夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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57 ミイナの研究室 ①

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 リッカに一泊した後、ヒューズから隣国のウェザーに入った。

魔術国とも呼ばれるウェザー。中でもウェザー中心街とレゼルバは1.2を争うほど発展している。
所々に大きな建物があるのは、殆どが研究施設か祈りの場だった。

魔術を使えなくとも働く者は多く、ガルシアの様に活気溢れる。街には同じ服装同士が集まり買い物をしている場面を多々目にした。

「魔術士の方でいっぱいですね」

「まーな、でも本当の魔術士はそんなにいないかも。今いるのは殆ど研究職員だろうな。服装だけだと皆そう見えるよな」

「はい。てっきり、皆魔術士かと思いました」

「研究所同士だったり信仰で同じ服装だったりするからな、仲間意識みたいな感じな」

「そうですか」

「レイの友達はどこの研究施設にいんの?」

「第8基施設にいる」

「へぇー優秀だな」

「そうなんですか?」

「数字によってその研究の重要度が変わってくるんだけど、若い数字になればなるほど重要かつ国家機密と一般的に知られてる。まぁ、目を欺く為の建物もあるだろうけど。それだとしても第8は優秀だな。小さい施設入れたら130施設ぐらいないか?」

「詳しいな。そうだな、今も増えてるしな~。第8はかなり優秀だと思う。学校も首席だったしな」

「へぇー凄いですね」

「多分、研究室にいるからそこに直接迎えに行っていいか?」

「「いいよ~」」

 宿に荷物を置き蛇獣のカウロを使い研究所に向かった。カウロからも幾つもの研究施設を見れたが中には不自然に木に覆われ完全に見えなくしてある施設もあった。

「建物は古いけど、施設の中は結構最先端だな」

「「へぇー」」

「そーいや、俺のも一人ウェザーに行ったって聞いたな~」

「「へぇー!」」

「まぁ、変わった奴だったけど」

「「へぇ…」」

((ソードが言うなんてどんな奴だ…))

  レイの友達が働く施設は200名ほどの職員が各々チームを組みそれを発表し国へ情報を提供し管理する。その研究内容は各研究所により異なっているが、第8は中でも重要な研究施設であった。

 受け付けに行き呼び出してもらう。暫くしたら、ふわふわとピンクの髪を揺らした男が歩いてきた。

「わ~レイ久しぶり!」
「よう、ミイナ久しぶり」
「初めまして~ソードさんとロキさんかな?」

可愛らしい男は二人に近より握手をした。ソードより少しだけ小柄で研究職員には見えない見た目だった。

「「初めまして」」

「レイの友人のミイナ=カシューです。レイとは同じ学校出身です。宜しくです。スミマセンもう少しだけ待ってもらっていいかな?ちょっと長引いてて。すぐに終わると思うけど」

「大丈夫だ、その辺で待ってる」

「お二人を待たせてしまって申し訳ない。良かったら2階の中庭にテラスがあるのでそこで待っててください」

そう言いミイナは駆け出していった。三人は2階のテラスへ行きお茶をして待った。上から日差しが入り明るくキレイなテラスは意外にも誰も使用していなかたった。

「誰もいないな」
「多分、皆研究室だな。ここを使うのはお客さんだけだと思う」

「「もったいない」」

「ははは、そんなもんだよ」

 テラスを囲む様に幾つものドアがあり、何人か行ききしているが二重扉で中までは見れない。暫くしたら上から声がして、ミイナが声をかけてきた。

「レイ~終わった~こっちくる?」
「いいのか?」
「終わったからいいよ~上司いるけど」
「じゃあ、行く」

三人はミイナの研究室に着き中に案内された。中は机と椅子に必要最低限しかなかった。部屋の奥には3つほどドアがあった。

「お待たせ~片付けたから何も無いけどね。今、奥の部屋に上司がいるから紹介するね。最近雇われた上司だけど凄い優秀なんだよ~かなり変わってるけど」

奥の扉を開け、ミイナよりもかなり小さいぽっちゃりした男がのそのそ出てきた。ミイナが紹介する前に声をあげた。

「うわああああー!!」

その声に三人とも驚く。声の主はソードだった。

「うわぁ~!ソードじゃ~ん!!!運命!?」

その男はソードめがけて言い寄って握手を求めた。ソードは壁まで一気に後退り、その様子を見てロキがひょいと抱えて持ち上げた。

「くんなよ!!」

「いいじゃんか、久しぶりじゃーん!元気?なに?どーしたの?俺に会いに来てくれた?」

「違う!偶然だ!」

 二人が知り合い同士だった事に驚くミイナは上司に話しかけた。

「スメルさんとソードさん友達ですか?」

「知り合い!!」
「友達!!」

「何で友達なんだよ!異端児が!」

「昔からの友達じゃんよ~ソードいるなら、俺もご飯いきたい~話したい!」

「いいですが、皆さんはどうですか?」

「嫌だ!!!くんな!!それに、今日はミイナに会いに来たから駄目だ!!やだ!」

「っていいたいけど、研究あるから駄目だった」

「だったら言うな!!」

 ゆっくりソードは下ろされ足が着いたとたん、すぐにドアに手をかけてここから出ようとした。

「待ってよソード、明後日会おうぜ!久しぶりだし研究室においでよ!!」

「やだよ」

「珍しいお菓子あるんだー沢山。沢山だよ」

「うっ…う゛…じゃあ、貰ったら帰る。じゃあな」

ソードは部屋をそそくさとでていった。三人もソードを追うように出てきた。

「ソードさん、うちの上司と知り合いだったんですね!ビックリ!」

「すまん、まさかアイツに会うとはおもわなくて、取り乱した。本当ごめん」  

ソードは動揺を隠すためフードを被り歩きだした。レイがミイナに話しかる。

「今の上司?」

「そう、スメルさん。ちょっと前に来てさ、いろいろな研究所転々としてるって言ってた。すごい知識持ってて毎日研究してる。ちょっと頑固で変わってるけどね」

「あれがスメル…か。ソードは何で知り合いなんだ?」

「アイツは、ヒューズの魔術科に行ったんだよ。魔術使えないのに好きだからって。剣術戦科とたまに部屋が隣になって何でか俺に付きまとうようになったんだよ。商人科に移動しても部屋に来たりしてた。悪い奴じゃないが、必要以上に近寄ってくるしうるさいんだよ」

「「へぇー」」

「あぁ…スメルさんなら、やりかねないですね。何かソードさんにハマったんですかね?すごい、喜んでましたし。いつもなら研究ばかりして部屋からでてきませんから」

「「へー」」

「アイツの話しはいいんだ、ここ早く出るぞ」

 苦笑いの三人をよそにソードは、一目散に施設を出たのだった。その夜、楽しく四人でご飯を食べながら会話を弾ませた。
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