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第二部
13 ソード ②
しおりを挟む「今回俺が捕まった…保護されたのは伝術士だ。初めて知ったが独特な考えだったな。お前達を呼び出したのもそいつらだ。レイは知ってるかもだが政治にも関与するんだな」
宿のベッドで寝ていた体をゆっくり体を起こす。
「いや、俺は禁じ手を教えてくれた以外は知らなかった。政治関与と言うより魔獣に関与する事に敏感だと思う。魔獣を利用する事を嫌うからな」
「なるほど」
「何が目的だろう」
「情報だそうだ。今回の首謀者を洗い出し領土戦止めたいみたいだがまだわからないらしい。俺らを利用したいんだろ。たまたま第4にいた俺を見て使えると思ったんじゃないか。俺達と最終目標は同じだが過程が違う」
「そっか」
「……。」
「助からなかったが俺が見に行った冒険者だが身なりを見ても4深層に一人で来れそうもない。恐らくだが今日会った伝術士と組んで用済みにされたんだと思う。身分を証明するものも何もなかったから多分いろいろ回収したはずだ」
「魔獣を操るやつに関係が?」
「恐らく」
「いよいよだな」
「ああ、俺達以外にも動いてる」
偶然得た情報で収穫は大きかったがこれからの動きを今以上に慎重にしなければと思った。ましてや伝術士が関わり情報を欲しがっている。何人いてどんな組織かもわからない。意外だったのは領土戦を止めようとしていた事だった。彼らは魔術を伝えるだけではなくこういった国が関わる事へも参加する事に。
伝術士のベルと接触した事があるレイに聞きたいが身を危険にさらすような事は聞けない。差し障りの無い最低限の事をソードは質問した。
「レイ、伝術士との縛りは?」
「ある」
「わかった」
やはりあるか。レイはこれ以上無理だな。何に引っかかり処罰の対象になるかわからない。伝術士との接触は単独で動く方がいい。
「何でソードが情報もってるとわかったんだ…」
「さぁな、誘導されたかも。余裕なかったから」
「そっか」
「はぁ…話はまた明日だ。悪い、休む」
「「うん」」
ソードは横になり目をつむった。手を軽く広げた。
「お前らもだ来い。一緒に寝るぞ」
二人は喜んで隣に来た。手を握りながら三人は眠りについた。
次の日、ベッドで横になる三人。三人共が極度の緊張と体力の消費で一日中寝ていた。目を覚ますがそれぞれがいろんな事を考えてぼーっとして誰も何も話さない。時間が過ぎて考えがまとまったソードが口を開くとそれに続き思い思いに話す。
「レイ、お前の親父に会いたい。聞きたい事がある」
「スゲー嫌だけど、わかった」
「ソード、ベルが俺に剣をくれた本人だ」
「そうか、通りでいい剣だと思った」
「俺、前にあの伝術士に冒険者(仮)の時に会った事ある」
「「へぇー」」
三人共がお互いを心配していたのだが情報が多くて喜ぶのは後回しになっていた。ソードがゆっくり起き上がる。
「お腹減ったな、食べに行くぞ」
「「了解」」
二人もそう言えばお腹が空いてきた事に気がつくとそこで気持ちが落ち着いたんだと気がついた。
「腕と肋骨大丈夫?」
「大丈夫だけど暫くは討伐いけないな」
「今さらだけど、何で伝術士はソードが欲しいって?」
「さぁ、情報と多分似たような考えだったからじゃないかな」
「「ふーん」」
「何かされてない?マント貸してくれた人でしょ」
「前回も今回もキスしたよな」
「……そうだな」
「「……。」」
否定をしない答えに二人が殺気立つ。
「既婚者ってわかってたよね」
「…そうだな」
「ソード怪我してたよな」
「…あぁ」
「「……。」」
「食べ終わったか?」
「「うん」」
「家帰るぞ」
「「うん」」
「帰ったら好きなだけしろ」
「「……。」」
家についても二人の殺気は全くおさまらなかった。休ませないといけない事はわかっていたが自分たちのどこにも逃がせない気持ちを拭いたかった。
「レイさん、怒りでどうかなりそう」
「俺もだ」
腕を怪我して肋骨が折れているため激しくは抱けない。幸い跡はついていなかったが包帯も全て取り替え体を綺麗に拭き取った。
血が滲んでいた包帯はそのせいだと連想させられ二人はすぐに全て身にまとう物を燃やした。
痛々しい怪我に新しく包帯を巻きお腹回りは固定しながら厚めに巻き丁寧に横にさせた。
「できるだけ優しくするから、痛かったら言って」
「ん、大丈夫」
「先に言っとくがお前は謝るなよ」
「ふふ、わかったよ」
二人はできるだけ優しく抱いた。
そんな二人にソードも身を任せた。
寝顔をじっと見つめていた。
「レイさん…怒りがおさまらない」
「俺もだ…」
「何で何もいわないんだろう…」
「ソードか?多分…俺達に気を使ってる」
「そっか…そうだよね」
「そんな姿に余計に愛おしいよ」
「うん」
髪を触りキスをする。
ため息をつき行き場のない怒りを飲み込むには時間と忍耐がかかった。
□□□〈カウロック フェリシア〉
冒険者が押さえてくれたお陰で一旦は強力な魔獣が落ち着いたが安心はできない。
魔獣の体液を採取したら僅かに薬が混ざっていた。分析は困難だが出先はわかる、こんな事ができるのはウェザーでもクラークス家当主しかいない。
「ルーベン=クラークスを招待しろ。名目は共同研究開発の今後だ。ウェザーのお抱えだ、丁重に扱え」
「了解しました」
その間に冒険者を集め、カウロックに集合させる。相手は魔獣だ兵士など役にたたない、もっと上級冒険者が必要だ。
「名を上げるような冒険者はいないか!」
「何人かおりますが呼び出しますか?」
「呼べるものは全員呼べ。リストにして提出しろ」
「かしこまりました」
フェリシア王も気がついたがウェザーかどうかは話を聞いてからだな。ルーベン氏なら作れるがそれを使った相手が誰かまではわからんが当然の情報集めだな。果たして話してくれるのかは別だがな。
□□□
数週間が過ぎソードの傷も癒え前と変わらない様子で三人は部屋にいた。
「もう、大丈夫」
「良かった」
「体力落ちたから討伐いかないとな」
「まだ、行かなくていいだろ?」
レイとロキは今回の事が教訓になり自分たちがしっかり守らないといけないと改めて思った。強さが足りない歯がゆさを感じながら二人は鍛練をひたすら続けた。
ソードにはゆっくり休養をとって早く治してもらいたかったが次の日から討伐に行こうとして二人は唖然とした。
「体なまる」
「休養とかいいつつロキと太刀合わせの相手してたろ」
「でもすぐお前ら辞めさせるだろ。いつもならすぐ出掛けてたのに…休めっていうから」
「当たり前だ」
「早く治して欲しいから」
「もう治った」
ソファーに座りお茶をしながら話す。
「全快したら好きなだ討伐行こうよ」
「だな、まぁそんな暇無いと思うけど」
「は?」
「誰がこんなにやらずに耐えてると思ってるんだよ」
「……。」
レイもロキもあの日以来1度もする事は無かった。それよりもソードの体を1日でも早く治すのが先決だったのだ。
「俺もキスだけじゃもう無理」
「ほら、だから全快したら俺達に付き合え」
「…わかった」
「素直だな」
「でも、ソードが嫌なら別にしなくてもいいよ」
「だな、何かやりたい事あるか?お菓子でも買いにいくか?」
「じゃあ…」
ソードはおもむろに服を脱ぎだした。ビックリした二人はお風呂でも入るのかと思ったが、ロキにきいなり濃厚なキスをしレイにお尻を向け穴に自分で指を入れた。
「いいから早くいれろ」
と言った。二人は言うまでもなく…
「レイさん…無理」
「俺も…」
「ソードの本気初めて見た」
「そうだな」
二人はソードの煽りに驚愕していた。
「なんなんですかあれ!」
「な、やったのにやられた気分。敵わない」
本人は二人に挟まれぐっすり寝ている。初めて意識的にされた煽りは予想以上でしばし思いにふけるほどだった。
「おはよ」
「「おはよ…」」
「珍しいなお前らのが後に起きるの」
「「はぁ~」」
「何だよ」
「ソードのせいだ」
「です」
「何で、良くなかった?」
「「…。」」
「微妙だったか、ごめんもうしない」
「違う」
「逆」
「あ?」
「お前が凄すぎて良すぎたんだよ!」
「ソード、絶対それもうしないで!」
「どっち?」
「「やりたいのが止まんなくなる!!」」
「だめだ、暫くやるぞロキ」
「はい、俺もそのつもりです」
「え…ちょ…」
この日から暫くやるだけの生活になり、ソードはもう自分から煽りは二度としないと誓った。
「やっと討伐いける…」
「ソードの好きなのいいよ!」
「何でも付き合う!」
二人の機嫌は物凄く良かった。
するんじゃなかった…討伐全然いけなかった。前にレイが煽って欲しいって言ったからしたのに…。
来てはみたものの、あれから大して状況は進んでないな。やっぱりルーベンに話が聞きたい。何とか聞き出せないだろうか。
「受けたいの無い。レイんちにいく」
「わかった」
こうしてまた、クラークス家に行くことにしたのだが…家に帰るとそこにはルーベンの属が罠にかかっていた。
「おい、お前らまた懲りもせず」
「また、捕まってる」
「「レイ様、ロキ様、お久しぶりです」」
縄を外すとソードへお菓子を渡す。お菓子の箱を開けるが手紙は無かった。
「手紙はないの?」
「おい、それ待ってたみたいな言い方すんな」
「はい、こちらに。直接渡すように言われまして。ただ、レイ様の前では渡すなと」
「あ゛?ふざけんなよお前ら。今度来たら身ぐるみ剥がしてやる」
「「それは勘弁を!」」
ソードは手紙を受け取りすぐに見た。
親愛なるソード君へ
前回会った時は寝起きに来てしまいすまなかった。結婚祝いを届けたんだが一目見たくて起きるまで待たせてもらった。腫れていた目は大丈夫だったかな。
近々カウロックに行く予定があるのだがそこで時間をとって貰えないだろうか?
良かったら新作のお菓子だ。私のように気に入ってくれると嬉しい
ー ルーベン ー
「わかった、楽しみにしてると伝えて欲しい。途中までは二人も連れてく。モグモグ」
「かしこまりました」
レイに手紙を渡したが手紙を見るなり燃やした。
「食うな!!」
「モグモグ」
「ロキも食うな!!」
あれ?俺ルーベンに会ったっけ?
「ねぇ、俺いつレイの親父と会った?目、腫らしたって何か知ってる?お菓子はあったのしってんだけどな」
「「!?」」
慌てて二人は話をつなげた。
「あーレイさんのお父さん来たけど、ソード寝てて無理やり起こしたからまだ眠いって」
「そそ、それで眩しいからって目を隠そうとしたら包帯しかなくて」
「だから親父には説明面倒でそう話したかも」
「ふーん、よくわかんないけど」
「まぁ、気にするな。適当にあわせとけ」
「わかった?」
腑に落ちなかったが気にする事なくルーベンと会うことにした。
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