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65 ゼンテ
しおりを挟むヒューズ国内にある「ゼンテ」という街。山と森に囲まれた静かな街で、一部の観光客に人気な場所だ。ソード達はロキが正式に冒険者となったと同じに住み慣れたグースから引っ越した。
いくつか新しく住む場所見に行き、三人で選んだのがこの家だった。湖の近くの別荘のような場所。なぜここになったかはソードには理由があるのだがそれをまだ二人は知らない。とにもかくにも満場一致で決りだった。
「金額上がりましたがやっぱりここで良かったですね!」
「だな、その価値はある。やっぱりここが一番良かった!」
「お菓子屋が…遠い」
「「まぁまぁ」」
二人はソードの肩と腰に腕を回し部屋に行く。一階にはリビングキッチン、リビングの奥に寝室とソードの書斎。二階にはロキとレイが好きに使っていい部屋だが今は使い道がないので荷物部屋になっている。
一階のキッチン隣にはソードの希望したお菓子専用の小さな部屋にお菓子が所狭しとストックされていた。そこから、お菓子を選びソードを真ん中に三人でソファーに座った。
「これからどーする?」
「俺、魔の森行きたいです。なので実績つみたいです」
「だよな~」
三人で組むにはロキの実績がまだ足りない。少なくとも中級以上にならなければ魔の森の依頼は受けれなかった。
「んーロキの誕生日いつ?」
「一期1月1日になってます」
「へぇー」
「孤児なんで、いつ生まれたか実際はわかんないですが集会場で登録されたのがそれですね。結構適当で、大体一期1月1日か二期7月1日みたいに期でまとめて登録されてます」
「なら、18歳に一番のりだな。成人おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、殆どの依頼受けれるな。でもまだ実績足りないよな~他より受けたとは言え。どこまで受けれる?」
「実績500あるぐらいなんで、下級の中~上位?」
「そうか~」
「もう冒険者だから何個受けてもいいんだよな?」
「そうだな~ただ、誕生日がきて18歳になってないとダメとかもあるけどロキは問題ないな」
「ソードはどうだったんだ、学校でてから。俺は適当に組んだり一人で適当にしたけど。ちなみに、俺は魔の森いきたくてめちゃくちゃ実績上げてた。中級の1000実績以上からだっけ?魔の森依頼受けれるの」
「そうそう」
「ちなみに、レイさんはどれぐらい受けたんですか1日に」
「そうだな、効率重視だったから5件ぐらいかな。二期には行けてたかも」
「うーん、別に連れてくだけならいいけど。意味ないしな」
ソードは少し考えて提案した。
「ゆっくり実績つんでもいいけど、今はとにかく数多くこなしたほうがいい。今から条件出すけど少し俺と組むの遅くなるけどいい?」
「いい」
「なら4ヵ月で実績1000越え行けるか?まぁ5ヵ月でもいいけど」
「やる」
「今のは条件じゃない、これから言うのが条件。護衛や今までしたことの無い依頼を受けていいよ。全部そうしなくていいけど、自分で選んで判断しておいで~」
「わかった」
「護衛いいのか?」
「いいよ、俺と組んだらできないってだけだから」
ロキはこの話を聞いて準備でき次第、討伐に向かおうとすぐに決めた。でなければ意味がないと。
「ここに戻る必要もないし通ってもいいし。好きにしたらいい」
「わかった」
「ロキ、最後に一つ。自分の身は自分で守れ」
「わかった」
ソードはにこりと笑った。
「なぁ、ソードは実績1000まで上げるのどーしたんだよ」
「あーレイと変わんない。誰かと組んだり一人でした」
「いつから魔の森いったんだ?」
「あー学校でて2ヶ月しないぐらい。1ヶ月半ぐらいか」
「あ゛?」
「なんだよ」
「俺でも5件大変だったのに!どーやったんだ!」
「体が動く限り依頼受けた」
「「……。」」
「ソードは全然参考にならない」
「なんだよ、ロキまでー」
□□□
ご飯を食べ終え寛いでいたレイだったがロキは準備を始めていた。
「ロキ明日から行くんだろ?」
「いえ、もう少ししたら出ます」
ソードが大きな風呂敷を背負ってくる、ガシャンとロキの前に置いて広げた。中にはいろいろな武器が入ってた。
「好きなのいいよージャンクだし」
「うわ、てかこんな沢山どこにあったんだよ」
「えーいいの!?」
「いいよ、適当に何個でも」
「まぁ、学校の剣は使えないから使いやすいの選びなよ」
「なんで?」
「初心者狩りなんて良くあるしな、逆もしかりでベテランが初心者の剣持ってて騙しうちもあるからな。いい奴なんて2割ぐらいだな」
「確かに」
「じゃあ、これとこれ」
ロキは大剣と長剣の間の剣と小さなダガーを持っていった。ソードは後一つ選べと言ったので、ロキは更に短剣を選んだ。
二人に見送られロキは夜のゼンテに消えて行った。
「ロキはなかなか忙しいな」
「ま、最後の試練だな」
実績をこなす4ヶ月以上ロキは1度もこの家に帰る事はなかった。
□□□
ロキは実感していた、ガルシアの剣術学校がいかに自分を守ってくれていたかと。自分の孤児時代を思い出して身を引き締めた。そうだ、兵士がいい人とは限らない。ソードが冒険者を良く観察しろと言っていたのを思い出した。
人より強かったから自信がついていたがその分、傲りがでていたと。まずは、宿探しと討伐依頼所へ。すべて一人でこなす、誰も助けてはくれない。この不安な気持ちは、いつも二人に助けられていたからこそ感じ得るものだった。
行きなれたガルシアに行く。行きながらいろいろ考えた。深夜の討伐依頼は大体上級者のものが多く治安も良くない。かといって、受けないとお金も続かない。成人してからの方が数倍厳しいのだと。
昔レイがソードに何かあった時、連れていってと言ったのを思い出した。ソードはあっさりと連れては行かないと言ったのにドキッとした自分がいたのを思い出した。あのレイでさえ、糸も簡単に切り捨ててしまう。ソードと組む怖さと自身の弱さに冒険者としてソードの横にはまだ居れないと強く思った。
「4ヶ月…全然足りない」
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