夜の冒険者は牙をむく

かぷか

文字の大きさ
上 下
74 / 130

74 レイの家再び ②

しおりを挟む

「お前はいつも急に来るから驚ろかされる。後、もう少し家に顔を出しなさい」

「……。」

 いつもなら、研究室に籠りっぱなしの父親が一番初めに来た時点ですでに状況は異常事態だった。レイはなるべく冷静に話した。

「紹介したい人が居ます。ソード=オーデナリーとロキ=フォレスターです。どちらも今、組んでいる冒険者です」

「「初めまして」」

二人は立ち上がりペコリと頭を下げた。

「初めまして、私がレイの父親のルーベン=マグノリア=クラークスです。いつも息子がお世話になっています」

握手を求められソードとロキは素直に答えた。

「案内係に聞いたかもだけど…」

と、レイが話をしている途中だったがルーベンが遮る。

「君がソード君なんだね。レイから話しは聞いているよ。いろいろ、聞きたいのだが…」

今度はレイが遮る。

「今、着いたばかりだから。先に部屋に荷物を置きたい。話しはそれからでも」

「あぁ、そうだな。荷物を運ばせよう。歩きながら話そうじゃないか」

 使用人を呼び、すべての荷物を運ばせた。ルーベンはソードの隣に付き、ロキは少し離れた後ろに。レイはソードに言われた通り守るようにロキの隣に行き警戒しながらついていった。

「ソード君、歳はいくつ?」
「23です」

「レイは22歳だから1個上か」
「はい」

「レイと組むのは長いのかな?」
「3年ぐらい経つと思います」

「そうか、レイはどうだ?」
「大変優秀で頼りになります」

「そうか、よかった」

 普通の会話なのにレイには緊張が走る。ロキは二人を見守るしかなかった。

「ロキ君は長いのかな?」
「あ、はい!」

急に振られて慌てて返事をするロキ。ソードがゆっくり説明する。

「冒険者として組み始めたのは彼が学校を修業してからになりますので1年経ってないですが、レイさんより先に知り合ってまして。私との付き合いはロキの方が長いです」

「そうか」

「なら、ロキ君は18歳かな」
「はい!」

ゆっくり足を進める。

「ソード君は冒険者と聞いたが魔獣と戦ったことは?」
「有ります」

「そうか、では私の研究室に一度来るといい」
「はい、是非」

「ソードを研究室に連れていかなくても」

「ん?別にいいだろ。お前がを紹介するんだ。折角だから私のを案内をしたい」

「はい、宜しければお願いします」

顔色一つ変えず、レイを見ることもなくソードは答えた。

「さぁ、着いたな。家族を紹介したいがまだ揃って居ない。夕食まで部屋でゆっくりしててくれればいい。暫くはいるんだろ?」

「……俺達は報告したら帰る」

「…後でゆっくり聞こう。今日は泊まりなさい。ソード君、ロキ君ゆっくりしていってくれ」

「「はい、ありがとうございます」」

 ルーベンは玄関先の階段まで来てまた戻って行った。レイがドアを開けると愛想のない成長したハイルがレイ達を迎えた。

「おかえりなさい。初めまして、ハイルです」

「ただいま」

「「初めまして」」

の方々の部屋はこちらです」

淡々と喋りながら部屋に案内された。三人とも別部屋を用意されていたがすかさずレイが言う。

「広い部屋1部屋あればいい。三人とも同じ部屋だ」

一瞬戸惑ったが、ハイルは直ぐに対応して別部屋に案内した。

「では、使用人が来るまでゆっくりしてください」

軽くお辞儀をして出ていった。ロキはドアが閉まると同時にはぁーっと息を吐いた。
ソードはすぐに窓の外を確認したが特に動きが無いことを確認しベッドに座った。

「緊張感が半端なかったです」

「あーまだ、これからだぞ」

「え!?」

「だな、まさか親父が一番初めに見に来るとは思わなかった」

「レイさんのお父さん普通に見えましたけど。落ち着いた雰囲気で格好いい方ですよね」

「あれだけならな。ただ、いきなり研究室にソード誘う時点で怪しいけどな。問題は夕食とその後だな。まず、母親はうるさいから後、兄貴も。で、今の案内役が一番下の弟」

「え!?あんな、他人行儀なんですか!?」

「まーな、ほぼ会ってないしな。当然かもな」

「そう、ですか…」
 
先ほどから余り喋らないソードにロキが話しかける。

「ソード?」
「ん?」
「大丈夫?何か考え事?」
「あー大丈夫。それより、レイが大丈夫か?」
「あぁ。夕食後にちゃんと家族に話す。必ず二人守るから」
「レイさん、上手くいくことを応援してます」
「ありがとうロキ」

ソードが辺りを見回しながら言う。

「にしても、花と絵と女神像だらけだな」

「まーな、それが信仰とも言えるし。俺の部屋にもあるぞ、外してもまた全部もどされるしもう諦めた」

「すげぇな」

「部屋も俺が出ていったまま、ずっと子供扱いされてる感じ。ちなみに、俺がソードに勝手に片思いしてる所で止まってるから。結婚したの聞いたら、みんな半狂乱になると思う」

「えぇ…そんな駄目なんですか?」

「そうだな、属に入って無いからその時点で反対だしな~」

「うーん、難しいですね」

三人で話をしていたら、ノックがした。

「メア様が来られました」
「わかった」
「宜しければ三人でお越し下さい」

顔を見合せレイは返事をした。三人で下の階に降りてリビングに向かう。使用人にドアを開けられ中へ促された。ソファーにレイと同じ髪の色したメアが座ってお茶をしていたがレイを見るなりハグをしに立ち上がった。

「レイ~久しぶり~元気~?」

「久しぶり」

「レイが来たって聞いたから、すぐ仕事やめて駆けつけたよ~元気だった?よかったら座って~」

二人は促され席に着いた。レイ、ソード、ロキの順に座りお茶がすぐに用意される。

「レイ~紹介してよ~」

「こっちがソード=オーデナリーでこっちがロキ=フォレスター」

「へぇ~初めまして~レイの兄のメアだよ~」

「「初めまして」」

座ったまま頭を軽く下げた。人懐っこい話し方に愛想のある笑顔だが、どこか感情の無い目をした印象を受けたロキだった。

「君がソード君か。レイが連れて来るなんてなかなか無いよね~嬉しいな~全然家に帰って来てくれないしさ~どこで何してるかわからないしさ~みんな心配してたんだよ~」

「……。」

やはり、関心はソードに向けられる。レイが重い口を開く。

「友達ではない」

「あ~そうなんだ~じゃあ何?」

ピリと雰囲気が変わる。

「この間、結婚した」
「へぇ、そうなんだ~どっちと?」
「ソード」
「じゃあ、ロキ君は~?」
「…ソードの結婚相手」

「………ん?」

メアが訝しげにロキとソードを交互に見る。

「俺もロキもソードの結婚相手」

「…レイ~よくわかんない~説明して」

「二人ともソードが好きで譲れないから三人で結婚した」

「は?」

メアは目を丸くして三人を見た。レイは真剣に答え、ソードはお菓子を見ていて、ロキは目を反らしていた。

「ちょっと待ってレイ。三人て、三人?」

「そう」
「お前、ソード君に片思いしてんじゃなくて?」
「それは、もう了承済みでプロポーズした返事を最近もらった。だから結婚した」
「ロキ君は?」
「ロキもソード好きだから、それでいいって」

少し考えて言葉を発した。

「レイ、ロキ君とソード君の仲を裂いたのか?」
「いや、裂いてない。だから、三人」

「……。」

メアは無言になり腕を組み暫く天を仰いだ。そして意を決した。

「弟が大変申し訳ない事をしました」

ロキとソードに頭を深々と下げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

処理中です...