夜の冒険者は牙をむく

かぷか

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27 寄り道

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 ソードの朝は誰よりも遅い。それは本人も自覚している。

 レイはシャワーを浴びた後、まだ寝ているソードの隣にゆっくり座った。その寝顔を見ながらレイは昨日の事を考えていた。ソードの物事の定義はハッキリしていて、それにより自分の行動も考えも制限をしてしまう危うい考えだった。

 普通なら体を重ねる事に好きか嫌いかがくる。だがソードは縛りを自分に課している分そこを突かれる事で受け止めてしまう。

それなのに常に無償の愛を他人に注いでるソードを見ていると、とてもアンバランスにレイには見えた。ひたすら走り続けている姿は破滅的で、どうしたらそこに至るのかわからなかった。

寝ているソードに顔を近づけ

「ソード起きろー、今日でるんだろ?」

「……。」

起きない。

後ろから抱きついて起こす。

「昼過ぎになるぞーロキに会うんだろー」

「……。」

 ピク

反応するが起きない。
ソードを更にぎゅっとする。

「途中の休憩でお菓子買おう」

 ガバッ!

「起きる」

起きた。

ソードはロキよりお菓子か。あはれなロキ。

 シャワーを浴びに立ち上がりお風呂に向かった。昨日あちこち付けたキスマークに反応もせず、普段通りのソード。シャワーからでて着替え終わると、サルノに行く準備にとりかかる。

支度を終えたレイは、ベッドに座りゆっくりしていた。ふとあのニケに対する愛情はどこからくるのか聞いてみたくなった。それに、仲良くなるきっかけがあったはず。

「なぁ、ニケって友達は何でそんな仲良くなったんだ?」

ソードは一瞬止まったが、何か思い出したのか凄く嬉しそうに口元を緩めた。

「あぁ~俺の事誉めてくれたから…」

たった、それだけ?
それだけであんな愛情注げるのか?

あんなにも嬉しそうなソードの顔、見たこと無い。正直ニケに嫉妬した。それと同時に少し心が苦しくなった。他人から見たら、ごくごく普通にある事なのにソードからしてみたらそれが物凄く特別だったからだ。

誉められるってよくあるよな?
多分ソードはそうじゃないのか……

「そうか」

 レイの反応にソードは納得していないと感じ少し考えてレイに話した。

「んーそうだな~腕1本」

レイは固まった。

「友達だったら腕一本までなら無償で差し出せる。それ以上は、差し出せない。自分が可愛いからな、冷たいよな。ま、そんな感じ」

「ふふっ。そうか」

 サラッと言ったソードだが、レイはこの覚悟があっての行動かと点と点とが繋がり線になった。ソードの独特な友達定義の感性と愛情がそこにはあった。

 今のソードが自分にどこまで差し出してくれるか知りたいと思った反面、聞きたくないとも思った。

□□□

 ヒューズを後にして、カウロックに入った。

「黄土の国」とも呼ばれているその国は、土地が草原で広がり水も豊かであった。また、魔の森が占める割合も多く国が全力をあげたい政策の一つでもあった。そうできない理由もまた、ヒューズ国との政治的な協約があるからだ。

「ちょっと、寄り道してく」

魔の森の近くにある街に到着し討伐依頼を見ていた。

「やっぱ、魔獣ならカウロックだな。魔の森の討伐依頼は一番多いな」

「だな、小さい街だが依頼の内容は濃いしな」

「そーいや、ガルシアでは依頼受けなかったんだな」

「あーあそこはあんまり受けない。大体、護衛や国に関係するからな」

「お前の好きな薬草の依頼は?」

「受けるときもあるが受けないときもある。民間のは受けるが、それ以外はあまり受けない」

「何で?」

「民間は困ってる人がほとんどだが、研究者からのは大体研究材料や冒険者を水もの扱いだからな。簡単な依頼と見せかけて危険が多し、その割に安い」

「へぇー」

「って事で、薬草の依頼を受ける」

「だと思った。俺も何個か受けていい?」

「勿論、好きなの選べ~」

 何気にこれがソードと初めて二人でする討伐だった。ソードは相変わらず薬草摘みをしていた。その途中でレイが受けた依頼を二人でこなしていった。難なくこなしたレイは、あり得ないとは思っていたがソードの目をチラリと見たがやはり光らなかった。

ゴツゴツとした岩がある山のような岩石の上に登ると、カウロック領土から右手奥に湿地が見える。

「あの湿地はカウロックの領土か?」

「いやヒューズだ、あそこはあまり領土として手付かずな感じだな」

「扱いにくいだろうな。人も余り住んでなさそうだし、魔獣もでるし国としてはお荷物で途中で放置したんだろうな」

「まぁ、そうだな。湿地からカウロック方面まで来たらいいが魔獣がいる。悪くは無いけどな」

そんな話をしながら依頼所へ戻った。

□□□〈ソード〉

宿でソードはお菓子を食べていた。

食べながら考えていた。

 俺、ちゅーだけって言ったよな?

 何でレイとやったんだ?

 レイ約束破った。    
 
 何でだ…そんな奴じゃないはず……どっからそうなった。

 ソードは何が問題だったか考え始める。疑問に思うととことん追及するタイプだ。

 レイがキスは嫌じゃないんだなと言った後、何か言ったんだよ。

…あ、「本気で嫌か嫌じゃないか」だ。

 そうだ、あれを言われて嫌じゃないという答えを出したんだ。そらそーだ、俺はレイが嫌な訳じゃない。好きだからな。ただ、レイの好きとはちょっと違うからな~なのにやってしまった。何でだ?

 違う、ここじゃないな。もっと前からだ。ニケの話をしていて…

「ソード」

不意に話しかけられる

「今考え中だ」

 近寄るレイにピシャリと言った。しかし、レイは関係なく近づく。そして、ソードにすり寄るように抱きついた。

ソードの考えが鈍る。まだ、答えを導いてないのに気が散る。そうだ、レイがこう言ったんだ。

「お前本当ならリッカにもっと残りたかったんだよな?それを俺の為に戻って来たんだろ?ありがとな」

って、その時に自分の考えてることが初めてばれたんだ。その時からだ。それから…

「ソード」

 レイがまた呼ぶ。仰向けにさせ手首をもつがソードはどこか見ながら考える。

 まだだ、まだ結論がでてないから話しかけるな。ニケに会った後…早くレイの所に帰らないとって思って…レイの為に戻ったけど…レイがありがとうって言って…それで…レイは何で…

「ソード考えすぎ」

 レイの目を見た。答えがでる前にもう考えるなと言われるように激しく熱いキスを何度もされそのまま体を重ねた。

いつもなら最後まで追及するのに、レイがいるとそれをさせてくれない。考えなくていい。自分が何処かに連れてかれる感覚。慣れない。
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