夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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91 最後の牙

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「シルバ元気だな!」
「レオ遊ぼう!」

レオめがけて勢いよく飛びついた。レオはその子供に三人を紹介した。

「こいつが腐れ縁で友達のソード=クラークスで、こっちが友達のレイ=クラークス、んでこいつが俺の愛弟子のロキ=クラークス」

 レオの紹介にレイとロキはビックリしたがソードはすぐに察した。子供の前までしゃがみ挨拶をした。

「俺はレオの友達のソード。名前きいていい?」

レオの足に抱きついたがすぐに横に一歩でて名前をいった。

「シルバ=レグルス=ヒューズクイーン」
「なんて呼んだらいい?俺、ソードでいいよ」
「シルバ」
「じゃあ、シルバ。よろしく」
「よろしく…」
「何して遊ぶ」
「あっちでレオも一緒に」

そう言うと5人はテラスに行ってお茶を飲み話ををしようと座るがいつのまにかシルバはソードの手を引いて遊びに行ってしまった。

「レオあれ…」

「レグルス王子の子供だよ。第一子」

「え、こんな所にいるんですか?普通お城の中では」

「王子が子供?王妃しか興味ないように見えた」

「そうなんだが…」

二人の質問はごもっともだと言いたくてその話をソードにするつもりだったが本人はシルバと遊びの真っ最中。とりあえず二人に事情を話した。

「見ての通り正当な妃はさっき見たリヒトだ。だが、二人には子孫は望めない。この国には跡継ぎがいるがレグルスはリヒトといたいがために子孫の産める妃を迎え、国民には正当の妃として紹介した。どうやって産ませたかわからねぇが女は妊娠してシルバができた」

「まぁ、よくある話しだな」

「まぁな、俺とレグルスと長い付き合いだ。確かにリヒト一筋なのは知ってたが自分の子供ができれば少しは愛情が子供に向けられると思ってたんだが全くだった」

寂しそうにシルバを見る。

「「……。」」

「御披露目会があった以来一度も呼ばれた事も会いに来たこともない。ここは…一番遠く城からも目につかない場所にある。木で覆われてはいるがまるで隔離された…はぁ。俺が学校を辞めてこの城に来て頼まれたのは…」

「シルバ君のお世話…ですか」

「その通りだ。初めは王子になって慣れないのだと思ったが…もうシルバは5歳だ。一度ぐらいリヒトから離れて会いに来てもいいだろうに…それを今日ソードに相談したかったんだが…」

「「なるほど」」

 レオの会わせたい人は彼女や結婚相手でもない、この国の次期王子だった。

「ソードの言う通りだった。レグは何も変わらない。俺は…今日ソードを攻撃したのを見て確信しちまった。まさか、俺の友達すら手にかけるのを躊躇しないなんてよ…悪かったな二人とも。こんな事になるなんて謝りきれないが…」

「俺らも確信があった訳じゃない。憂鬱なのは知っていたがそれじゃない違和感があっていつもと違ったからな。それに、レオはこの事を知らない方が安全だとソードが言わなかったんだと思う」

「ですね。俺もレイさんも今日の事は知らなくて…自分しか知らない事にしたかった…それぐらい慎重というか…危ない事だったのかもしれません。何で殺されそうになったかはまではわかりませんが一番良いと考えた結果だと思います」

「そうか…そうだな。さすがソードの旦那なだけあるな二人とも」

フフフと少し笑った。

 レオは庭で遊んでいる二人を遠目でみていた。楽しそうにはしゃぐ声が聞こえる。

「で、シルバの何の相談だったんだ?」

「あいつは人を育てる事ができる。お前ら見たら一目瞭然だ。だから、どうやったら愛情を注いで育てたらいいか聞きたくてな。ヒューズ国を背負うんだ…生半可な精神じゃダメだ。後13年もすりゃ成人になっちまう。時間がねぇ。レグルスみたいにはしたくない」

「レオさんも十分上手いです!」
「だな」

ロキは自信を持って言いった。レイも賛同したためレオは気恥ずかしくなり苦笑いをした。ソードとシルバが戻ってくる。

「レオ…ソードまだいる?遊びたい」
「ん、少しだけなら」

テラスでお茶を飲んだら今度は二人は木の影でひそひそ話している。

「凄く楽しそうですね」

「だな」

「アイツの子供だからもしかしたら嫌がるんじゃないかって思ってたがソードにそんなの関係なかったな」

「「ソードですから!」」

「だな。時間だシルバ!」

呼ぶ声に気がつき、がっかりしながら近づく。

「レオ、ソードと遊びたい!」
「時間だろ?」
「うぐ…」

大泣きしてしまった。レオは困り果てソードは苦笑いしながらシルバの手をとった。

「レオ、ここにたまに来たらダメか?」

「そりゃ、勿論。あいつも絶対来ないし、城からもここは見えないし。門番は俺の知り合いだから三人通してやれるが…いいのか?」

「シルバ、聞いた?また来るからその時遊ぼう。レオが何とかしてくれるってさ。今度はお菓子もってくる」

「うぅ…わかった」

大人しく女性の世話係に連れられ戻っていった。

「助かった」
「あぁ、また来るから宜しく。で、話は?」
「二人に話した」
「あ、そ」
「お前が来てくれるなら解決だ」
「ふーん、じゃあ帰るわ」
「おう!」

 レオがお願いするまでもなくソードはシルバに会いに来てくれると約束をしてくれた。これはレオの為でもシルバの為でもなくソード自身が会いたいと思ったからだと三人は感じた。

来た道を戻り城の外まで出た。

「ソード、王子がした事…」
「あ?手合わせだろ。じゃあ、またな~」

 いつもと変わらない口調で言ったのでレオもそれ以上言うのをやめた。カウロに乗ると手を振り城を後にした。揺られながら遠くの景色を見てソードは小さな声で言う。

レグルス…絶対に…

「許すかよ…」

俺に牙をむけたんだ。

食らい付いて離さないなら、食らい付いた事に後悔させてやるよ。

「「何か言った?」」

「ん、お前ら大好き」

「「……。」」

「「何でこんな時に言うんだよ!!」」

「うわっ!!」


長くて短い1日が終わりいつもと変わらない道を帰るがすぐそこに時代の波が押し寄せていた。

 新しい時代とは些細なきっかけから始まりいつの間にかその輪に入り込んで終わる頃に気がつく。自分達が時代を作っていたのだと。
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