64 / 130
64 成果
しおりを挟む厳しい冬季も終わり暖かい季節かやってくる。学生達は各々の職に就き成人となる。学校を惜しむ者、新たな生活を待ち遠しいと思う者。
ロキの学校生活もあと数日で終わる。
「とりあえず荷物全部、新しい家に運ぶ手配しとくな」
「はい、すみません手伝ってもらって」
「三人だから早いな」
ソード達はロキの寮の明け渡しの為、荷造りを手伝いに来ていた。綺麗に整頓されていて殆ど手間はかからなかった。
「ロキ、友達とかいいの?会ってこいよ」
「成人職の式に会うから大丈夫です。それに、すでに職確定の人は見習いで就いてる人もいるし皆には式でしか会えないですね」
「へぇー今そんな感じなんだ」
「はい」
「俺の時まだギリギリみんないたな。てか俺、式でなかったし」
「「え!?」」
「どうやってプレートもらっ…まさか偽造か!?」
「違うわ!俺、落ちこぼれだったから2日ぐらい遅れて貰いに行ったんだよ。だから、式も行かなくていっかって。ちゃんと2日後だけどもらってるからな!ちなみに、学校の単位がダメだっただけだから!」
「「……。」」やっぱり、変わってる
「無言になるな、いいんだよ!ちゃんと職についたから!」
「レオさんにそこら辺詳しく聞きたいです」
「だな」
荷造りも終え、三人は恒例となりつつあったレオの部屋に着いた。レオの扉は半開きになり中からはガタガタと音がしていた。一応ノックをして入る。
「レオいるか?」
「おう、いる。勝手に入れ」
荷物の山から声がした。三人はかき分けながら入った。
「すげぇな、この荷物。全部お前の?」
「まーそうだけど、資料は捨てないといけないから半分以上は無くなるな」
「質素なイメージでしたがどこにこんなにもあったんですか?」
「俺もそれ知りたい。お前ら丁度いい、手伝ってくれ!」
「えー」
ソード以外は二つ返事で片付け始めた。袋にどんどん要らないものが詰められドアの外に出された。
「どんだけあんだよ!」
「今までの生徒分だからな~結構ある」
「そーいやレオ、ソードが成人職の式に行かなかったって本当?」
「あ?そーいや、そうだったな。探しても居なくてよ。ニケに聞いたら単位ギリギリで2日後にくるって聞いて二人で笑ったな」
「「本当だったんだ」」
「んで、ソードが認定証貰いに行く日にニケがついてくって言うから待ってたんだが。コイツが証書貰い終わって、俺が式だけでも来れば良かっただろって言ったらコイツなんて答えたと思う?」
「「??」」
「人が多いから嫌だってよ。式だぞ成人職の式!」
二人は大笑いした。
「ニケも大笑いでさ、俺は呆れてたの思い出した」
「なんだよ、いいだろ」
「本当、お前ぐらいだよそんな事するやつ。俺の生徒にも今まで一人もいなかったぞ」
「いいんだよ!」
四人はソードの学生時代の話で盛り上がった。
「あー終わった~間に合った。ありがとな三人とも」
「「いいえ」」
「レオお前この後は?」
「何もない」
「じゃあ、ロキの成果見たいから第四行こうぜ」
「いいな!」
「はい!」
第四訓練所
ソードとレイが見守る中、レオとロキは剣を握り構えていた。
「始め!」
ソードが声をかけると二人は剣を振った。ロキがここに来て約二年半。あっという間に過ぎた。
来年からは誰一人この場所には居ない。ロキがレオに全ての集大成を見せる。ソードはロキの成長を余すことなく見届ける。レオにロキを任せて本当に良かったと感謝した。
ソードからロキを預かって二年半か。早かったな、コイツはこんなにも成長したのか。ソードがロキに何を渡したのか最近ようやくわかった。こいつはしっかりそれを受け取っていた。ロキは俺にもそれをさせてくれた。
こんなにも、こんなにも人を育てる事の喜びを感じたのは初めてだ。ずっとお前は無償の愛を持って育ててたんだな。俺もやっとわかったよ。最高に教えがいのある俺の一番の愛弟子だ。
キン!と一際大きく鳴り響く。
「ロキ」
剣がロキの目の前に来る。決着はついた。ロキはポロポロと涙を流しながらレオに言った。
「レオさん…」
「二年半お世話になりました。ありがとうございました」
レオは剣を納めた。
「まぁまぁ、だったな」
とニコッと笑った。
ロキは「わー」溢れる涙を押さえることができず号泣してレオに抱きついた。もう、朝の稽古も手合わせも成果もレオにはみて貰えない寂しさと、今まで自分に注いでくれたレオの愛に感謝した。
「いいのか?」
「あ?」
「レオにロキとられちゃうかもよ?」
「いいんだよ」
「俺はロキがどっち選んでもいいけどな」
「ふんっそしたら、レイ選ばないからいい」
「は?何でだよー」
「ロキ優しいからロキがいい」
「お前、前々からロキに甘いよな!」
「同じだろ」
「いや、俺には冷たい!俺にも優しくしろ!」
「なんだよそれー」
こうして、ロキの成果はしっかりと三人に見届けられた。数日後、ロキは認定証と冒険者プレートを受け取り学校をでた。レオは皆が学校を出たのを見届け後、この国で一番権力のある建物に向かった。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる