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第二部
10 謎の男 ④
しおりを挟む再び深い眠りから目を覚ます。同じ部屋の同じベッド。
眠らされた…か
ベッドから起き上がるとさっきいた医者はもういないが別の人物がそこにいた。
「久しぶり」
「どうも」
椅子に座り足を組んでソードをニコニコ見ていた。
この男を知ってる。魔獣にとどめを刺した人物でもあるがそれよりも前に一度見たことがある印象的な不思議な人。
「この間はマントを貸していただきありがとうございました」
「いえいえ、気分はどう?」
「眠らされた分だけ疲れましたが大丈夫です」
「あはは、ゴメンね」
「助けてもらえた上に命の補償をしていただいてありがとうございます」
「いえいえ」
本当は身なりや防具等はどうでも良かったが男がじっと見るだけで話してこないので話題でだした。
「防具はありますか?」
「あるよ、いる?」
「あれば…」
それ以上聞く事もないが…相手はあるよな
自分の服装はというと白いズボンに上半身は裸で肩とお腹にかけて包帯が巻かれている。顔や体の擦り傷も丁寧に手当てがしてあった。眼鏡のスペアは防具から探しだしたのか近くに置いてあった。
黙っていると向こうが話かけてきた。
「本当はさ情報を聞かなきゃいけないんだけど、聞いたら君すぐに帰えっちゃうよね」
「そうですね」
「かといってずっとこうしてる訳にもいかないから、どうしようか迷ってたところ」
「できれば早めに帰してもらえると助かります」
「んー動けるまで1.2日かかるし今日はひとまず情報を聞こうかな」
「わかりました」
「魔獣を操る奴の情報を知りたい」
「情報ははっきりは持ってないです。末端の冒険者ですから。ただ、私見なら」
「私見か…その私見に至る迄の話を」
ソードは事の始まりと自分の調べた事実を話した。カウロックに魔獣がでて自分たちが倒した事から始まり、グリーンセルやダンケルに国の上級討伐依頼が増えた事。そして、依頼とは別の単独をしていると。
「なるほど、まあ経緯は何となくわかったよ。肝心な事が2.3抜けてるけどそれが君の言う私見?」
「そうですね」
「じゃあ、その私見を聞きたい」
「どこから…?」
「どこでも」
「では…領土戦をとめたいです。正確には領土戦でかり出される魔獣を止めたいです」
「!?」
ビックリした表情があからさまにわかった。
すごいな…
こちらが隠すまでもなくわかってるのか。
本気で単独か…?だとしたら…
冷や汗をかきながら笑ったような悟られたというような顔で話しかける。
「…君はどこまで」
「何も知りません。今までの総合的判断と想像力です。なので国の事は国がして欲しいです」
「そう…続きは?君が第4にいた理由は?」
「これが本当に起こるならですがすでに魔獣が動き始めてます。なので第4深層に来て様子を。どこまでの深層まで魔獣をかり出そうとしているか調べてる途中です。幸い第4まではかり出されていないかなと、せいぜい第3半ばまでです。ただこの先は私が4層まで来れている以上有り得ない事ではないですね」
「…それから?」
「更に私見になります」
「言わないはないよ」
「わかりました。命の補償はしていただけますか?」
「情報しだいかな」
「私の大切な人の補償は?」
「それも同じ」
「確証は?」
「できない。というか見せれないんだよ。ただ、この言葉と私達を信じてもらうしかない」
「そうですか」
少し考える。
「カウロックとグリーンセルに匂わせたヒューズが黒幕かと考えてます」
「…そうか」
困ったような笑顔を見せた。
「私を殺しますか?」
「……。」
「私見だろ?」
「そうですね」
「必要ないよ、君は領土戦をどう思う?」
「何も」
「そうか」
「…私は魔獣と」
「共存だろ?」
「はい」
「長話になってしまったね。もう少し休んでよ、もう無理に眠らせないから。約束する。それと助けた事とこの情報で貸し借りなしだ。マントは気まぐれだから気にしないで」
「それより、早く帰してもらえると助かります」
「いいよ、君の大切な人達に連絡しとく」
「ありがとうございます」
男は部屋からでていった。本当ならソードといるはずだったが話を聞いてそんな事すら忘れて報告に行った。
「あれ?報告自分で行くの?」
「行く」
真剣な顔つきに一緒についていった。
「あの子を……手に入れる」
「随分だね、そう言えば面白い事がわかった。あの子クラークス家だった」
「!?」
ピタリと足が止まった。
「おい、それって。お前こそ」
「ビックリした」
「だよな」
また歩きだす。
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「あはは、とりあえず報告が先だ」
「了解」
□□□
レイとロキは大丈夫だったかな…
俺の心配…してるだろうな…
…………。
あれが……伝術士か
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