35 / 130
35 ロキとソード ②
しおりを挟む「とりあえず、宿とったから傷の手当てと風呂とご飯」
宿に着き、ご飯を食べさせてもらいソードの部屋に行った。お風呂に入り簡単な服もくれた。それから傷の手当てをしてくれた。とっくに朝日は上り、眠さの限界で俺はいつの間にか寝た。
夕方前だろうか、目が覚めた。
ソードが椅子に腰掛けて「おはよ」といった。こんなにも優しく挨拶が聞けたのはいつぶりだろう。
「おはようございます…」
「これ、手続き書類っても紙1枚だけどな。お前の名前ここに書いてな。一応書類も目を通して、わかんなかったら聞いて」
「はい」
「ソードさん、これでいいですか?」
「ソードでいいよ、へぇーフォレスターって言うんだ。ロキ=フォレスターかカッコいい名前だな」
「勝手に誰かが付けた名前です。ヴィゴラの孤児ならフォレスターは何十人といますよ」
「へぇーでも、いい名前だけどな」
「じゃあ、書類だしてくる。まだ間に合いそうだから。明日にはサルノに行けるな」
「わかりました」
書類を出しに行ったので俺は部屋で一人になら考えた。
服もご飯もくれたけどサルノに行ったらそこでお別れだな。でも、良くしてくれたよなソードは。そこで頑張るかな、前よりはましだといいな。ここを抜け出せるならなんでもいいや。早く大人になりたい。大人になって自分で何でもできるようになりたい。
何で子供なんだろ…
ガチャと音がなりソードが帰ってきた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
ソードは明日サルノに行けることを報告した。その後、また宿のご飯を食べ部屋に戻った。部屋に着くなり俺に話しかけてきた。
「ロキって呼んでいいの?」
「はい」
「じゃあ、俺もソードでいいよ。呼んでみ?」
「……。」
「まだ無理か、そのままでいいよ」
「…はい」
「サルノに着いたら、知り合いがいるから会わせたいんだけどいいかな?俺の友達」
「はい」
「デカイけど普通の人だから。んーロキは何で大人になりたいんだ?」
「早くここを出たい。大人になったら出れる」
「でも、今は無理だよな。成人してないし。それに大人になったからってここ出れない」
「わかってるけど、早くなりたい」
「現実今は無理だ、諦めろ」
「わかってる」
「んーなぁ、俺の目見れるか?」
ソードはうつ向く俺にそう言った。
見たくない、見られたくないし。
やだ。
「無理」
「んーじゃあ、いいや」
ベッドに座り考え込んでいた。すぐに、いなくなるのに馴れ馴れしくしないでほしい。「ロキ、明日早いからもう寝よう」と早々に寝てしまった。
悪いことしかな…
次の日、サルノに無事書類をだし手続きを終えた。ソードは少し買い物をしたいと行って俺も連れていった。
甘いのばっかり買ってる…
今日泊まる宿だろうか、部屋に少ない荷物を置いた。ベッドに座り俺も隣に座らせた。
「なぁ、ロキ」
「はい」
「ロキがどう思ってるかわからないけど、俺は身元引き受け人になった。それなりの覚悟をしてなったんだけど、ロキを捨てるつもりも恩着せがましくするつもりもないんだよね。ただ、一緒に居られる時間を過ごしたいんだけどいい?」
「?」
「えーっと、簡単に言うとロキとご飯食べたり買い物したりするみたいな」
「?」
「たまに会うみたいな」
「良くわからないんですけど、それ何がしたいのか」
「んーロキと時間を共有したい」
どういう事?
俺は、ソードといるってこと?
「俺は冒険者だから、現実未成年のロキを連れていけない。四六時中いてやりたいけど、無理なんだよ。だから、時間が許す時はこうやって会って話したりとかしたいなって」
「サルノの孤児に預けるんじゃないの?」
「そうなんだけど、そこにたまに会いに行くみたいな。こういうと、すごい勝手に聞こえるけどちゃんと考えてるからな!」
「…別にいいんじゃないですか」
「そっか!したら、次回ここに来たらロキに会えるな!」
「な!って…」
何か嬉しそうだな。
「ロキ、これからよろしく!」
ソードは嬉しそうに俺に笑った。
今でも忘れられないソードの好きな顔の一つ。
「あ、甘いものあるから一緒に食べよう」
「うん」
甘いものを食べて少し気分が晴れた。何か思ってた大人と違う。ソードって何か違う。
何か…嫌じゃないかも。
ソードは約束の友達と会わせたいといって隣の部屋に俺を連れてノックした。
「よう、ソードどこ行って…誰だそいつは?」
そのデカイ男はレオナルドだった。背も高く体格もいい。気負いするロキに、ソードはレオにロキを紹介した。そして、遠慮無しが遠慮の無いことを言う。
「ロキ=フォレスター13歳で孤児。ヴィゴラから来て、俺が身元引き受けになった。でサルノの孤児集会場に連れてく所」
「は!?何言ってる、お前急にいなくなったと思ったら孤児拾って身元引き受けだ!?何の冗談だ?」
「本気だ」
「お前、その辺の生き物拾ってくるのとは訳が違うんだぞ!わかってんのか!人だぞ!」
「わかってる」
「わかってねぇよ!」
「レオ、覚悟して引き受けた。大丈夫だ」
「何が大丈夫なんだよ、お前冒険者だろ。連れてけもしねぇのに放置すんのかよ」
「しない、できる限り一緒にいる」
「できる限りって、お前な…はぁ~ダメだ。せめて俺の所連れてこい。何とかしてやる」
「……。」
「俺の所に来い、面倒みてやるから。俺はこれでも剣術訓練学校の教師だ、寮もある。不自由はないだろうよ。全く…ソードお前わかってんのか」
「待て、ロキに選択させろよ。勝手に決めるな」
俺はソードが一緒に時間を過ごしてくれるからサルノにいるのに。訓練学校に行ったらどうなってしまうんだろう。きっと兵士もいる。絶対やだ。あいつらみたいにはならない。
「俺は…兵士にはならない。絶対やだ、ならない。いかない。いかない。いかない!」
「入ったからってなる必要ないが、このままじゃしょうがねぇだろ」
「おい!レオ少し黙れって」
「嫌だ!絶対いかない!やだ!」
「ロキ、落ち着けって大丈夫だから」
「ソードが!ソードが俺の時間欲しいって言ってくれた!会いに来てくれるって言った!!今の俺にはソードしかいないのに!!」
そう言ってロキはソードにしがみついた。力強くしがみつかれたので、「うわ!」とソードは倒れた。ソードは倒れたまま、軽くロキ背中を撫でた。
「ロキ、ソードって呼んでくれた~」
ふふっと笑いながら言った。そんな二人を見てレオは複雑な顔をして大きなため息をついた。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
【R18】今夜、私は義父に抱かれる
umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。
一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。
二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。
【共通】
*中世欧州風ファンタジー。
*立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。
*女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。
*一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。
*ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。
※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる