53 / 130
53 休暇
しおりを挟むヒューズの北西にあるリッカは数十年前に大きな領土戦が行われていた。奪った領土はヒューズ国の物となりリッカとして合併している。その名残もあり剣士や兵士色が強く、また昔からの考え方も根強い。そんなリッカに三人は向かっていた。
「グースからガルシア、リッカの道のり?」
「そうだな~それならだいたい片道早いと2日で行ける。でも、そんな急いでないなら3.4日で着くかな」
「へー」
「それか、グースからゼンテ、ガルシア、リッカ周りだと結構ゆっくり行けるかもな。どっちでもいいけど」
「ゼンテって何があるんですか?」
「んー森と湖と山がある。山はグリーンセルに繋がってんじゃないかな。山越えなければ全然安全」
「「ゼンテがいい」」
「じゃあ、ゼンテで泊まってゆっくり行くか」
三人はハブウルフを使いゼンテに入った。山奥の宿を取りゆっくり過ごした。2階の窓から見える場所に湖があり、夕日が当たってキラキラ揺らめいていた。
「凄いキレイ」
「こんないい宿あったんだな」
「ゼンテは結構キレイな場所も多いかもな~静かだし好きかも。気に入ったなら、もちょい泊まる?」
「「泊まる!」」
「じゃあ、そう言ってくる」
ソードは宿の延長をしに下へ向かった。あまり人が来ないのかすぐに快諾してくれた。ソード達の他に2組しか滞在者は居なかった。近くの地図を貰い、甘い物を買って部屋に戻った。明日は近くを散策しようと話てその日はゆっくり体を休めた。
次の日、ロキは朝から元気に剣を振っていた。レオと体格は全然似ていないが行動はレオに似たなと思いながらソードは二度寝した。レイはロキより少し後に起きてシャワーを浴びていた。
朝ごはんの時間はとっくに過ぎていた。レイはソードの朝ごはんを下から取りに行き部屋に運んだ。
「ソード朝ごはん」
「……。」
「起きろ」
「……。」
カチャっとドアが開いて、ロキがシャワーから出てくる。
「まだ、ソード寝てる」
「まぁいつもの事だな」
ロキが濡れる髪を乾かしながらソードに近づき上からのし掛かった。
かぷ。
とソードの耳を食べたらビクッとなり「…起きるから、食べないで」と言いって、フラフラと起き上がり二人に見守られながらシャワーへ向かった。
「ソード相変わらずですね」
「あぁ、全然変わらない」
「あれから、何かあったりしましたか?」
「いや、特別何かは起こってないかな。ニケ以来飛びだす事もなかったしな」
「そうですか」
「そういや、ソードの実家の話はしたよな」
「はい、レイさんに教えてもらった以外は知りませんが」
「リッカ行くけど、寄るか微妙だよな」
「そうですね。俺はどちらでもいいですが」
「俺もだ、ソードの家に詳しいやつがいるってレオが言ってたけどそいつに会うかも迷ってる」
「そうですね…」
話の途中でソードが戻ってきたのでそこで中断してしまった。レイが用意した朝ごはんを一人食べ、遅い準備を整えた。それから、宿に昼ごはんを用意してもらいそれを持って散策にでかけた。
2階の窓から見えた湖を間近で見ると、かなり広く迫力があった。森に囲まれた湖の畔を歩く、ちゃぷんと小さな波を打ちキラキラと日差しを跳ね返していた。
「眩し~」
「思ったより広いな」
「何か魔の森に少し似てる」
「「え!」」
「こんな所あるんですか!?」
「まー似てるってだけだけど、あるよ」
「「へぇー」」
二人は早くソードとそこへ行ってみたいと思ったのだった。自分たちの知らないものを沢山知っているソードを少し羨ましく見ていた。
「なぁソード、家寄るのか?」
「あー今回は寄らない」
「わかった~」
「あー因みに、リッカは剣士とか兵士多いから嫌な思いしたらすまん。昔からそーいう奴多いから、多分見てるだけで嫌な部分あるかも」
「へぇー魔術もち隠した方がいいか?」
「もともとレイは隠してただろ、ふふ」
「だな」
「ロキも、見て見ぬふりしてていいから。絡まれると面倒なのは知ってるよな」
「うん」
そう言ってロキの近くに行きお菓子を渡した。
「嫌な事あったのか?」
「昔、ロキ殴った奴が兵士なんだよな。だから余計目にはいるしな」
「でも、そのお陰でソードに拾ってもらったんだよね、大丈夫。それより、ニケさんに会うの楽しみ」
「そっか」
「てか、レイさん魔術もち隠してるんですか?」
「あぁ、自分からは言わないかな。まぁソードには一発でバレたけどな。こっちで知ってるのはお前ら二人とレオぐらいかな~多分。まぁ、実家帰ったらバレバレだけどな」
「へぇー」
「魔術士でも俺はちょっと特殊だからな」
「レイ言っていいのか?」
「いいよ、どうぞ」
「お前、禁じ手使えるだろ」
「ぶはぁ!さすがソード。それもバレてたか」
「禁じ手ってなんですか?」
『禁じ手』とは禁じられた魔術。万物の生態を逸脱するため使ってはいけない魔術とされている。誰かに話しても、使ってもいけない術で、ただそれがあるという事実しかわかっていない。誰がどのように伝えたかも未だにわかっていない。そのため噂レベルで本当にそれがあると信じる者は少ない。
「簡単に言ったら公にできない魔術だよ。伝術士っていうのがいて、その人達しか知らない魔術らしいが伝術士事態謎で本当に居るかも確認されてない。まぁ、レイがなんで禁じ手知ってるかまでは知らない方がいいな。レイも言えないだろうし。魔術の種類はいくつあるかしらないけど、5個ぐらいはありそう」
「そうだな、詳しくは言えないけどな。その術は使ってはいけないし、話してもいけない」
「え!俺とソード知っちゃいましたけど」
「いいよ、ソードにはバレてたし」
「そっか、でも使わないなら持ってても意味ないのでは?それに、使わないようにすれば魔術士は教えてもいいような?」
「まーな、ただ禁じ手を使いたくなる場面が出たら使ってしまうだろうし、極力自分と関連付けたくないからな。俺が勝手に魔の森以外は魔術あんまり使わないようにしてるってだけ」
「そうですか」
「例えばだけど…ソード手貸して」
ソードの前に行き、手のひらを開かせ指同士を絡ませそのまま握った。見るとソードの手から炎が現れ手が燃えているように見えた。手は熱くなく、指を離した後も燃え続けた。ブンブンと手首を振って消そうとするが消えない。
「これは普通の魔術でもよくあるけど、禁じ手は中をそのまま中身まで操れるというか、浸透させれたりとか。逆に吸いとったりとか多分できる」
「多分なんですね」
「そうだ、多分なんだ。禁じ手と言われるのは、組み合わせと想像とで応用が利くから無限にできる。後は他人を操れてしまうから、実際に人には使った事がないから多分なんだ。俺も数個使えるけど、未だに人には使った事ないな」
「まぁ、禁じ手なんて言い方するからダメなんだが。言いかえれば人の命を操れる魔術みたいな。使うやつにかなり左右されるからダメなんだろうな。国はお前が喉から手が出るほど欲しいだろうな、使い道なんて腐るほどあるから」
「そうだな」
「お前の親父はそれの生産に勤しんでるんだろ、最終的には。こんな近くに使える奴いるのにな」
「そうだな、知ってるのはこれを教えてくれた人だけ。勿論、家族も知らない。ソードにも話すというか言ってはいけなかったからな」
「俺、聞いちゃった…」
「「大丈夫だろ」」
「てか、いつわかったんだよ」
「レイと初めて野宿した時」
「げ!あんな前からかよ、何でわかるんだよ毎回そーいうの!」
「んーなんとなく」
「怖い!お前のが禁じ手だわ!」
「うるせ!」
そう言うと消えない炎の付いた左手を湖の水につけてびしゃびしゃと洗いとろうとした。
「そんなんじゃ取れないから来い」
「わかってる!試しただけ!」
レイはソードの指と指の間に自分の指を入れ、ゆっくりと上げた。
「ん、とれたぞ」
「とれたー」
「不思議ですよね、魔術って」
ソードが自分の炎を手にずっと維持できてるのは、やはり魔力の持ち主だったからだろうなとレイは思った。また、その止めかたも知らないのは教えてもらえなかったんだなと。
そんな話をした後は、お昼を食べ更に森の奥を探索し時間を過ごした。日が暮れ始め湖が暗くなる。畔を歩きながら途中、ソードが「雨降るかもな」といい足早に宿に戻った。宿に着いた頃にはすっかり暗くなっていた。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる