夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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66 魔の森討伐

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ばしゃばしゃ…ばしゃばしゃ…

 俺は今、大好きな人と川に入り、ばしゃばしゃと顔に水の掛け合いっこして戯れている。

訳ではない。

「眩しい」

「あ、おきた?」

「体が動かない」

「そらそうだ、てか動くなよ」

 襟元辺りを掴まれ、水の中で体を浮かされた状態で引きずられながら前に進んでる。見えないが水しぶきの音がする。

服が水に濡れ体に浸透して気持ち悪い。首のあたりも引っ張られて苦しい。体、冷たいしだるい。

「この辺まで運べれば大丈夫かな。レイ担ぐの大変だから水の中入って運んだ」

思い出した、俺はソードと討伐に来てたはず。

「どうなった?」

 そうだ、久しぶりに魔の森に行ったんだ。そこで魔獣を追いかけて。霧が途中からでてきたんだ、んで黒い影が見えて…

「あんまり、しゃべるなよ。魔獣追いかけてて、霧がでてきたんだよ。んで、その霧がそもそもまやかしで、レイの魔術で霧を晴らしたまでは良かったんだけど。一匹が俺を狙い、もう一匹がレイを狙ってて。レイが倒そうと思ったら、先に魔獣がお前の前で自害したんだけど、はぜたその体から毒針がでてそれがかすった」

「……。」

あーだから体が動かないのか。

「毒だけど多分死なないから安心しろ。体がしばらく動かないぐらいだと思う。解毒も一応打ったからもちょいしたら動くかもな。ちなみにあそこに置いといたら危ないから今運び途中」

多分死なない。それ、安心できない…
まあ、いいや。体がだるい。

 ソードは川岸にレイをゆっくり動かし移動した。濡れてる服を手際よく脱がしてゆく。上半身を脱がし服を絞り木にかけた。

「まだ、魔の森だけどここなら数体来ても大丈夫だし安全かな」

数体きて安全って言わなくないか…まぁ、ソード居るから大丈夫か。

 ソードも着ていた上を脱ぎ、濡れた服を絞る。レイに近づき解毒剤を打った腕を見て首の脈を調べた。大丈夫と思ったのか、濡れないように持っていたフードをレイに掛けた。

「動けるまで、しばらく休んでろー」

レイは目を閉じたまま頷いた。
ソードはレイに付かず離れずの場所に立っていた。

解毒が徐々に効いてきたのか体が少しずつ楽になる。手が動かせると思ったら急に体が動きだした。

「動ける」

「ん、良かった。体冷えたしとりあえず帰るか」

「わかった、助かった。ありがと」
「いいよ、どういたしまして」

 手際の良さも判断力も流石だな。自分が逆の立場ならすぐにできたか疑問だな。ソードは一人でいるのと違うから大変だっただろうな。んーやっぱ一緒にいると勉強になる。これが普通の魔獣なら俺も対処できたかもだが。俺の反省点は何処だ。

「そーいや、あの魔獣が自爆する時にレイの方に近づいてくれたから俺は助かった。俺の方に来てたら、俺死んでたかもな」

 胡座をかいて少しゆっくりした。まだ乾いていない服を木から下ろしソードがレイに手渡した。ソードから借りたフードを交換するように手渡した。

「そうなんだ…」

「ん?お前に落ち度はないけど」

「…反省点は?ソードいなかったら死んでるし俺」

「……まぁ、強いて挙げるなら自爆前に魔術でそれを軽減策とれたら良かったかもな」

「うーん、判断力?」

「それもあるけど自爆する直前で氷魔術で撥ね飛ばすみたいな。魔術使わないからわかんないけど。あと、飛んできた破片なり毒針を想定して氷で無力化するみたいな。どちらかといったら想像力かな」

「なるほど…」

てか、ソードにも毒針とんだよな?
俺に近づいて来たとはいえ無傷だよな…なんでだ。

「後は…」

「後は?」

「まー好き嫌いあるけど、フードマントあったら良かったかもな」

「なるほど」

そうか、それで守ったのか。何かあったら一回は確かに猶予ができるな。それに、いろいろ使えそうだし。だからソード着てるのか。納得した。

「ただ、フードは良し悪しあるからどちらでもだけど。今回はあったら良かったってだけ」

「悪い時は?」

「魔獣にじゃなくて、複数人で組むときフードは単体なら良いが3人以上になると微妙かもな。動き鈍くなるし、周りとの連携とか相手の印象とか」

「へぇー印象とか大事なんだな」

「まぁ、できるだけ情報を与えたく無いし。こちらも探りたいし。そう言うのは意外と大事だな」

「そうか」

「仮に、三人フードと三人フード無し。どっち身構える?」

「三人フード」

「だろ?これは、凄く単純な例だけど複合して相手の裏をかいていかないと自分の情報が操作しずらい。情報は弱みになるから」

「まるで、人と戦うみたいだな」

「ん?戦うだろ…魔獣より面倒な奴が多いからできるだけ避けたい」

「ふーん」

ソードは対、人も考えてるのか?意外だな。ただ、無くはないが重要なのか…多分重要なんだろうな。

「いけるか?」

「大丈夫」

 カウロック内の魔の森に来ていた俺達は行きのように強行せず宿屋を手配した。

「なぁ、ソードはどれぐらいフードマント持ってんの?」

「んー10ぐらい」

「意外とあるな」

「用途によって分けるしな」

「へぇー。じゃあ、俺と会った時の覚えてる?」

「うーん、魔の森だろ…多分黒系じゃないかな」

「そう!あれ、夜だから?」

「まぁ、暗いからだな。明るいの着ても悪目立ちするだけだし」

「好きなのあるの?」

「あるよー黒いやつ」

「家帰ったら見せて」

「うん」

「俺も少し欲しい」

「機能とかなら考慮できるけど、色とかは好きなの選んだらいいよ」

「わかった、じゃあ今度一緒に」

「いいよ」

とはいえ、魔術の訓練足りないな~
いい方法ないかな…

うーん、わかんないからとりあえずキスしとくか。

バシ!

「痛い」

「とりあえずでキスすんなよ」

そんな事まで分かるうちのソードはすげぇ…

「すみません」
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