

ロキがぱたぱたと手で風を扇ぐ。それでも暑かったのか上半身の服を全て脱ごうとした。

「「それはダメ」」

「なんでだよ」

レイは服を押さえそれ以上捲るのを止めさせた。暑い暑いと言うソードに仕方なく魔術を出して体をひんやりさせる。

「ん…涼しい」

顔を手に近づけ目をつむり気持ち良さそうにするソードが可愛くておでこにキスをする。羨ましそうにルーベンが見ているとその後ろから声がした。

「相変わらずですね、兄さんは」

「ハイルか」

「ソードさん、ロキさん、お久しぶりです」

「「久しぶり~」」

レイと肩を並べるほどの身長にまで成長したハイルは男らしくもあるが端麗で落ち着いた出で立ちで年齢より上に見える。

「ハイル君、また大人っぽくなってる。仕事も順調?」

「はい」

「それは良かった」

三人はハイルに案内され部屋に上がる。メアは今は研究開発で夜にしか会えないらしい。母親も旅行中らしいがどうやらその間を狙いソード達を招いたようだ。

「ハイル、一緒にお茶しよ」

「はい、喜んで」

ソードに言われ部屋でお茶をする事に。
ハイルは既に成人を迎え仕事をしている。話は自然とハイルの話になる。レイがルーベンに呼ばれ席を外し出ていくとロキがすかさず聞いた。

「ハイル君、で、どーなったの!」

実はハイルには付き合っている人がいて1年前にソードとロキにひっそり相談していた。

「仕事が忙しくてなかなか会えてないです。月に1回会える位で進んでません。ソードさんは何でうちの兄と結婚したんですか?」

「う~ん」

何でだっけか。

「あ、本気で好きになったから」

「そうですか…」

「あーっと、俺たちは見ての通り特殊でソードは結婚決めるまで好きって一度も言わなかったし、好き=結婚みたいな感じで…」

「え!一度もですか」

「まぁ、何となくは好きだったみたいだけど。本気に好きになるまでは好きって言ってくれませんでした」

「……凄すぎる。よくロキさんも兄さんも諦めなかったですね」

「んー諦める必要なかったし一生聞けなくてもいっかって。一緒にいれれば良かったから」

「好きって確かめたくなりません?」

「それは聞けたら嬉しいけど、本心じゃないのに言われなくても嬉しくないしね。確かめる必要がないと言うか。ソード好きだからいっかなって。嫌いなら側に置いてくれないしね」

「ソードさん、二人の愛は重くなかったですか?」

「う~ん」

「え!もしかして俺もレイさんも重い?」

「かなり、今だったら考えられないです。俺なら引いてしまいます」

「えー!!ソード重い??」

「う~ん」

「ソードさんは好きって何で思ったんですか?」

「う~ん」

「全然さっきから答えてないから!ソードってば!」

「本気で好きだからよくわからない」

「そ…そうですか」

何ともよくわからないな、ソードさんの感覚は。本気で好きにか~俺もロキさんや兄さんみたいに離せない位好きになれるのかな…。

レイが戻ってきた。
不機嫌そうですぐにソードを抱きしめ頭にキスをした。

兄さんはよく人前であんな事できるな…

「ソードさん、兄さんの嫉妬と独占欲がえげつないぐらい凄くないですか?」

「んー」

「あ?いいんだよ、こうでもしないと誰かにとられるから」

「誰にですか」

「いろいろだ、お前はソードの良さに気がつかなくていい。俺達だけで十分だ」

「はぁ~ソードさんうちの兄がスミマセン」

「謝るな!お前も早く恋人でもなんでもいいからさっさと見つけろ!」

いるんだけど俺の場合は顔なんだよな、みんな大体それで近寄る。面倒なんだよな。兄さんはそれで遊んでたみたいだけど俺は無理。今の子も俺の事が本気で好きなんだろうか。

 毎年溺愛し過ぎてる兄さんを見てるがソードさんは結局受け入れている。何でこんなに三人はずっと好きでいられるんだろ。

「兄さん、ちょっと貸して」

ハイルは急にソードの手を引っ張り自分に抱き寄せた。レイもロキもビックリした。
ソードを抱きしめ、ぎゅ~として離さない。まるで恋人同士だ。

「おい!ハイル!!」
「ちょっ、ハイル君?」

ソードは黙れと目で二人の発言を止めた。
気のすむまでさせたがその間二人はどうしていいか分からずおろおろした。

「ソードさん意外と細いんですね…」

「ハイルはいつの間にかでかくなった」

「兄さんがいつもぎゅっとするからしてみたくなって」

「そっか」

「ソードさん抱き心地いいですね」

「そうか?」

「んーソードさんと居たい気持ちわかる気がする」

「ハイル…レイが怒っちゃうよ」

「そうですね。今、兄さんの顔見たくないです」

「ふふ、寂しかったらまたハグしてやるから」

ぎゅっと力を入れた。
ソードさんといるとバレちゃうのか…。

「ハイル、思い出した。レイとロキといると幸せって思って結婚した」

「ふふふ、そうですか。ありがとうございます」

背中をさすると手を離した。レイは顔を引きつかせている。ロキはどういう顔をしていいかわからず悩んでいた。

「兄さん、ありがとう。ソードさん好きになる前に離します。じゃあ、スッキリしたんでまた夕食に」

バタンとドアを閉めてでていった。レイはソードを引き寄せ弟の匂いを消した。

「何だったんだあいつは!」

「どうしたんですかね、急に」

「あれは、レイが悪い」

「あ?何でだよ!!何もしてねーぞ」

「いや、レイの通常が悪い」

「なるほど…」

すぐに好きな人を抱きしめれるレイの状況が羨ましくなり、自分の恋人に会えないのが淋しくなった。目の前の兄の好きなソードを取り意地悪したくなった男心はレイにはわからないのだった。
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