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36 ロキとソード ③
しおりを挟む「レオ、悪い。少しロキと話す。後でもう一回来る」
ソードは体を起こししがみつくロキから体を剥がし手をとり自分の部屋に戻った。ロキは俯いたままソードの手を握っていた。
手を握ったままベッドとベッドの隙間に地座わりしロキも隣に座らせた。ちょっとした二人だけの空間になった。
「ロキ、ごめんな。急にあんな事になってビックリしたよな。ゴメン」
「……。」
「さっき、初めてソードって言ってくれた」
「……。」
「ロキがあんな風に思ってくれてるなんて思わなかった。ありがとうね」
「……。」
「俺、時間無かったから焦り過ぎた。もっとゆっくり話さないといけなかった」
「……。」
「……。」
ソードが少し動いて体制を変えようとしたら、ロキは立ち上がるかと思い手をぐっと握った。その反応をしてくれただけでソードは嬉しかった。掴んだ手を両手に握りかえロキを見た。
徐々に距離をつめロキに近づいた。少しだけロキが拒否反応を示したのでそこで辞めて声をかけた。
「ロキ、ハグしてもいい?」
「……。」
「少しでやめるから」
ソードは拒否されても良いいかと思いながらそっとロキにハグをした。俯いたロキに拒否される事はなかった。受け入れてくれたと思った。
「ロキの選択肢は今は少ないけど、その中で一番いいと思う選択をして欲しいんだよね。レオのいる剣術訓練学校はいい所だと思うよ。しっかりした所だから。でもロキが嫌なら無理に行かなくていいよ」
「行かない」
「そっかわかった。じゃあ、サルノの孤児集会場で俺がたまに会いに行くのでいい?」
頷くロキ。
「沢山はこれないけど、それでもいい?」
頷く。
「その代わり来たらロキと一緒にいる時間長く取れるようにする」
頷く。
「まず、ロキのする事は学校に行く。剣術を習う。これは身を守れるからやるんだよ。後は友達作って遊んで。民間依頼はご飯食べれる最低限にして。できる?」
頷く。
「沢山やる事あるけど、できそう?」
頷く。
「良かった。これで何やるか迷わなくてすむね」
「じゃあ、ハグしよ」
ロキはそっとソードの背中に手をまわした。しばらく抱きしめていたら、ソードがぎゅっと力を入れた。
「ソード、苦しい~」
「ふふふ、ロキお菓子食べよ」
二人は立ち上がり、ソードが買ってきたお菓子を机に拡げ食べた。食べているうちにロキは誰かとずっとこんな風にしたかったんだと、心が満たされていった。そして、自らも変わり始めていた。
「レオんとこ、俺だけ行くね」
「俺も行く」
「じゃあ、一緒に」
そう言ってもう一度レオのいる部屋のドアを叩いた。
「お待たせ」
「おう…」
「とりあえず話はついたよ」
「そうか」
「ロキはサルノに残る」
「そうか」
「んで、たまに俺が会いに行く事になった」
「そうか…」
レオはチラリとロキを見た。
頭をがしがししながら気まずそうに話した。
「はぁ~別に俺はロキにどうこういうつもりはない。悪かったなさっきは怒鳴って」
「いいえ、俺もすみませんでした。ソードの言っている通り俺はサルノに残ります」
今度はソードをチラリと見た。
「ソード、お前本気なんだな」
「そうだけど」
「はぁ~まだまだ、話したいことと聞きたいことはあるがとりあえず今日はゆっくりしろ」
「そーだな、俺は帰る日にちを少し伸ばす」
「わかったよ。じゃあ、また明日な」
二人はレオの部屋をでた。ソードは部屋に帰ると全然関係ない話を延々していた。冒険の話や美味しいお菓子屋の話しはロキには新鮮な話ばかりだった。
次の日、ソードは近くの孤児集会場に行く手筈を整わせ、そこの責任者らしき人と話をしていた。
身元引き受けって事は、俺が何かしたらソードに迷惑がかかるのか…。覚悟をして決めたって言ってたな。今まで、こんな風に接触してきた人いないや。今日は集会場に泊まる事になった、慣れないとな。
ソードとちょっと離れただけなのに寂しくなった。
□□□〈レオ〉
俺とソードはヴィゴラで落ち合っていた。俺は剣術の視察でサルノに、ソードは討伐途中の合間だった。俺がサルノにいる事を同行していた剣術学校の奴らがたまたま話してたのを聞いたらしい。珍しくお互いヴィゴラにいたから会うかってなったんだが。一昨日ぐらいから見ねぇなと思ったらとんでもない事になってた。
前から変わった奴だったが、こればっかりは理解に苦しむ。わかってねぇ!
「おい、ソード話せよ」
「あ?ロキか?何か殴られててさ、あのままだと死ぬと思って連れてきた。あ!ちなみに、本人にどーするか聞いたからな!無理やりじゃないぞ」
「ちげーよ、そうじゃねぇ。人を1人育てるのは凄い大変なんだよ!並みじゃできねぇ、ましてや独り身の浮浪冒険者がよ」
「覚悟はあるさ、育てる。あいつは、今拾わないとダメだったから」
「また、そんな良くわかんねぇ事で決めてよ。育てるってどーすんだよ、途中で投げ出せねぇんだぞ」
「投げ出すつもりない」
「はぁ~お前子持ちになったんだぞ」
「子持ちって言うなよ」
「親子ごっこなら、やめとけ。って、もう無理か…」
「んーちょっと違うな。まぁ、大丈夫」
「おい、わかってると思うがこれだけは言っとく。もう、絶対拾うな」
「わかってる」
「なら、いい。何かあったら助けになってやる」
「あー、いらね」
「可愛げない」
「ははは、ありがとなレオ」
そう言ってソードとの会話は終わった。
子持ちのしかも片親の冒険者なんて、聞いたことねぇよ。何考えてるかさっぱりだな。たかだか、数日でロキって奴を手懐けたのか?だが、どーすんだよ。子供は待っちゃくれないぞ。
あいつも全部の孤児が救えないのはわかってるはずだ。孤児は腐るほどいる。それにいちいち同情なんてしてたらきりがない。
だが、ソードに拾われたロキはラッキーだったな…本当に。
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