夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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59 ミイナの研究室 ③

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 研究施設から帰宅した二人は何から話そうか考えたがうまく言葉が見つからなかった。ソードの焔目についてわかったにも関わらず、スッキリとした気分にはなれなかった。逆にわかったことによりソードの苦しみが自分たちの計り知れない域にあるとわかってしまった。が、当の本人は全然気にしていなかった。

「なぁ、スメルの話し長いよな。途中で飽きちゃった。お前ら大丈夫だった?」

「まぁ、そうだな」
「うん、大丈夫」

「初めて聞くにはいいけど、俺は度々聞かされたから面倒くさい」

「「そっか」」

「ん?お前ら元気ないな。何かスメルに言われた?」

「「いや」」

と言いつつ元気のない二人。

「うーん、何か気になるなら聞いていいよ。お前らが考えいる以上に自己完結してるから大丈夫」

 レイはソードが暴力を受けていてそれにより魔力が無くなった事、レオからスメルの名前を聞いた話や突然わかる能力についてソードに確認した。

「そうなんだよな、いつの間にか無くなったって思ったんだけど、中に閉じ込められてたんだな。目が悪いの暗い所にずっと居たせいかもって思ったけど、それも魔力のせいだったんだなと思った。たまにアイツの話は役に立つが調べさせろってうるさいんだよな」

レイはさらに気になる事を聞いた。

「なぁ、急にわかるとき夢以外にも種類あるんだな」

「そう…だな。初めはあんまり気がつかなかったけど、黒いもやもやしたのが腕とかに見えたり。急に人の名前が浮かんだり。後、夢な。とりあえず、その三種類は確実かな。何がどんな影響が出るかはその時によるから全然わかんないけど」

「ねぇ、ソード。それ毎日見えるの?」

「んー見える人だけ」

「そっか…それ…」

ロキが言葉選びに困るとソードから答えた。

「んー今は辛くないから大丈夫。自分で線引きしてるから。知り合いしか助けないって決めてから開き直ってる。前は何とかしようと必死だったけど、無理なんだと気づいてから今は見てみぬふりかな」

「…そっか。じゃあ、何で俺は助けてくれたの?」

「……。」

「うーん。ロキも黒いの見えてたんだけど…あのまま死んじゃうの嫌だなって思って。もしかしたら、一緒に居たら回避できて助けれるんじゃないかと。皆は無理だけど一人はなんとか助けたかった俺の勝手な我が儘かな。後、ロキならなんとかなるって思って。すまん」

「……ソード謝らないで」

「あ、因みにもう黒の見えないから大丈夫だと思う。ロキをサルノに連れてきたら何か見えなくなったから。多分ちゃんと助けれたのロキが初めてかな?」
 
 ロキは俯いたままだった。レイはロキの肩に手を乗せポンポンと叩いて「良かったな」といった。孤児だった自分はソードの知り合いではなかったし、当時からずっと聞きたかったが聞けなかった。ソードの助けたい一人に自分が選ばれたことに胸が熱くなった。

「ソード、一つ疑問だが。魔力が閉じ籠って焔目が何かのきっかけで光るのはわかったが、きっかけに心あたりないのか?能力が勝手に出るならニケの時は光ってなかったしレオの時も光らなかった。矛盾しないか?」

「うーん、見えるのと光るのは違う理由かもな?氷魔術と火魔術みたいに。何かが見える能力が三種類でるのもそう言う事じゃないかな」

「なるほど、ちなみに俺とあった時は魔獣討伐だったよな。それに前、冒険者にバレたのも討伐って言ってたよな」

「そうだなー」

「んで、この間のゼンテか…」

「強いていうなら、普段と違うのはいつもより魔獣討伐が楽しいというか…途中で気持ち良くなる感覚に近くなるんだよな。戦ってると気持ちが高揚するみたいな」

「へぇー」

「じわじわした後、ふわーって。凄い倒してるのが気持ち良くなる」

「へぇーじゃあ、ゼンテの時は?」

「うーん、昔の事考えてて…何で魔力出なくなったか突き詰めてて。その内、どうでも良くなった辺りから討伐してる時の感覚に似てたなって思った所までぐらいなら覚えてる」

「そうか…てことは討伐に限らず近い心理状態になると光るのかもな」

「あーかもな」

ソードは起き上がり、ロキの手をとりベッドに座らせ自分もその隣に座る。

「全然関係ないけど、明日もっかいスメルに会いに行くかな」

「やだ」

ロキが咄嗟に言った。

「そなの?」

首を傾げながらソードがロキを見るとレイが手助けをした。

「まぁ、ソードの嫌がる事を平気で言いそうだしな。研究心のが強そうだから、俺らからしたら好きな人にそんな事されたら知り合いでも気が気じゃないさ」

「そうかーでも、昔からあんなんだしな。ロキ三人で行っても嫌?」

「嫌」

「ソード逆に何で行きたいんだよ」

「お菓子、持ち帰り忘れた」

「「………。」」

その後、二人に叱られたソードだった。

□□□

「スミマセン、研究室は今はいれなくてこんな応接室で」

「いいよ」

 次の日、急に三人が現れてミイナはビックリしていた。てっきりソードが嫌な思いをしたから、もう来ないかと思っていた。しかも、スメルに会いにソードから来たというので更にビックリした。

「ソードじゃん~またね、が今日とは!俺に会いに来てくれた?それとも昨日の話しの続き?」

「それは、どーでもいい。昨日、持ち帰り忘れたお菓子を貰いにきた」

「えーまぁそうだな。渡しそびれた」

ソードの後ろにいる二人は呆れていて、斜め前にいるミイナもビックリしていた。のそのそと歩きながら紙袋をソードに手渡した。

「じゃあな」

「ねぇソードの体、今度見させてよー」

 その言葉にレイとロキが反応して、二人がソードの肩に腕を乗せた。二人をチラリっと見てからソードは言った。

「あー俺、こいつらと付き合ってるから二人の許可下りたらな」

二人はソードの頭にキスをした。スメルは驚いて目を丸くしたまま声がでなかった。ミイナはクックッと笑らいを堪えていた。

「じゃあ、またな」

三人が扉を閉めて出ていった後、部屋からは大きな叫び声が聞こえた。

これからまた、のんびりと時間をかけてグースに帰る。
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